夜間中学その日その日 (884) 白井善吾
- journalistworld0
- 2023年4月24日
- 読了時間: 4分
産経新聞連載『夜間中学はいま』 2023.04.24
連載『夜間中学生はいま』は2019.03.16~2020.01.18の27回と2021.07.12~2023.03.27の37回。併せて64回を数える。これ以外に「夜間中学はいま」と銘打った夜間中学関連記事もある。27回の連載を「前編」。37回の連載を「後編」と記すことにする。
前編には31人の夜間中学生と6人の夜間中学関係者が登場している。近畿、東京、岡山、沖縄と広範囲の取材である。後編は「学び舎の風景」とサブタイトルをつけ、京都・奈良・大阪・兵庫の公立夜間中学17校を取り上げ、各校「上」と「下」2回にわけ、「上」では各夜間中学でとりくんでいる活動と夜間中学生の姿を紹介し、「下」で、各校で発行している文集から夜間中学生44人の文章を紹介している。

私は後編の記事で光り輝く、夜間中学生のコトバに注目した。これら夜間中学生語録を「生きる」、「学ぶ」、「闘う」、そして夜間中学がもつ「学びの場」に分類を試みた。一部を紹介する。
「生きる」
・『こんにちは』や『また明日』、ささいな挨拶でも、私にとっては大切です。言葉を交わすことは自分がここに存在しているのだと分かるから。『こんにちは』から『また明日』まで学校にいることでできる会話がある。それが私が学校へ通う理由です。
・自分にとって『一本の命綱』だった夜間中学。
・私は中国人生徒の『僕は命をかけて学んでいる』この言葉に衝撃を受けた。日本語がわからず、病院に行けなかった。
・友達が弁当を広げるそばで、じっとしていた。『おなかが痛いから食べられへん』と言い訳したが、リュックに入っていたのは、だし昆布一枚。おにぎりを作る米がなかった。『お弁当を持たせられなかった母の方がつらかったと思う』
「学ぶ」
・生活していく上で、基本的な学力の必要性を痛感し、学校にはいい思い出はなかったが、学び直したいと夜間中学に入学」
・文字がわからないときは息ができないようで、文字がわかってからは、空気を吸うことができるように感じました。文字を学ぶことは、自分の命と人権をとりもどすことだと思います。
・生徒のみなさんにお伝えしたいことがあります。勉強できる機会があるのならどうかその機会を逃さず勉強してください。日本で生活するなら、日本語は絶対に必要です。知識は誰にも奪われない宝物です。
・知らなかった事を教わり、なるほどという気づきが刺激になる。学ぶということは本当にすばらしいことだと思う。
「闘う」
・今は誰とでも話せる。何でも聞ける。堂々と頭を上げて歩ける。学校で勇気をもらいました。
・この夏これまでの自分では考えられない挑戦をした。夜間中学に関するシンポジウム(*夜間中学増設運動全国交流集会)に参加するため、岡山に一人で向かった。
・小学校のこどもたちに話す。勇気を出して話してよかった。夜間中学の先生たちが私を掘り起こしてくださった。
・突然の統廃合計画に心悲しく、涙が出ました。足の悪い人行けなくなる。毎日勉強していても、どうしたらいいのとずっと心配不安です。学校を守るために頑張る。
・20年勤めた会社を辞めて新しい道を歩む決心ができたのは夜間中学で学んだからだ。人のために何かをしたい思うようになった。
・私が夜間中学へ行く意味はなにやろ。もう一度原点に戻って何かせえということかなと思いました。それが先ず一人でも多くの人に夜間中学校のことを知ってもらうことやなと。
「夜間中学の学びの場がもつ力」
・子どものころ、学校は一番つらい場所だった。
・明るく物事を解釈できるようになりました。明るい方向に夢を持てる。夜間中学はそんな気持ちにさせてくれるところです。
・夜間中学校は私たちの生活の中で重要な役割を果たしています。
・ここで勉強して、みんなと笑って話をすると気持ちが楽になる。それが生活の支えになっている。いつもいたい場所/安心できる場所/私のアナザースカイ(第二の故郷)/先生と生徒という2番目の家族を見つけた/2番目のマイホーム/夜間中学はあなたの夢を叶えるパ-トナーです。
・夜間中学に入学して本当によかった。俺の人生の分岐点。
これらのコトバが生み出される、ひとつひとつの背景と、出来事がある。奪われた文字を奪い返し、人間の尊厳を取り戻す。夜間中学は人間復権の学校だと考える。尊厳を取り戻したことを表わす言葉が綴られている。またこれらは一つの通過点である事を確認したい。次のステージで人間復権のとりくみが続く。教え教えられる立場が次のステージでは立場が逆転している。産経新聞連載『夜間中学はいま』に示されている“宝探し”を続けたい。
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