夜間中学その日その日 (874) 夜間中学資料情報室
- journalistworld0
- 2023年3月5日
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夜間中学入学のハードル 2023.03.06
県や政令都市に最低一校夜間中学をとの方針で、夜間中学の開設が進められている。夜間中学で学びたい。この長年の夢を実現したいが入学を希望する人たちに、そのハードルは非常に高い。
天王寺夜間中学が開校した、1969年6月5日の入学式に出席した夜間中学生は89人。年齢を見ると、20歳未満13名、20代28名、30代29名、40代12名、50代6名、60代1名。67歳から15歳の年齢幅。10代~30代で79%を占める。
入学時点の学歴は小学校中退29名、小学校卒30名、中学校中退30名。
国籍は韓国5、日本84。
出身地別 九州9、四国6、中国6、近畿(大阪以外)5.北陸2、東海3。関東3、東北1、市内40、府内9、韓国5。
天王寺開校から54年後の現在、当時20代の人たちは74歳から84歳の年齢となる。順次平均寿命81~88歳に達していく。こう考えると、義務教育を保障されず亡くなっていかれた人たちがなんと多かったか。髙野雅夫さんは「近くに夜間中学がないので、無学の私は、毎晩布団の中で泣いています」という女性の留守電が入っていた。もっと早く夜間中学が開設されていたらと講演の中で話していた。
天王寺開校当時入学した夜間中学生と半世紀たった、現在の入学生の実態は大きく変わっている。この年齢の人たちが、遠距離を時間をかけ、しかも夜間、通学することが、困難であることはその年齢に近くなった筆者として実感をもって感じる。「夜間中学生は皆さん元気ですね」来校されひとがよく口にする言葉であるが、元気な人しか通学できないのだ。その元気な夜間中学生も、家族が病気になれば、たちまち欠席しなければならなくなる。
各夜間中学で、登下校に要する時間と、通学手段、通学費用の実態を調べていただけないだろうか。登下校の安全性を考えると公共交通機関に頼らざるを得なくなる。夜遅くなるとその数も少なくなる。都市部とそうでないところは格段の違いが出てくるであろう。

大阪から京都に向かうと、淀川をはさんで左(三島地域:吹田、摂津、茨木、高槻、島本)、右(北河内地域:守口、門真、寝屋川、大東、四条畷、交野、枚方)が向き合うように街が並んでいる。左はJR京都線、阪急電車。右はJR学研都市線、京阪電車が走っている。北河内地域には守口夜間中学が、三島地域には夜間中学はない。過去20年間の夜間中学生の延べ人数を調べた。
15歳以上人口 三島地域963,700人。北河内地域965,751人とほぼ同じ。
夜間中学生数
三島地域483人…(吹田248・摂津70・茨木55・高槻105・島本5)。
北河内地域2,336人…(守口529・門真621・寝屋川371・大東249・四条畷31・交野56・枚方479)。
夜間中学が地域内にない三島地域は 豊中、守口あるいは大阪市内の夜間中学に通っている。両地域の違いは近くに夜間中学があるか否かである。両地域の2020国勢調査の義務教育未修了の人数を比べると
三島地域3569人・・・(吹田848・摂津277・茨木744・高槻1597・島本103)。
北河内地域4639人・・(守口602・門真668・寝屋川933・大東481・四條畷197・交野326・枚方1432)。
2010調査から2020調査まで10年間に新たに未就学だと調査で答えた16~24歳の未就学者を比べると
三島地域53人 ・・・(吹田18・摂津5・茨木14・高槻14・島本2)
北河内地域52人・・・(守口5・門真5・寝屋川16・大東8・四條畷0・交野1・枚方17)。
夜間中学生は、通学条件のよい学校を選んで入学することになる。大阪市民であっても、大阪市以外の夜間中学に通っている。大阪市教育委員会は夜間中学の廃校を大阪市のことだけでしか考えていない。人為的に夜間中学生数を減少させたにもかかわらず、自然減だと強弁し、机上の理屈のみで云々しているが、あまりにも考えの狭い、度量のない考えだと言わざるをえない。大阪市はこんな街ではなかった。

三島地域の増設はもとより、大阪市ではさらに夜間中学を増設しないといけない2020国勢調査の結果だ。大阪市内の北部、西淀川区・淀川区・東淀川区この3区で、1,937人の義務教育未修了の人たち、16~24歳の未就学者は27人にのぼる。
留守電にあった、「近くに夜間中学がないので、無学の私は、毎晩布団の中で泣いています」この声は一人の留守電のではない。
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