夜間中学その日その日 (838)夜間中学資料情報室 白井善吾
- journalistworld0
- 2022年8月19日
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第41回夜間中学増設運動全国交流集会を前に 2022.08.19
1982年8月、夜間中学増設運動全国交流集会が始まった。夜間中学開設運動をしている組織に呼びかけ、自主夜間中学、公立夜間中学、市民が手弁当で集まったのが始まりだ。各組織の現状を報告、課題を明らかにし、学び合いながら、各地の夜間中学増設運動をとり組んできた。
大切にしてきたのは、学習者の生の声であった。学習者の想いは学校教育制度の中ある公立夜間中学は受け入れがたい内容も多い。
例えば、修業年限がそうだ。夜間中学も公立の中学校だ。3年間学べば、当然卒業だと考える教育委員会とその意向を受けた校長は「3年で埋まらぬ空白」「もっと勉強させて」という夜間中学生の意向を無視して、卒業生の出席しない卒業式を行なった。尼崎琴城分校からこの報告を受け、参加者は話しあった。第4回交流集会では「夜間中学の増設と、夜間中学生の立場に立った学校運営を求めるアピール」を採択した。

夜間中学が大切にしてきたことは、夜間中学生の実態から、制度の変更を求めていくという考え方だ。「形式卒業者の夜間中学入学」を認めさせたのは1971年の第18回全夜中研大会の2年にわたる夜間中学生の問題提起であった。学習内容も夜間中学生の立場に立ったカリキュラム編成をおこない、学習指導要領に束縛されない超越した実践を行なってきた。教育委員会や、その意向を受けた管理職とのぶつかり合いを重ねながら、職員会議、研修で確認、実践してきた。これらは、文部科学省が2015年~2017年に通達を出し、追認するに至った。
私ひとりが思っているのではない。夜間中学生共通の想いだと確認するためにも、夜間中学生が声を挙げ、想いを語る交流集会は重要だ。
第40回の交流集会は、報告集を発行するだけで、集まっての集会はできなかった。41回は全国各地から、学習者が岡山に集まる。学ぶ想い、口惜しかったこと、うれしかったことを語って交流いただきたい。
全国には40校(県立2,市立31,区立7)の公立夜間中学が開校している。2023年度は静岡県、仙台市、千葉市、姫路市。2024年度は群馬県、鳥取県、熊本県、福島市、泉佐野市、宮崎市で公立夜間中学が開校予定だという。この全国情勢の中で、大阪市教育委員会は天王寺、文の里夜間中学を廃校にして、新たにつくる不登校特例校に夜間中学を併設することを計画している。近畿夜間中学校生徒会連合会は、2校の夜間中学存続のとりくみを行っている。
この大阪市の動きは、夜間中学の明日に大きな問題を投げかけている。
2016年に教育機会確保法を成立させ、国は夜間中学をそれまでの冷遇視、視て見ぬふりから、正反対の夜間中学の拡充をめざすという方向に舵を切った。政府が解決することを放棄して外国人労働者の問題、引きこもりの人たち、不登校の子どもたちの問題を夜間中学に対応を丸投げして、十分な予算措置をせず、地方自治体の義務であるとして押しつけてきているという見方は間違っているだろうか。
私たちは夜間中学に多く学んでいる新渡日の夜間中学生の学びを一言でいうなら「外国人労働者としての自覚を持って社会参加をするちからをつける」「労働者としての権利を主張し行動できる力を獲得する」ことだと考えている。夜間中学のあゆみと、とりくみの中から到達している考え方だ。
何年かすると、政府や地方行政は“効果”“成果”、「費用対効果」を求めて来ることは容易に予想される。何よりも大切にしてきた、先に述べた、昼の学校教育制度を批判し対峙してきた「夜間中学の自律性」が壊されてしまうという懸念だ。これらを凌駕する夜間中学現場の理論と普段の実践を意識的に行なっていくことが重要だと考える。
大阪市教委の主張を紹介すると、廃校の理由として、「生徒数が減少してきています」と自然減のように議会で説明している。市教委の意向を受けた管理職が6年を迎えた夜間中学生と面接し、卒業を勧奨する一方、日本語の理解が十分でない入学希望者の入学を断る人為的結果にもかかわらず、自然減のように説明している。(『天王寺・文の里夜間中学の存続を-生きる権利と学ぶ権利がすべてに優先する-』解放出版社2022.8.15)

つけいる隙を与えない、「夜間中学の自律性」を主張し、裏付ける毎日のとりくみとそれを示す、「成果物」が現場に求められている。
全国各地から夜間中学に関わるさまざまな人たちが集まる第41回夜間中学増設運動全国交流集会はまもなく始まる。
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