夜間中学その日その日 (796) 蟻通信編集委員会
- journalistworld0
- 2021年12月6日
- 読了時間: 6分
2021.12.06
2013年末から2014年にかけ、天王寺夜間中学を廃校にしようとする大阪市教育委員会の動きがあった。近畿夜間中学校生徒会連合会が力を合わせ、天王寺夜間中学生徒会を応援、大阪市教育委員会に存続を迫った。思わぬ展開になった。「天王寺夜間中、存続へ 『耐震工事が必要』は勘違い 市教委『言い伝えで…』」とする新聞報道があった(2014.1.28毎日新聞朝刊)。
夜間中学生徒会のとりくみがなければ、この結末がなかったであろう。就学援助補食給食存続の闘いに学び、当事者の立ち上がりが、大きな動きにつながる。夜間中学生徒会も当時の夜間中学教職員も大きな勉強をした。天王寺夜間中学 存続に向けた闘い(3)を紹介する。その教訓を今にいかさなければ。
(夜間中学資料情報室 白井善吾)

夜間中学その日その日 (335) 蟻通信編集委員会
天王寺夜間中学 存続に向けた闘い(3) 2014.02.01
「天王寺夜間中、存続へ 『耐震工事が必要』は勘違い 市教委『言い伝えで…』」とする新聞報道があった(2014.1.28毎日新聞朝刊)。細部を読むと「市教委は昨年12月、同校夜間学級の生徒らにプリントを配布。生徒減少を理由に耐震補強できないとし『国の法令で、耐震工事期限を迎え、このままでは校舎を使用できなくなります』と伝えていたが、今年に入って市教委が資料を確認し、判明した」「内部の言い伝えで、耐震基準を下回る古い校舎で工事が必要と思い込んでいた」「市教委は取材に『確認不足としか言いようがないミス。ご迷惑をおかけし、反省する』と陳謝」とある。本当だろうか?
2013年12月26日の新聞報道は「約2000万〜3000万円とみられる校舎の耐震工事費の予算計上を見送る方針だ」と具体的な工事金額をあげ説明している。夜間中学生徒会が要望書を届けた時、担当者に耐震調査結果を教えてほしいとも話している。それから資料を調べ判明した。1999年に耐震診断を行った資料に当たったところが、国の耐震基準を満たしていたということになるというのだ。「内部の言い伝えで」「思い込んでいた」本当だろうか?それにしては無責任だというほかはない。教育委員会の考える、夜間中学の学びはそんなものなのか?昼の子どもたちではこんな手法をとらないだろう。生徒会の討論の中で夜間中学生はこの点も指摘していた。
大阪市のホームページで「大阪市立中学校に設置している夜間学級について」(大阪市教育委員会 1月28日付)が公開されている。(資料1)
一読してさらに驚いた。
1点目に、従来の夜間中学の募集要項を大きく限定する記述になっている点だ。12月9日の配布文書から、従来の「大阪市立の4つの中学校(天満・天王寺・文の里・東生野)には、義務教育の年齢(満15歳)を越えており、中学校を卒業していない方で入学を希望する方に対して、夜間学級を設置しています」(2013年12月2日付大阪市教育委員会「募集要項」)とする文言に加え、「進学や就職または資格取得のために中学校教育を希望する方に」としている点だ。これでは進学や就職または資格取得のためでないと夜間中学には入学できないということになる。
2点目に生徒数減少についてだ。確かに開設以来45年目を迎え、その間天王寺では1182名の卒業生がある。義務教育未修了者は減ってきているとの行政感覚だろう。しかし、夜間中学を必要とする人たちに夜間中学が存在することすら届けられていない。初めてたどり着いた人たちと接している夜間中学の現場感覚とは大きく違うところだ。「もっと早く知っていたら」と語る入学者が多い。行政窓口担当者の紹介で夜間中学に入学するケースは最近少なくなった。夜間中学は学習権保障をするところだとするなら、広報活動をもっと行政として行ってから述べることだと考える。「やることはやりました。しかし‥」と返事が返ってきそうだが、広報に載せるだけで十分ではない。夜間中学生は街頭に出て募集活動をするなどさまざまな方法で実践している。教育行政として「もっとできることはあるはず」だと考える。
3点目に夜間中学に対する行政の姿勢は変わっていない。「夜間学級のあり方について、検討している」「生徒数の推移や校舎の安全性に鑑み、検討してまいります」の言葉に表れている。夜間中学「閉鎖」の教育行政の意図は変わっていない。
これらを確認しながら、夜間中学生徒会、教員は、団結して取り組みを進めることが重要だし、問われている。
夜間中学にたどり着けていない仲間に夜間中学を届ける!!
[資料1]
大阪市立中学校に設置している夜間学級について
本市では、様々な事由により義務教育未修了のまま義務教育年齢を超えている方で、進学や就職または資格取得のために中学校教育を希望する方に、中学校教育を行うことを目的として中学校夜間学級を設置しており、現在、天王寺中学校、天満中学校、文の里中学校、東生野中学校に夜間学級を設置しています。
しかしながら、ここ数年、本市の夜間学級において生徒数が減少し続け、10年前に比べると4つの夜間学級に在籍する全生徒数はほぼ半数になってきている現状があります。引き続き義務教育未修了者に対して義務教育の保障を行うための夜間学級のあり方について、検討しているところです。
天王寺中学校夜間学級で使用している校舎は、昭和30年代に建設されたものであり、その耐震性については、より望ましいとしている本市の基準(Is≧0.75)には到達していませんが、文部科学省が定めた学校としての耐震基準はIs値0.7以上とされており、その基準は満たされていました。したがいまして、現在夜間学級で使用している校舎は、当面平成28年度以降も継続して使用できることが判明いたしましたが、今後とも、生徒数の推移や校舎の安全性に鑑み、検討してまいります。
<問い合わせ先>
大阪市教育委員会事務局
指導部 中学校教育担当 06-6208-9187
総務部 施設整備課 06-6208-9080
[資料2]
「大阪市立天王寺中学校夜間学級について」平成26年1月29日、
大阪市教育委員会作成、天王寺夜間中学に届けられた文書。宛先は大阪市立天王寺中学校夜間学級に入学される皆様へ、在籍される生徒の皆さまへとなっている。そしてルビが打ってある。
本市では、ここ数年、4つの夜間学級に在籍する生徒数が減少し続け、10年前に比べると全生徒数はほぼ半数になってきている現状があり、義務教育未修了者に対して義務教育の保障を行うための夜間学級のあり方について、検討しているところです。
このような状況の中、平成25年12月に「天王寺中学校夜間学級で使用している後者は平成27年度末に耐震工事期限を迎え、そのままでは校舎を使用することができなくなります」。とお伝えしました。しかしながら、その耐震性については、より望ましいとしている本市の基準には到達していませんでしたが、文部科学省が定めた学校としての耐震基準は満たされていました。したがいまして、現在夜間学級で使用している校舎は、当面平成28年度以降も継続して使用できることが判明いたしました。誤った情報で皆様方にご心配をおかけしましたことをお詫びし、訂正いたします。
<問い合わせ先>
大阪市教育委員会事務局
指導部 中学校教育担当 06-6208-9187
総務部 施設整備課 06-6208-9080
[資料3]
夜間学級:天王寺中、存続へ 「耐震工事が必要」は勘違い 大阪市教委「言い伝えで…」 毎日新聞 2014年01月28日 大阪朝刊

Comments