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夜間中学その日その日 (859)   砦通信編集委員会

  • journalistworld0
  • 2022年12月18日
  • 読了時間: 4分

 夜間中学と水平社宣言         2022.12.19


 2022年は日本初の人権宣言といわれている「水平社宣言」100年目に当たる。夜間中学卒業者の会は昨年、水平社博物館で「夜間中学生展」を見たあと、現地学習会・第1回の夜間中学生寄席を行なった(2021.03.27)。駒井館長が読み上げる水平社宣言をわたしたちも声を出し、朗読した。夜間中学生展では全国行脚で髙野さんが水平社宣言に出逢った日の「わらじ通信」。「同情を憎み矛盾に怒れ」と書いた辞書。そして謄写版で刷った自筆の水平社宣言文が展示されていた。

 水平社宣言は水平社創立80周年に英語、フランス語、ドイツ語、中国語、朝鮮語、ロシア語、スペイン語、アイヌ語の8つの言葉で翻訳されている。天王寺、文の里夜間中学の教員であった、金城実さんが琉球語の翻訳にとり組まれていることは、『天王寺・文の里夜間中学の存続を』の原稿を依頼するため、お目にかかった3月にも、話されていた。

 推敲を重ね、ようやく完成し、その発表の会が12月3日水平社博物館前の西光寺で、翌12月4日京都府部落解放センターで開かれた。

 12月4日、筆者が会場に到着するのを待っていたかのように、開口一番、天王寺・文の里の状況ととりくみの状況について金城さんから質問を受けた。緊急出版に収録した金城さんの原稿には「夜間中学統廃合問題にかかわり、現役教師、校長に直訴状を提出します」として「先生たちは夜間中学が何たるかをご存じですか。この学校が開設された経過について考えられたことがありますか・・・黙って見過ごすのか、見ずに何もしないのか」の直訴状だ。12月1日にあった「琉球遺骨返還請求訴訟」の公判では直接話せなかったので、早く行って報告しておこうと会場に行ったが金城さんから先に声がかかった。

 夜間中学生、卒業生がこの間とりくんでいることを説明すると、うなずきながらも、「大阪市は時間稼ぎをしている。やられてしまう。世論を喚起する、次の行動が必要だ」の返事が返ってきた。



 開会時刻には会場は満席となった。マイクを持った金城さんは、水平社宣言にであう経緯で、夜間中学が関係していたことから話を始めた。1975年文の里夜間中学で夜間中学生との共同作品「オモニの像」を完成させ、校門入口正面にオモニの像を設置した。そのことを知った、部落解放同盟大阪府連合会住吉支部から、「住吉を象徴する作品を制作してほしい」と依頼があり、「解放へのオガリ」と「荊冠旗」を制作した。右手を天高く突上げ、左手で、子どもを抱きかかえる像は高さが12.5mの作品で解放の願い、行動、抵抗を示した像だ。制作にあたり『西光万吉選集』で西光さんの文章を読み、水平社宣言を知った。魂の入らない作品は作れないと、水平社宣言と向き合ったと話された。

 金城さんが引きつけられたくだりは「ケモノの皮剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代価として温かい人間の心臓を引裂かれ」のところだ。



 水平社博物館に出展した髙野さん筆の謄写版刷りの宣言文には2箇所に傍線が引かれている。「これ等の人間を勁るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させたことを想えば」と「吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ」の2箇所だ。後者の琉球語訳の説明で金城さんは次のように説明した。

 「エタ」は琉球語にはない。ヤマトの差別用語をつかって、「エタである事を誇り得る時が来たのだ」という表現は刃物を抜き、相手に切り込む効果がある。とんでもない言葉の暴力を浴びせるこの「エタ」という言葉を使うには、心構えと覚悟が必要である。というのは「エタ」を否定することと、他方「エタ」である事を誇るという矛盾は、自家撞着に陥るからだ。それを乗越えることの表現をもつのがこの水平社宣言の到達点だ。

 さらに続けて、縮こまり身を隠すか、逆に身をさらすか、人間の尊厳を回復する営みは、自己の弱さとの闘いだとも言える。差別語を反転して「誇り」にまで高めるのは単なるレトリックではなく、すごい内的葛藤と差別社会に向かって闘うことをつきだした表現だと金城さんは述べた。

 髙野さんは「夜間中学生である事を誇りうるときがきた」とそして、金城さんは「琉球沖縄人である事を誇りうるときがきたのだ」と語っている。

「琉球遺骨返還請求訴訟」の公判で代理人に任せ、公判に出廷しない被告人・京都大学に対し、本来問われているのはヤマトでしょう。ヤマトの人間一人ひとりが答えなければいけない問題ではないのか、遺骨を返還しない京都大学に対し、本来問うべき人は、琉球人ではない、ヤマトの人間ではないのか。傍聴席から声が上がった。

 講演で金城さんから全文の琉球語での読み上げはなかったが、後日、音声データーが届けられることになった。「チュ ニンジンヌ イチミンカイ ニチ ウタビミソ-リ」(人の世に熱あれ)、「チュ ニンジンニ、ヒカリ、ウタビミソーリョ」(人間に光あれ)。夜間中学にかかわり続けたいと考える夜間中学卒業者の会の姿勢を根っこから問いかける、水平社宣言である。

 
 
 

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