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夜間中学その日その日 (777)    白井善吾

  • journalistworld0
  • 2021年9月20日
  • 読了時間: 4分

校門をくぐったときが入学式                  2021.09.20

 

 夜間中学で勉強できること聞きました。すぐ行きたいが、その時は無理でした。子どもが小さいし、仕事もあったし、じっとがまんしてきました。それも終わって、学校に来たら、もうこの年です。おかあちゃん頑張ってと鞄を買ってくれました。しかし、子どもたちの暮らしを考えると世話になるわけにはいけません・・・。何人もの夜間中学生がこのように語っていた。

 「夜間中学生は、みなさんお元気ですね」これは公開授業で来校された人たちが決まって、話される言葉だ。元気な人しか夜間中学に来れないのだ。また元気であっても、「びょうき」を背負って通学している夜間中学生が多い。家族の誰かが病気になると、休まなければならないのが夜間中学生だ。

 経済的にも、健康の面からも、さまざまに折り合いを付けて学んでいるのが夜間中学生だといってもいいだろう。私が昼に勤めていたとき、子どもたちの出席率は95%を下ることはなかったと記憶している。夜間中学生は休まずに登校できる人は、さあ、10%もいらっしゃらないだろう。

 こんな実態の中で、教師の口から出てくる、「前の時間にやったでしょ」「前に勉強しました」という言葉は禁句だ。その時の授業に来れていなかったとしたらどうだろう。「出席しなかった、あなたがいけない」といっていることになる。また、何回も説明したのに、(あなたは)理解できないんですね。といっていることになる。夜間中学生の側は、出席したいんだが、できないことをこの先生は、どうして理解いただけないか。やっぱり、私は頭が悪いんだと思い込むことになる。これは、私の数学の授業をふりかえりながら申し上げているのだが、夜間中学生にこんな想いをさせてはいけない。計算はできなくても「生きて来た」夜間中学生だ。内容を理解するのに複雑な、計算を早く、正しく、というハードルをおいては、一番理解していただきたいことに到達しない。



               1973年頃の 夜間中学を育てる会作成募集ビラ 

 

 夜間中学には「校門をくぐったときが入学式」という言葉がある。4月だけが入学式ではない。上のような実態の中で、学べる条件ができたとき、入学したいと校門をくぐる夜間中学生が多い。そのとき、来年の3月に来て下さいとは決して言えない。上に書いた現実の中で半生を送られてきた入学生を前に言えない言葉だ。

十分対応できない形で、そんな無責任な受け方をしていいのか、入学待機生という形で、受け入れても、事故が起ったらどうしますか、その責任はわたしたちに来るんですよ、もし結核など病気をお持ちであれば大変なことになります。と管理職や同僚の教員から反対の声が上がってくる。もっともなことである。断る理由はいくらでもある。しかし、学びたい想いは最優先させるべきだと考える。心配や懸念されることを話して、考えていただくよう話して、その日は引き取ってもらった。

 次の日、12時過ぎ学校に入ると、入学希望者が、校門のところで立っておられたので、部屋で待ってもらっています。と昼の先生の話。「あれから、家に帰って、考え、しかし、今しかない、子どもに『明日から夜間中学に行く』といいました。分かっても、わからなかっても、教室に座って、来年4月からの準備をさせて下さい。

 こんな経過を、職員打ち合せで報告し、協議し、教室に座席を用意して、通学していただく返事をした。

 紹介したケースは珍しくない。毎日、夜間中学の案内看板を見て通っているが、その日は気がついたら、校門の横の通用口を押し開け、中に立っていました。昼の先生が、夜間学級に入学を希望されているんですかと声をかけてくださり、ここまで連れてきていただきました。夜間中学生の弁だ。

こんなケースもあった。日曜日に近畿夜間中学校生徒会連合会の行事があり、翌日は代休日であった。たまたま私は、その日学校で仕事をしていた。昼の職員室に入ったとき、先生来られていたんですか、いらっしゃらないと思って、事情を説明して、入学希望者の方に帰ってもらいました。まだ間に合うかもわかりません。土居駅に向かわれました。京阪土居駅に走ると、帰って行かれるその方に出逢うことができた。そして、夜間中学入学していただいたのは勿論である。

 入学に結びついたケースがある反面、そうでなかったケースもあるはずだ。入学希望される方は、長い逡巡の末、一大決心をして来校される。そのときは入学の受付期間も、受付時間も、募集人数も関係ないのだ。いつでも受け入れ態勢をとっておくことが大切だ。「来年度の募集人数を超えましたので、再来年度の募集のときに来てください」。ある夜間中学で、こんな対応があったことをお聞きしたが、何をか言わんだ。

こんな経緯で入学できても、後は順風満帆ではない。夜間中学生同士、教師とのぶつかり合いがある。ぶつかり合いの内容を、クラス集団にかえし、取り上げ、議論をすることが大切だ。この課程が最高の夜間中学の学びにつながっていくし、学びにしないといけない。

 
 
 

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