夜間中学その日その日 (810) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2022年2月24日
- 読了時間: 7分
「天王寺夜間中学と文の里夜間中学の廃校に関する陳情書」を
大阪市議会に出そう。 2022.02.24
近畿夜間中学校生徒会連合会は火の玉になって、天王寺夜間中学と文の里夜間中学を廃校させないために自分たちで何ができるか、議論を重ね、できることから実行に移していった。「ツイッターで拡げ、多くの人たちに知らせたら」。その意見はすぐに実行した。アップの方法は、慣れた若い夜間中学生が教え、画像や写真も添付して拡散していった。多くの反応が返ってきた。応援のメールも入ってくるようになった。これも大切な勉強になった。

夜間中学生のとりくみを知った文の里夜間中学の近所の市民がポスターをつくって、すぐ応援に駆けつけてきた。天王寺夜間中学では昼の子どもたちからすぐ反応があった。「夜間中学がなくなること担任の先生からも話しはなかった。しかし、同じ天王寺の生徒や。ぼくらにできることは何でも応援するよ」。夜間中学生は「ありがとう。おっちゃんらがんばる。クラスでこのこと話しあってください」と話していた。
市民に訴える、街頭署名活動は、天王寺駅周辺でとりくんだが、1月30日の2回目の行動はコロナ蔓延の状況下、断念せざるを得なかった。しかしできることがあるはずと、夜間中学生が地元の市会議員事務所を訪問し、議員さんに話していくことの提案があった。これもすぐに実行した。熱心に私たちの想いを聞いてくれた。議会に陳情書を提出する方法があることをおしえてもらった。そして何度も下書きをして出来上がった陳情書(文末資料参照)を提出した。2022年2月18日の大阪市議会・教育子ども委員会で陳情書に基づく議論が行なわれた。
この日、13時から始まる委員会の様子は、ライブで配信されるので、夜間中学生はテレビ画面に映しだされる映像を見て議論の展開に注目した。
夜間中学の授業の進み具合とちょっと違う。「不登校特例校に夜間中学を併設すること、ひき続き検討していく」と早口で、書いた文面を読み上げ、議員の質問に答えていく教育委員会担当者。「いくら専門だといっても、これで理解できていくのでしょうか?大変疑問に思いました」。夜間中学生の感想だ。
「陳情書にある『2校の廃校』は過激な言葉だ。『統合移転』だ。在校生には苦労をおかけするが、京都の洛友中学では、不登校特例校を開設しリモートで授業も行なうなど、夜間中学とのコラボが成功していると聞いている」と廃校に賛成する議員の意見もあった。
やりとりの一部を記すと
「統合移転する理由は?」との問に対して、教育委員会担当者
― 従来の人たちに加え、学び直しの人、外国籍の人たちの入学と多くの
課題をもった人たちが学ぶようになってきている。生徒数は天王寺(426人
から56人)、文の里(212名から20名以下)と両校とも在籍数が少なく、
文の里は6年続けて20人以下。天王寺は外国籍の人たちが増え、日本語学
習のニーズも多く、校舎も老朽化、エレベーターもない。文の里3学級で
教員6人。天王寺3学級で6人の教員で運営されている。
議員:「在籍が減ったから学校を減らしてよいのか?在籍する人たちの学ぶ権利を保障することが大切でないのか。50年以上も続く学校だ。存続を願う声もある。高齢の人が通えなくなる」
議員:「廃校する理由は?」
―生徒数が開校時から減少している。外国籍の人たちに加え不登校の人た
ちに応える教育の課題。不登校は喫緊の課題で特例校を。夜間中学を併設
すると相乗効果がうまれ、教員数、施設面でもよくなる。
議員:母校で卒業したいという、切実な声にどう応えるのか?
―夜間中学は3年で卒業。その時卒業できていない人については、聞き取
りをしてよりよい方向を検討していきたい。
議員:一気に進めず、段階的に進めていったら?産経新聞の記事「夜間中学はいま」(2022.02.14)の記事には、守口さつき学園がおこなっている、大東市立住道中学の生徒との交流の記事が掲載されている。70歳の夜間中学生の声「孫に教えてもらっているみたい」「私もみなさんの年齢の時に学校に行きたかった」住道中学の子どもの声「楽しみながら学んでいるのがすごい」「・・・」。夜間中学の学びの大切さを主張した記事だ。
議員:不登校特例校のことはわかった。陳情の二つ目、夜間中学生の想いや願いについては?どんな声があった?
―2校の生徒の学習状況、希望を個別に聞いた。体力がないから、慣れた
ところでこのまま学びたい。
議員:夜間中学は最大9年学べる。学習権をどう保障するのかが重要だ。生徒さんの声をしっかり聞いて、開校時期をずらしたらどうか?
議員:移転の理由?
―天王寺、文の里両校とも、3クラス教員6名。エレベーターもない。統
合すると7クラスで12名配置でき、エレベーターもある。一層の充実が
実現できる。
議員:1校に12名教員を配置し12名の教員で特例校に当たると言うことか?
―12名で行なう。
議員:専門性と(不登校と夜間学級の)、教育課題も異なる。12名でだいじょうぶか?
―特例校と夜間中学と課題は違うが、より多くの眼が行き届く。
議員:統合して今の良さが続けられるのか?担保されるのか?逆効果にならないか?
教育長:不登校の子どもと夜間中学がふれあいを求めて洛友がつくられた。
議員:生徒の想いを真ん中においた議論が必要だ。早く結論を出さないように。

陳情書はひき続き「教育子ども委員会」で議論を続けることにして、この日の委員会を終えた。
夜間中学は「学齢時学べなかった人たちに義務教育を保障する場」の議論は展開されているが、夜間中学の社会的存在意義の主張と論議が弱いと思った。夜間中学は昼の子どもたちや教員の学ぶ場、教育センター、教師の道場だという考えに教育行政は思いもつかないのだろうか。
また教育行政は不登校特例校に夜間中学を併設した京都・洛友の試みは教育条件、学習環境の向上と、不登校の対策に大きな効果があると評価をしているが、説明不足が「夜間中学とのコラボが成功していると聞いている」との議員の発言に現れている。この程度の議論で実施されていくとしたら、夜間中学生はたまったものでない。夜間中学生の想いを真ん中に置いた議論が大切ではないか。
資料
大阪市会議長 様
天王寺夜間中学校(天王寺中学校夜間学級)と文の里夜間中学校(文の里中学校夜間学級)の廃校に関する陳情書
〔陳情趣旨〕
夜間中学校はさまざまな厳しい現実や矛盾などで、学齢期に「学ぶ権利」を保障されなかった人や十分に義務教育を受けることができなかった人が学ぶ学校です。
2016年12月には、国会で「教育機会確保法」がつくられ、毎年、全国各地に、新たな夜間中学校が開校されています。現状では「なくてはならない学校」として全国には、12都府県/36校あります。この間、国や文部科学省もその意義や必要性を認め夜間中学校を設置することを推進しています。
ところが、これまで50年近くにわたり、夜間中学校を大切に守り続けてきた大阪市教育委員会が、2024年4月に天王寺夜間中学校と文の里夜間中学校の2校を廃校にする計画を検討していることがわかりました。新しく他の区に「不登校特例校」をつくり、そこに「夜間学級」を併設し統合移転する計画のようです。
夜間中学生は苦難の人生を歩みながら、日々厳しい就労状況や生活実態のなかで、やっとの思いで通学しています。学校の場所が変わるだけで、通学できなくなり、学ぶことができなくなる生徒も多くいます。
さまざまな厳しい現実や矛盾のなかで「学ぶ権利」を奪われ、やっとたどり着いた今の夜間中学校から、ふたたびはじき出されるようなことは決してあってはなりません。
また、今ある夜間中学校をつぶすことは、現在、学んでいる生徒だけでなく、これからその夜間中学校に入学を希望する人たちからも、未来につながる大切な「学びの場」を奪うことになります。
大阪市や大阪市教育委員会は、国や文部科学省の方針に逆行する、今ある2校の夜間中学校を廃校するという統合移転計画を改めて考え直し、むしろ現状の4校から5校へと夜間中学校をさらに増やしていき、全国のなかで夜間中学校設置をさらに推進していく、積極的で先進的な都市になることを強く訴え陳情します。
〔陳情項目〕
1. 学ぶ生徒や学びたい生徒がいる天王寺夜間中学校と文の里夜間中学校の2校を絶対に廃校にしないでください。
2. 夜間中学生や卒業生の思いや願いをしっかりと聞いて受けとめてください。
3. 全国のなかで夜間中学校設置をさらに推進していく、積極的で先進的な都市になってください。
2021年2月4日
陳情者
近畿夜間中学校生徒会連合会 会長 (代表者)
住所
天王寺夜間中学校生徒会 生徒会長
住所
文の里夜間中学校生徒会 生徒会長
住所
天王寺夜間中学校同窓会 代表
住所
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