夜間中学その日その日 (908) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2023年8月22日
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生徒会結成文書(髙野雅夫夜間中学資料室だより②) 2023.08.22
住んでいる小さな地域の農業のあゆみをまとめ、地域の子どもたちに手にとってもらえる小冊子をつくろうというとりくみがあった。例年行なっている農業の共同作業も中止となり、地域の行事もほとんど中止となってしまった。こんな時にできることとして、農業のあゆみをまとめる企画を実行することになった。その編集作業時の出来事だ。話しを総合すると「多分こうであろう」となるが、裏付ける資料がないとと、行き詰まってしまった。次の委員会で編集委員の一人がカーボン紙をあてて複写をとっていた副本が持参された。明治なかばの農業実行組合発足と目的がきっちり浮かび上がった。
学校はどうだろう。学校の様々な資料は、在任期間はきっちり保存活用されるが、転勤となると細かい、個人資料はその人と共に動くことになり散逸、消滅をたどることになる。学校が保存しているアルバムも統廃合になると新しいところに入れるスペースがないとごっそり廃棄となるのだそうだ。震災や火事で多くが廃棄の運命をたどる。
夜間中学在職時、昼の学校がうらやましく想ったことが一つある。毎年4月になると新しい学年、クラスと担当する子どもたちは変わっていく。中学校の場合、3年で卒業していく。新たな気分で新年度を迎えることになるのだが、夜間中学はそうはいかない。在籍期間、在勤期間は、ずっとつながっていくことになる。卒業後も退職後もつながりはつづく。それに伴う資料も単年度で完結はしない。机の上を整理整頓してください、建坪率はお守りくださいとの話しはいただくが、整理の苦手な筆者はあるとき、一冊のノートになんでも記録し、そのノートを増やしていく方法をとったこともある。ノートが増えていくと、記録のところにたどりつくのに時間を要した。その箇所にたどりつくと、明確によみがえり、担当者が次々変わる府の教育委員会との話し合いではその記録が力を発揮した。前任者はこのようにおっしゃいましたよ。

そんなとき、夜間中学では、毎年発行する文集、10年ごと発行する周年記録、実践活動記録誌や出版物を発行することは、頭の整理でき、その出版物のページをめくると、話題になっている出来事の前後関係が明確になり、出版物にまとめ公刊する苦労は大変だが、意義は大きいことが分かった。
髙野雅夫夜間中学資料は膨大で、全国区。謄写版印刷や青焼き印刷の紙資料、自筆原稿、手紙類、冊子、新聞切り抜き、写真、録音テープ、8ミリ、16ミリ映画フィルム、書籍などだ。資料の解明と分析は2015年から開始した。解明できた資料は、その都度明らかにしている。リバティー大阪の特別展「夜間中学生展」。特別展 『学ぶたびくやしく学ぶたびうれしく』の図録、記録映像、書籍『生きる 闘う 学ぶ』『天王寺・文の里夜間中学の存続を』等だ。
夜間中学の生徒会の必要性が議論になっているが、資料の中に生徒会発足を呼びかける一枚のガリ版印刷の黄ばんだ資料がある。紹介する。
私たちの生徒会を作ろう! (1973年4月18日 大阪・八尾夜間中学)
1人では何もできない。1人では弱い者です。だから私たちの、いろいろな考えや希望をみんなで話し合い、みんなで良い方法を決めていくために生徒会をつくろう!バラバラで不満を云っていても良くなりません。1人1人で先生に話すよりも、みんなで話しあって希望を出してゆく方が1番良い方法だと思います。
そのために、みんなで話しあう生徒会をつくり委員(みんなで決めた人)を決めて、みんなの考えを話しあって委員の人たちが代表して先生や学校側と話し合い、もっと勉強がたのしく良くできる方法や、給食室に図書(本)を置いたり・・・私たちの夜間中学をもっと、だれもが本当に楽しく何でも話しあえるように、一日も早くしていきたいものです。
私たちの学校では平気で恥をかいて、楽しく勉強できるのでなければ、学校にきた意味はありません。みんな同じ夜間中学生同志なのですから、お互いに平気に恥をかき合って、教え合い、話し合って行くのが本当ではありませんか!!
差別のない学校で私たちは学ぶのですから、私たちが受けてきた馬鹿げた差別を他人に対して絶対にするようなことがあってはならないはずです!私たちが学校で勉強している間も、無学のために差別されて苦しんでいる人たちが、まだまだ沢山いることも考えながら、これからも入学して来られる人たちを本当に差別のない私たちの学校へ楽しく通学してもらえるように、みんなで頑張ってゆきましょう。― 何よりも先ず生徒会をつくろう! そして話し合おう!
(漢字にはルビがつけてある)
八尾夜間中学は1972年4月、開校だ。すると一年後の生徒会結成の呼び掛け文書になる。「私たちの夜間中学をもっと、だれもが本当に楽しく何でも話しあえるように、一日も早くしていきたい」。個々の要求を生徒会で話し合い、全体の要求にしていく。生徒会の役割は重要だ。
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