夜間中学その日その日 （865） 夜間中学資料情報室

　　2022夜間中学新聞報道（1）　　　　　　　　2023.01.23

　夜間中学資料情報室は2022年で、6,150の新聞報道記事を収録確認している。もっとも古い記事は「ローマ字が何より好き　大阪に『働く子ども』の学校　生野第２中学校・月、水午後4時から6時まで授業を始めた・10数名の1年生」（毎日新聞1947.10.17）だ。2022年は収録数627と最多の記事数であった。しかし、収録できているのはほんの一部で、この2～3倍はあるのではないだろうか。

　筆者は夜間中学と出逢うまで、購読新聞に掲載された記事を切り抜き、ファイルしたのが始まりで、授業で使いたい記事をスクラップしていたが、その中に夜間中学の記事がいくつかあった程度であった。夜間中学に勤務し、35回全夜中研大会の資料集、記録誌の発行編集に携わったとき、どうしても収録しておきたい記事が見つからず、府立中之島図書館のマイクロフィルムからその記事を見つけ出し、記録誌に収録した。今ではパソコンで検索をかけ、内容を確かめることができる。便利になったが、記事数が多く、その内容を頭に入れておくことは不可能だ。

　記事の誤りに気づくこともあるが、そこは注意しておけば、新聞記事は、大切な夜間中学のあゆみを記したものとなっている。夜間中学の出来事で、不明なとき、記事を検索し、確かめるようにしている。新聞記事やテレビ番組が夜間中学開設運動に大きな大きな役割を果たしたことは忘れてはいけない。

　夜間中学取材に応じ、苦労して書き上げた記事が、なかなかデスクの採用ならず、結局掲載されなかった時、あきらめることなく「夜間中学生の学びに学びこれからの記者活動に生かしていきます」と、足を運ばれた記者の顔が浮かんでくる。

　2022年の報道では全国紙だけでなく、全国紙の地方版や地方紙が積極的に報道いただいたことが特徴ではないか。夜間中学開設にむけての丁寧な報道だ。新聞社別に並べると、毎日（104）、朝日（84）、産経（46）、讀賣（43）、北海道（41）、中日（21）、西日本（19）、河北（16）、徳島（14）、沖縄タイムス・日本教育・四国・日本海（11）、神奈川（10）を始め74紙を数える。

　夜間中学の社説記事は

「＜社説＞ともに歩む明日へ（4）教育格差の解消目指して」（1/5　北海道新聞）。

「論説　公立夜間中学の設置　学ぶ意欲の後押し進めよ　全ての人が豊かな人生を送ることを目的とする同法の理念が全国で浸透を」（2/2　福井新聞）。

「社説　公立夜間中学　学び直す場を九州全域に　増加する不登校生徒の多様な受け皿の一つとして活用すべき」（4/20　西日本新聞）。

「＜社説＞公立夜間中開校　学ぶ権利支える拠点に　通学が継続できるか懸念する生徒は少なくない」（4/20　北海道新聞）。

「社説22平和考　学びの保障　民主主義の土台より強く　義務教育未修了90万人　夜間中学は『時代の鏡』」（8/14　毎日新聞）。

「社説：不登校の急増　SOSを見逃さず支えて　増加のペースは加速度的」（10/29　京都新聞）。

　毎日新聞コラム『余録』に掲載された「老人とは学ぶことをやめた人　奈良県立大和中央高校2年の米田豊満さんは73歳の今も青年だ」（毎日新聞　2/12）は記憶に残る記事だ。

　夜間中学がテーマの投書もあった。奪い返した文字で新聞に投書した夜間中学生や卒業生の記事もある。

「投書　星友館の校歌　心にしみる校歌」（2/8北海道新聞）

「余録『73歳の青春』に衝撃受け　」（2/19毎日新聞）

「声ひろば　　夜間中学生からの手紙　西本恵美」（2/20　高知新聞）

「声ひろば　『夜間中学』を通して」（10/27　高知新聞）

「投書　学びの場　夜間中学つぶさないで　李光變」（11/22朝日新聞）。

　2019年3月16日に始まった、産経新聞の紙面全体を使った、ルビ入りの連載『夜間中学はいま』は2022年から、同じ夜間中学を2回に分け、そのうち1回は夜間中学生の作文を掲載しているスタイルになったが、75年目を迎える、戦後の夜間中学の「今」を記録した重要な意味を持った日本の教育史に残す、史料ではないだろうか。

　「ヤングケアラーだった　25歳の夜間中学生が見た風景　学びを取り戻す　詩は私自身」 守口市立さつき学園夜間学級・番外編（2023.3.11産経新聞）は掲載された詩、写真、文章は一人の夜間中学生「たに　かんな」さんが作成されたそうだ。紙面を提供した新聞社にも驚いたが、夜間中学生が獲得した学びの力は夜間中学の誇りだ。