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夜間中学その日その日 (772) 白井善吾

  • journalistworld0
  • 2021年8月16日
  • 読了時間: 5分

  夜間中学の論文                  2021.08.16

 夜間中学に関する論文や論考はいかほどあるのだろう。私が夜間中学と関わりを持つようになったのは、1972年だ。夜間中学の開設をどのようにとり組めばよいか、教職員組合の学習会で「夜間中学」を取り上げたことが最初であった。書籍に紹介のある論文も目を通し、学習会の資料づくりを行なった。大阪市立菅南夜間中学(現・天満)、八尾夜間中学を見学させてもらい、その準備を進めた。

 50年後の現在では、その論文の多くは公開され、パソコンの画面でいつでも見ることができる。確かこの人の論文に記述があったはずだと、ファイルを探すのだが、探し出すのに、時間がかかるし、出てきても、コピーがよくないときはまた一苦労だ。整理の下手な私は、いつも入り口で苦労する。

 夜間中学資料情報室で収録している論文は、学会誌、紀要、雑誌などの目録では学会誌87,紀要73,雑誌390,その他7,計557になる。すぐとり出せるように整理するのが大変だし、そうしなければと想いつつ、後回しになっている。また収録できていないものも多く、おそらくこの倍以上はあるのではと思っている。

 夜間中学を特集した雑誌などを書き出すと、「文部時報」 第943号(1956)、「中学校」 59号(1958)、「若い広場」258 (1968)、「Sai」 44号(2002)、「人権と部落問題」57-4(2005)、「教育」4月号(2006)、「教育評論」3月号(2006)、「ひょうご部落解放」165/166号(2017)、「基礎教育保障研究」1号(2017)、「ミア・コーロ」3号(2018)、「基礎教育保障研究」2号(2018)、「日本の科学者」2月号 (2019)、「早稲田日本語教育学」28(2020)、最新は「部落解放」809(2021)があげられる。これ以外に、夜間中学の連載を掲載したものも多くある。



 東京足立区に夜間中学を開設するとりくみをされた、伊藤泰治校長執筆の一文が「中学校」 59号(1958)に収録されている。「夜間中学の二つの源流と三つの型」と題する文だ。確か大阪市教育センターの図書室で複写させていただいた。

 少し紹介すると、夜間中学の誕生に、二つの源流がある。一つは神戸市立駒ヶ林中学校のそれである。(略)教育愛に燃えた教師の努力の賜であり、必要にかられて云わば自然に発生したものである。もう一つは、足立区内の各中学校長諸氏と立案し立案当初より足立区全体の問題として、予算、その他も編成し、制度化されるべき性格で開設の運びとしたものである。

 そして三つの型で運営されていると伊藤さんは発見したと書いておられる。一つは兵庫、京都、奈良、広島など関西地区で見られる「一教師単学級学校経営形式」。第2の型は東京に見られる「高等学校定時制課程と同型の授業形態をとっているもの」。第3の型として和歌山、京都、奈良に点在するそれぞれの地域の中学校から教師の出張授業の形をとるものとしておられる。

 「教育者の人間愛の発露による止むを得らざる救済策」「教育愛」との用語に見られるように、義務教育未修了者の恵まれない人々を救うという慈恵的な考え方が戦後の夜間中学の誕生に至る考え方であった。この考えを変革し、憲法で規定されている教育を受ける権利を保障させるのだという教育権、学習権にねらいを定め、昇華させる主張と行動が荒川9中の卒業生、生徒、教員によってとりくまれた。証言映画「夜間中学生」の制作と髙野雅夫氏がおこなった、夜間中学開設を求める全国行脚を支えた考えであったと考えている。

 「夜間中学は差別の再生産」だという考え方を論破し、「教育を受ける権利」「学習権保障」という明快な主張に、多くの市民が賛同し、公立夜間中学開設運動が大阪で展開された。

 髙野さんが配ったビラにこの主張が明確に記されている。


大阪市内に夜間中学を!!

私たち夜間中学生・OB・教師たちは、昭和41年11月30日、行政管理庁が文部省・労働省に出した「夜間中学早期廃止」の勧告に反対してみずからが“証言映画”を制作、そのフィルムを担いで全国行脚をつづけています。もし夜間中学が廃止されたら私たち夜間中学生を含む全国百二十万以上の義務教育未修了者(16歳以上)にとって憲法第26条に保障された当然の権利まで、一切うばわれてしまうのです。この運動にこめられた私たちの主張は同情や賛美ではなく、差別に対する怒りなのです。私たちを夜間中学に追いやったものたちの、さらに廃止しようとするものたちに対する告発なのです。私たち一人ひとりの心と身体に刻みこまれた傷が疼くかぎり、怒りが燃えるかぎり、私たちは、絶対に泣き寝入りしない。沈黙はしない。それは、私たち夜間中学生が原告だからです。全国の大阪の義務教育未修了者のみなさん。ぜひ名乗りでてください。あなたたち一人ひとりが、夜間中学早期廃止に反対し、大阪市内に夜間中学を設置する私たちのたたかいにとっての、唯一の生き証人なのですから。


 このあたりの主張が、最新の夜間中学特集を収録した『部落解放』809(2021年8月号)にどのように記述されているか注目した。江口怜さんの「あってはならないが、なくてはならない学校」に次のように記述しておられる。


 「こうした髙野らの運動に後押しされながら、夜間中学は『貧困や差別の中で奪われた義務教育を受ける権利をとり戻すための学校』として再定義されていく」「こうして、夜間中学は学齢を超えた義務教育未修了者の権利と尊厳を回復する学校として再編され、新しい役割を担うことになった」(11~12頁)。


 わたしは、夜間中学は義務教育未修了者の学習権と人間の尊厳を奪い返す場だと考える。それには、夜間中学生の「闘い」と「運動」は欠かすことはできない。一人の悩みを、全体のものにし、その解決を図るため、夜間中学生徒会としてとりくんできた歴史とあゆみを忘れてはいけない。「自立した生徒会活動」が重要だ。

 
 
 

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