夜間中学その日その日 (823) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2022年5月23日
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MBS毎日放送番組「憤懣」(2022.04.18放送)のコメンテーターに憤懣
2022.05.23
大阪市内の夜間中学廃校反対の闘いに立ち上がった近畿夜間中学校生徒会連合会の取り組みの取材に2021年12月、毎日放送テレビカメラが入り始めた。毎日放送はこれまでも、東大阪の分教室独立校化の闘い(1993年秋~)、そして2校の統廃合反対の夜間中学生のとりくみ(2015年)の取材を積極的におこない、独立校化や統廃合を阻止する世論の高まりに大きな役割を果たした。
12月18日の街頭署名活動からカメラが入り、大阪市教委に署名を手交する市教委との話合いをはじめ、密着取材を重ねていた。そして2022年4月18日、「『読み書きができず苦労したことがあるのか!』学び直しの場『夜間中学』の統廃合計画に憤る生徒の声」(MBS毎日放送 憤懣)の報道をおこなった。

「様々な事情で中学校に通えなかった人たちの学び直しの場である『夜間中学』。修了すれば中学校卒業となり、2019年度の調査では全国で1729人が夜間中学に通っています。そんな中、大阪市では現在、市内に複数ある夜間中学を統廃合して新たな場所に開設する計画が進んでいます。この計画によって学校数が減り立地が変わることで『学びの時間が減少する』などと生徒たちからは怒りの声が上がっています」こんな導入で番組は始まった。
なんで減らすのかとの問に大阪市教委担当者は「現在ある4校から3校に減らす理由として、生徒数の減少や日本語教員の不足」などを挙げています。
これに対し、多くの夜間中学生が意見を述べた。番組では夜間中学生の発言を紹介していた。「読み書きができないことで苦労したことがありますか?人数が減ってきてええねやんか。人数が増えてきたら本当はおかしいでしょ。教育差別を受けてきた人間が大勢いたら、どないするんよ。夜間中学に明かりをつけておかないといけないのはなぜかといったら、(夜間中学が)ゼロになった時に、もし僕らみたいな人間が『学校に行き直したい』『学校に行って勉強したい』と思った時にどこを頼って行くんですか」と厳しく迫った。

放送では署名手交の場ではなく、別の場所でとった担当者のコメントを取り上げていた。「夜間中学の生徒らが残してほしいと訴える中、大阪市はどう考えているのか。取材班が大阪市教育委員会に尋ねると次のように話しました」。
「大阪府内で(夜間学級が)11校設置されている状態でして。大阪市としましては、教育内容の充実が求められているところかと認識しておりますので、そういった部分を求めて現在のあり方を検討しているところでございます。(記者の質問:学校数を増やすことは求められていない?)そういうことですね」((大阪市教育委員会・指導部 坂田浩之総括指導主事)。
取材を編集されたと考えるが、坂田氏の発言は「(他県と比べ)、大阪府内に11校、夜間中学があり、(学校数は十分ある。それより)教育内容の充実が第一だ」との主張だと、私はうけとる。
これを受け、番組はスタジオのコメンテーターが随分早口で次のように話した。長くなるが引用しよう。
大吉アナウンサー:社会からの孤立とか孤独とか、そういったキーワードが日本の社会で最近浮き彫りになってきて、大きな課題となってきている中で、新たな自分の可能性に挑戦しようとする人たちがいる。そのステージが奪われていいのか。それを許容していいのか。そんなことを思うんですが、中野先生、この部分に関してどんな深読みポイントがあるのか。
中野雅至神戸学院大学教授:「妥協の余地あり」この憤マンのコーナーって、時折裁判に流れ込むぐらい、結構もめるんですけど、この回については、妥協の余地があるような気がします。
まず、やっぱり学ぶ権利を失った人の権利を回復すること。これ非常に重要です。それから、知識を得ることは、自分を守る武器にもなるし、盾にもなります。そういう意味で、すごく重要。それから僕の経験だと、社会人大学院で教えてたんですけど、社会人大学院生って、時間の貴重さをものすごく知っているので、よく勉強してくれるんです。その意味ですごく重要。
もう一つ、署名ですよね。これだけ署名が集まって民主主義の重さだと思うんですね。やっぱり。そういう意味では、すごく重要な側面いっぱいあって。
その一方で大阪市のいうことも、僕は理解できないわけではないんです。なぜかというと、いま実はですね、夜間中学校って通っているのは、外国人が8割なんです。ほとんどもう外国人で、今どうなっているかいったら、外国人の人が日本語学校みたいにほとんどなってて。実は不登校で夜間中学に行く人なんかは、方程式学びたいとか。そういうことは全然ニーズには、なかなか応えられてなくて、実は結構曲がり角にきているのも、これ間違いない。機能をけっこう分化させて違うものをつくろうという大阪市の考え方も、僕はよくわかります。
大吉アナ:だから、本来の夜間中学校のあり方が、今変わりつつあると言うこと。
中野:変わりつつあるということ。それから、もう一つは、大阪府とか大阪市が、これあまり熱心でないみたいな感じのVTRでしたけど。そうではなくて、実は文科省、今都道府県に1校つくろうと思ってる。全国に34校、今あります。そのうち実は、大阪って11校もあるんです。断トツで、全国で一番多いのは大阪。大阪府下で11校もある。東京7校しかないので、東京より実は大阪のほうが多いです。大阪は、熱心に取組んできた。そういう所なんです。だから、先ほどちょっと統廃合の話がでてましたけど、文の里と天王寺をやめて、浪速区ですよね。ということは、距離的には、新今宮やから、結構近いことは近いんで、妥協の余地はあると思う。
例えば、新今宮に行くけども交通費を補助するとか、あるいはスクールバスみたいなのを出すとか、そういうことをやってみれば、お互い双方まだまだ歩み寄れる余地は。僕は大阪市の言っていることは、けっこう分かるんでね。 全然やめるとは言ってないわけですから。そこは、だいぶ交渉の余地はあるような気がします。
大吉アナ:統廃合したとしても、そのセーフティネットからもれ出る人を、また違う受け皿で受けていくやり方があると。
中野:そう。あると思います。そういう意味では、交通費みたいなのは、すごく重要になってくるとは思います。時間をどう確保するのかとかですね。お年寄りの方とか、通うのがしんどくなってくるのでね。そこを、ちょっとどうやるかっていうことですね。
大吉アナ:学校の数36ですね。
中野:失礼しました。
大吉アナ:36ということです。皆さんは、どうお考えでしょうか。
新入生歓迎会の集会で夜間中学生は「毎日放送のスタッフはがんばって番組をつくってくれたのに、スタジオのコメンテータ-が番組をぶちこわした。すぐ放送局に抗議した」と発言があった。東京の夜間中学の数も7校ではなく8校である。夜間中学の開設から夜間中学を維持し、運営してきたことは大阪の誇りだと想っている。しかしここに来て、入学希望者を「日本語が理解できるようになったら来てください」と入学を断り、「早く卒業して、次のところで勉強したら」と卒業勧奨を現場に圧力を加え、人為的に夜間中学生数を操作したのは大阪市である。国に先んじて、1972年夜間中学の就学援助制度を創設したのは大阪府であった。しかし、その制度廃止を強行したのも2010年の大阪府である。市バスの有料化、補食給食の廃止も大阪市は強行した
中野雅至氏の云う「歩み寄る」「交渉の余地あり」は現場を視ずして、机上の論ではないだろうか。「機能をけっこう分化させて違うものをつくろうという大阪市の考え方」についても、大阪市は経費削減が第一で、2校の夜間中学の教職員だけで学齢の不登校の子どもを午後1時から6時まで、そして従来の夜間中学生を午後5時から9時までで対応しようとする考えである。市議会の教育子ども委員会の議論を聞いても、「京都の洛友中学では、不登校特例校を開設し、夜間中学とのコラボが成功していると聞いている」にあるように、確信と見通しをもった議論がおこなわれていない。私たちは大阪市教育委員会の進め方はコメンテーターのように評価できない。
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