夜間中学その日その日 (843) 夜間中学資料情報室
- journalistworld0
- 2022年9月11日
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第41回夜間中学増設運動全国交流集会 岡山(2) 2022.09.12
交流集会に30年ぶりに髙野雅夫氏の姿があった。これまでも、交流集会の様子の問合せが毎回あった。夜間中学の全国状況についてその都度説明はしてきたが、今回は直接、参加し、交流の様子を知っておきたいと考えられたのであろう。『天王寺・文の里夜間中学の存続を』の巻頭記事「ふたたびの『死刑宣告』に怒り」の原稿が髙野氏から編集委員会に届いた。大阪市が計画している文の里・天王寺の廃校計画は2度目の「死刑宣告」だと。では一回目は「1966年の行政管理庁の「夜間中学早期廃止勧告」だ。明日の夜間中学の姿が示されている。その危機感が参加者にはあるのか、そんな印象を1日目の議論を聞いてもたれたのかもしれない。会場では、新著『天王寺・文の里夜間中学の存続を』をはじめ、夜間中学書籍の普及に徹しているように見えたが、会場で話される発表に耳を傾けながら、複雑な想いではなかったか。
2日目、やはり想いを語っておこうと、会場の前列に席を移し、議論に耳を傾けた。そして次のように話した。

「1966年11月29日、行政管理庁の勧告は夜間中学の死刑宣告だ.夜間中学を守ろう、夜間中学の映画をつくろうととりくみ、その映画をもって、青森・北海道に出発した。岡山高教組の茂見先生から、岡山に来てほしいと連絡があり、72日間、岡山に来た。定時制高校や、識字教室に行きながら、上映活動を行なっていたとき、岡山の解放会館で、水平社宣言にであった。『人間をいたわるかのごとき運動はかえって多くの兄弟を堕落させたことを想えば』のところと『吾々がエタであることを誇りうるときがきたのだ』。体の震えがとまらなかった。それはまさしく『吾々が夜間中学生であることを誇りうる時が来たのだ』ということを確信した。しかし夜間中学がどんどんつぶされていく、この岡山で、夜間中学を守るから夜間中学をつくるに運動を切り替えた。8人の仲間が名乗り出て、大阪・天王寺夜間中学で開設を実現できた。夜間中学という学校教育制度をもっているのは、世界でも日本の夜間中学だけだということを聞いた。学ぶ前と学んだあと変わらなければいけない。世界に誇る夜間中中学の卒業生であることを誇りに生きていく」。
髙野さんは映画をつくろうと決めた経緯について詳細に語らなかったが、恩師・塚原雄太さんに次のように迫っている。「先生、行政管理庁の廃止勧告をどう思いますか?」「どうって、俺たち公務員だからな」「今まで夜間中学が廃止されたとき、反対運動したところはありますか?」「ないだろ」「じゃ、今度も他所はやらないよね」「先ずやらないだろう」(長い沈黙のあと)「先生、カメラをまわしてください。俺が声とるから」「映画をつくるのか?」
1966年の廃止勧告を打ち破る闘いは.証言映画「夜間中学生」。では、天王寺・文の里夜間中学の廃校を断念させる夜間中学の側の闘いは?を髙野さんは問うているのだと受け取った。「何ができるのか?」「有効な手立ては?」「公務員だからと消極的な教員と夜間中学生はどんなとりくみができるか」をいっていると考えた。
二日間の報告議論で明らかになったことを述べておく。
1. 新設夜間中学の教員配置は、既設の公立夜間中学と比較して、人数的にはよくなっているとうかがえるが、経験の豊富な教員だけでなく、これから教員生活をはじめる教員を配置する視点が希薄である。経験の豊富な教員も、長く夜間中学に勤めてもらうということを想定していない人事が行なわれている。
2. 教育行政主導の夜間中学運営から学習者の声を大切にし、豊かな学びの場にするため、大きな変革が求められている.「昼の教育を分かりやすく丁寧に夜間で」を克服し、新たな学びの創造が求められている。そのために、夜間中学の自立した生徒会組織、「夜間中学を育てる会」などのPTA組織が重要。
3. 夜間中学の学習環境の向上。無償の給食実施、夜間中学の就学援助制度の確立。エレベーター、得心いくまで学べる修業年限。
4. 国勢調査の結果分析を行ない、夜間中学開設を迫る武器にしていく。
5. 「夜間学級」「二部」と呼ばれている名称について、一つの独立した学校だという考えを明確にするため、私たちは「夜間中学」「夜間中学校」というべきではないか。
6. 公立夜間中学とそれまでとりくみを進めてきた自主夜間中学の関係について、開かれた公立夜間中学にを追求するために、これらを克服し、文章化した「札幌市公立夜間中学設置基本計画」に学ぶ。

岡山自主夜間中学の創造性に満ちた学びの場の一端を見ることができた。何か問題が発生したのか、涙を流して話す夜間中学生の話を丁寧に聞かれているスタッフの姿を見た。この自主夜間中学の姿が、公立夜間中学でも実践できるそんな夜間中学の開校を追求したい。司会者はこれを夜間中学の「自律性」だとまとめた。
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