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夜間中学その日その日 (771)    白井善吾

  • journalistworld0
  • 2021年8月9日
  • 読了時間: 4分

韓国京畿道利川市で識字のシンポジウム     2021.08.09


 学校教育制度の中にありながら、学ぶ人たちは15歳までの学齢の子どもではない、15歳を超え、80、90歳代の人たちも学び、社会人、子育て中の人たちが学んでいる夜間中学で、中学校の教育課程でやってくださいというのは無理であることはお分かりいただけると思う。文科省もやっとそのことを認め、学齢超過の人たちへの特別の教育課程の内容は学校長が責任を持って編成できる旨を通知した(「学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」2017.3.31付け)。それまで夜間中学現場では、中学校だから、小学校を卒業していなかったら入学できないとか、中学校の教科書を使って授業を行なうとか、修業年限は3年間だとか、厳格に夜間中学を運営することを現場に求め、結果的に多くの夜間中学生の就学を断念させてしまった運営が行なわれ、それではいけない、夜間中学生の実態に制度をあわしていく夜間中学であるべきではないかとか、学校ごとに、地域ごとに異なった運営が行なわれてきた歴史を持っている。

 ソウル大学に語学留学していた髙野雅夫さんの提案と仲介により、2002年から韓国の識字(文解)教室と日本の夜間中学の相互訪問など、交流活動が始まり、夜間中学生も教員も多くのことを学んだ。韓国の識字運動は2008年2月、非識字者の学習権(文解教育)保障をめぐる「識字法」を生みだした。生涯教育法改正がそれだが、日本では当時、法制定運動が動いていない状況から考えても、韓国のこの動きをわたしたちは大きく評価していた。識字を韓国では文解(ムンヘ)と記述し「文字理解、文化理解そして文化解放までを含めた」文解だという主張も私たちは大いに学んだ点であった。しかし韓国政府から出された生涯教育法改正は文解教育を「文字解読教育」と縮小歪曲の定義であること。識字教育施設を学歴認定を出せるところとそうでないところとに振り分け、学歴認定を出せるところには補助をし、そうでないところには補助をしないと分別する問題点を持った改正であった。韓国内の識字学級は、活動を続けるために、不用品を持ち寄り、バザーをし、運営資金を捻出するのに苦労している組織もたくさんある。国から補助金がつくことはありがたいことは間違いない。一方、それまでともに文解教育運動を進めてきた識字学級に“アメとムチ”で踏み絵を迫る生涯教育法改正を前に萬稀(全国文解成人基礎教育協議会代表)さんはどの方針で臨むか議論を重ねられていた。

学校教育制度内の夜間中学とそうではない韓国の識字教育。学校教育制度の中にあって、それには束縛されない運営がどうしてできているのか?その実態を教えていただきたいと萬稀・全国文解成人基礎教育協議会代表(当時)から私たちに依頼があった。

 1990年の国際識字年を契機に、日本と韓国の識字教育関係者のとりくみが何度かあった。「識字」に関する日韓合同セミナーもその一つである。1991年1月28日、守口夜間中学に日韓の教育研究者、教育実践家の訪問があった。(韓国)黄宗建、金信一、(日本)元木健、小川利夫、小沢有作、内山一雄、上杉孝實さんなど20数名であった。小沢さんが「学校教育制度の中にあっていくつになっても学ぶことができる制度を持っているのは日本の夜間中学だけです」と話され、私も夜間中学の必要性を黄教授や、金教授を交えて話すことができた。黄教授は、在日朝鮮人の夜間中学生と日本語と朝鮮語で話し込まれていた。そのあと、お世話になっています、大変な苦労をしてきたオモニ、ハルモニが日本の夜間中学で学んでいる。元気な姿を見て話すことができたと私に話された。

 このとき、黄宗建、金信一先生とは初対面であったが、2002年、萬稀さんが校長である、韓国安養市民大学を私たちが訪問したとき、黄先生と市民大学でお話しすることができた。萬稀さんが有機化学を勉強して大学卒業のあと、黄宗建先生がおられる大学の大学院に入学され、識字教育を黄先生から指導を受けたことをその時、知った。

 金信一先生はソウル大学の教授のあと盧武鉉(ノムヒョン)大統領のとき請われて教育人的資源部長官(日本の文部大臣)に就任、生涯教育法改正時の大臣であった。この大臣のときに生涯教育法改正をしておかないと、どうなるかわからない。との判断もあったと萬稀さんは後にわたしたちに話されたことがある。文解教室の現場は資金的にも大変な状態であったという。



 2008年2月、陶磁器の街・京畿道利川市で識字のシンポジウムが開催され、何度も夜間中学現場を踏査いただいた萬稀さんに応える報告になったかどうか心もとないが、「さらなる前進をめざして―夜間中学、識字、文解、そして東アジアの連帯を―」と題した夜間中学の報告を行った。夜間中学の立っているところを明らかにするため、識字学級型教育と学校型教育様式とに図式化して報告した。



 現在、萬稀さんは『生きる 闘う 学ぶ』にも寄稿いただいているように全国文解成人基礎教育協議会代表を後輩に託し、東アジアの識字の連帯を追求しカンボジアと韓国で文解教室の実践をされている。

 
 
 

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