夜間中学その日その日 (795) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2021年12月2日
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2021.11.26 現地報告 天王寺夜間中学 2021.12.02
天王寺夜間中学の運動場では昼のサッカー部が練習中だ。夜間中学のウリマダンの楽器演奏が聞こえてくる。共同作品「夜間中学生の像」がこの日の夜間中学の出来事をじっと見つめているように、夕闇が迫りグラウンドを照らす照明に、だんだん浮かび上がっている。

夕方5時過ぎ、説明に来校した大阪市教育委員会の担当者が、教職員との話を終え、「夜間中学生の像」の横を通り、夜間中学の校舎から出てきた。この頃になると、天王寺夜間中学の同窓会のメンバーがそろいはじめた。

「天王寺夜間中学廃校反対」手作りのポスターを持って、車椅子の卒業生も校門をくぐって運動場にやってきた。「髙野さんもきてくれたんですか」「いてもたってもおれません」「なんとしても母校を守らないと」と声が聞こえてきた。10人ほどが話合いの激励に駆けつけた。
2013年の閉校騒動で闘いに立ち上がり、「天王寺夜間中、存続へ 『耐震工事が必要』は勘違い 市教委『言い伝えで…』」と市教委の誤りを認めさせた闘いの先頭に立っていた卒業生たちだ。
同窓会員が手に持っている「廃校反対」のポスターを見て、何人かの昼の子どもたちが声を掛けてきた。「夜間中学がなくなるなんてはじめて聞いた。先生からもひとつも話しがなかった。同じ学校で学んでいるのに、私たちは何をしたらいいですか」。子どもたちの受け取りは鋭い。「こんにちは」子どもたちから来校者に挨拶の声がかかる。
「今日は在校生への説明なので、遠いところから来ていただいたんですが、入っていただくことはできません、おわかりください」丁重な参加お断りである。
「私たちこの学校の同窓会員ですよ、私の母校ですよ」「私たちが参加したら都合が悪いんですか」との抗議に、「また時間をとりますから」「ちゃんと話しをさしてもらいますから」を繰り返す。
納得できない参加者は5階の会場に夜間中学生と一緒に移動していった。しかし、会場の入り口で入室にストップがかかった。
「それだったら、同窓会の私たちと教育委員会と話しが出来るようにしてください」「同窓会は夜間中学のPTAですよ」の抗議に、「校長先生が時間をとって説明しますから」を繰り返す。
「私たち、明日、同窓会の役員会を持ちます。今日のこと話しあって、どうするか決めます」「私たち同窓会も教育委員会の人と話しをしないといけない」と参加者は話しあった。
「天王寺中の大西啓嗣校長は『もしこの案を進めるのなら、いま在校する方の不利益にならないよう、卒業するまでは天王寺と文の里の夜間学級を残すことなどを検討してほしい』と話している」。これは2021.11.9の朝日新聞に掲載された、天王寺夜間中学校長のコメントだ。大阪市教育委員会の案を認める前提に立ったと受け取れるコメントではないか。その意味するところを確認する必要がある。同窓会や在校生との考えとは異なる。
6時から始まった話合いを終え、6時50分、夜間中学生が夜間中学の校舎に戻ってきた。どの顔も、納得いかない表情だ。
「寒い中、まだおってくれたんですか」「計画中やといいながら、私たちの意見を聞きに来たといっていた」。「テントを張って、反対運動に取組む」と生徒会の集会で発言した夜間中学生も元気な顔で髙野さんと話しをしている。

この日、市教委からは担当者2名と、通訳2名が来校したとのこと。新聞記者の取材もあった。参加者は、署名用紙を手に天王寺夜間中学を後にした。
天王寺夜間中学の校舎は校門から離れていて、教室の照明が全く届かない。以前から校門を明るく照らすよう、改善を求めているが、校門の扉は固く閉められ、校門の照明は薄暗く、入学を求めてやってきた人たちに非常に冷たい印象をこの日は一層強く起こさせる対応であった。
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