夜間中学その日その日 (779) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年10月6日
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公立夜間中学開設にむけて 2021.10.06
公立夜間中学の開設にむけた動きが多く報道されるようになった。2022年4月(香川県三豊市・福岡市・相模原市・札幌市)、2023年4月(千葉市・姫路市・静岡県・長崎県(早くても))、2024年4月鳥取県、2025年岡山市の報道があった。
入学者把握のための、アンケート調査、分析、「公立夜間中学の在り方検討会議」へ諮問、そして答申を経て、設置の決断、公立夜間中学設置基本計画 と検討が重ねられている。自主夜間中学のとりくみを重ねている市民組織、その経験に学ぶという姿勢で開設準備を進めている地方行政は、どちらかというと少ない。一線を引いてしまっている。全くもったいない。
下の表は夜間中学を開設にあたって、行政担当者が公立夜間中学を視察し、「通常の中学校に近い形」「柔軟な体制をとる形」に分類したものである。

ずいぶん大胆に可視化されたと思うが。わかりやすい分類だ。
夜間中学に勤務するまで、私は、夜間中学は左の「通常の中学校に近い形」を描いていた。昼の学校に勤務していたとき、守口夜間中学生の文集「まなび」から一人の夜間中学生の文章を紹介して、「学ぶということ」を考える授業を学年全体でとりくんだことがある。何年かして守口夜間中学に勤務して、名簿をいただいたとき、驚いた。「えっ、この方、何年生?もう卒業されているはずなのに、名簿に名前があるとは?」と思って、教室に行って、その文集をお見せして、恐る恐る聞いた。「書いたのは私です。私の作文を、昼の中学生が読んでくれましたか」と笑顔で話された後、私の質問の意味を感じ取って、「早く卒業したいんですけど、若いときに勉強できなかった私は、3年で卒業なんてとてもできません。もうちょっと勉強させてください」と話された。授業で子どもたちが話した感想をお話したが、冷や汗の出る会話をしてしまった。
そうなんだ。夜間中学と名前はついているが、夜間小学はない。未就学であった人から、中学は卒業していない人まで、入学したとき、何年生に編入するか、一つのクラス内に、いろんな就学歴を持った人たちが学ぶことになる。学齢の子どもたちのように、中学ですから3年ですには、ならないわなぁ。夜間中学の授業を経験して、はじめて納得できた。
大阪に夜間中学ができたときも、「中学校だから3年間」そんな“常識”で出発した。教育行政も教員もそうだった。その常識が、いかに非常識かを知り、夜間中学生の主張と、生徒会のとりくみから、「柔軟な体制をとる形」へ、ひとつひとつ変わってきたといってもよいだろう。
ところが、逆戻りすることがある。ある夜間中学で「日本語が話せない人は他のところで学び、話せるようになったら入学を」、と主張する管理職によって変更がされたことがあった。それなら教員を増やすなど教育条件の向上を働きかけるのが管理職の任務だと考えるが、そうはしなかった。夜間中学生の方にしわ寄せをもっていった。時間はかかったが、夜間中学生のとりくみにより、従前に戻すことができた。
新しくあゆみをはじめた夜間中学は、夜間中学生の想いや願いを真正面から受け止め、それに応える夜間中学になっていく、そんな学校であってほしい。また、自主夜間中学の経験に学ぶ公立夜間中学であってほしい。
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