夜間中学その日その日 (917) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2023年9月24日
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大阪市議会「教育こども委員会」(2023.09.22)傍聴 2023.09.23
第9回教育委員会議(2023.06.27)で承認された内容について、この日の教育こども委員会に夜間中学について、4件の陳情書
「本市における中学校夜間学級の再編にかかる方向性について」(89号)。「天王寺地域に今は絶対になくしてはならない、『夜間中学校』の実質的な『廃校』方針に抗議し、『廃校』の方向性の変更を求め、天王寺夜間中学校(天王寺中学校夜間学級)の存続を求める」(90号)。
「心和中学校への天王寺中学校夜間学級と文の里中学校夜間学級の拙速過ぎる廃校・統合移転計画(大阪市教育委員会会議55号議案『本市における中学校夜間学級の再編にかかる方向性について』)を見直し、大阪市で学ぶ義務教育未修了者をはじめ、様々な事情のもとで学ぶ夜間中学生の学習する権利を保障することに関する陳情書」(92号)。
「大阪市教育委員会議第55号議案『本市における中学校夜間学級の再編にかかる方向性について』56号議案『“識字・日本語教育基本方針”について』の審議に関する陳情書」(94号)。
が提出され、審査の議論が行なわれた。

教育委員会の見解表明は多田教育長が次のように行なった。
「2校は小規模校になった。日本語指導必要な人が増えた。その指導体制充実が必要。校舎の老朽化が進んでいる。56号は社会教育分野の方向性を示したもの。夜間中学は教科の学習をする学校教育だ。会議を重ねてきた。十分審議は尽くされている」。
西崎照明(公明)、荒木肇(自民)、太田克己(自民くらし)各議員が質問に立っ
た。維新の議員は質問を行なわなかった。
西崎「教育委員会議の55号議案と56号議案の主張内容が矛盾している」との指摘に対し生涯学習課は「社会教育分野と学校教育と役割は異なる」と答弁した、
*社会教育、学校教育も含めたのが生涯教育。その垣根は取っ払って、進めていくのは国際識字年の議論として大阪市もその考えで議論を行なっていた。そんな切り分けで、夜間中学のとりくみは行えない。バウンダリーな問題を両者垣根をつくらず実践してきたんではないのか。
西崎「夜間中学の必要性は高い。義務教育未修了者13633人、政令市で最大。にもかかわらず、廃校にする。本市の基本姿勢は?」教育長は「9/14文部科学省(文科)の通知文書がある。政令市の中で最大の4校。小規模校、日本語指導が整えられていない」と政令市で最大の夜間中学数でやってきたことを強調した。中学校課長は「ポスター、HP、ツイタ-、メトロ5駅デポスター掲示、とひき続き広報に努める」。大西指導部長「未修了者への広報に努める」。
*一年前と同じ答弁で地下鉄の駅は重なりもあるが120近くあり、その4.1%しか掲示していない。改善の要望はそのまま、「ひき続き広報に努める」は世間では通用しない。
西崎「2校を訪問し生徒と話しをした。天王寺には行けない、エレベータがない、身近な文の里で学びたいという生徒の意見があった。天王寺では入学希望者を断っているのでは?」中学校課長「R8年まで天王寺校舎の1階の天王寺校舎を活用。R4年校内の指導体制で受入れられる範囲内で他の夜間中学を紹介した」。
*天王寺の夜間の校舎は約20段の階段を登ったところに校舎があるのが実態。20年以上前から入学を断り、卒業を督促し、生徒数を人為的に減らしてきたのが事実。それを2022年だけのことのように答弁している。
西崎「3年後に校舎の建て替えをする。本当に検討の余地はないのか?」中学校課長「校舎老朽、永続は無理。昼の生徒増で校舎増築は必要。将来(夜の)生徒数が増であれば適切に対応する」
*昼も夜も同じ中学生。夜間中学はつけたしか? 2020国勢調査結果を見れば「将来(夜の)生徒数が増であれば」と仮定ではないはずだ。夜間中学生は物ではない「にんげん」だ。「本当に検討の余地はないのか」と議員の問は、今の場所に存続して、校舎の建て替えをする方法を選択すべきではとの意味ではないのか。
委員会に市長の出席と答弁を要請されたのであろう。予定より早く着席した市長に、しばらくやりとりを聞いてもらったあと、市長に次のように質問した
西崎「9/14文科は改めて通知を出した。4校を減らすことは国・文科の方針とは違うのではないか?」
横山市長「(大阪市は)政令市で最大の4校。生徒数減、日本語指導増、不登校特例校で解消するもの」と、手元のメモを読み上げ答弁した。
西崎「市長は再編に納得しているということか?選択肢を減らすのは正しいことか?」と再質問した。市長は先の答弁を再度繰り返した。
西崎「文科の通達のとらえ方が違う。後日『夜間中学はいま』を市長に届ける。そしてひき続き議論をしたい」と質問を終えた。
*このときの市長の様子を目にして想ったことだが、『夜間中学はいま』(産経新聞)を目を通していない。教育委員会事務局は市長に話しすらしていない。ひょっとしたら事務局も大阪市の夜間中学のコトバが収録されたこの書籍(9/1発売)を手にしていないのではと想ってしまった。夜間中学卒業者の会編集『天王寺・文の里夜間中学の存続を』を渡したときの姿と重ね合わせてしまった。市長はこの後退出した。
荒木「心和(不登校特例校)の教育内容、指導体制について?」。中学校課長「通常学級の授業。在校生徒には説明した。日本語指導については検討している」。
*議会のルールかもしれないが、部外者にはわからない答弁だ。指導体制の中味の紹介を求めた質問なのに、その答えは行なっていない。
荒木「天王寺の存在、全国の魁けだ。天王寺の名前を残すことは?」。中学校課長「大切なこと、天王寺にどういう形で残せるか検討する」。
*前回は「在校生、卒業生らの意見を聞いて」とも答えていたが今回はそれがなかった。文の里はどう考えるのか。
太田「(2校は)なくしてはならない。もっと生徒の声を聞く。天王寺校舎に夜間中学をのこす」。中学校課長「天王寺は老朽、永続使用は難しい。就学希望者が増となれば、適切に検討していく」。
*丁寧に入学者に対応をせず、夜間中学生に希望を持って学べる環境ではないことを受け取らす対応をしてきたのは残念ながら、大阪市教育委員会の姿勢ではなかったのか。「適切に」とここでは答弁したが、国勢調査結果を受けとめるなら、入学希望者が「増」である事は明らかだ。文の里、天王寺に夜間中学を存続させ、新たに夜間中学を開設し、学習環境の向上に努めるのが教育委員会の仕事ではないのか。
陳情書の扱いについて各会派の意見を聞いた。
「公明」は夜間中学の4件の陳情書を「採択」するとの意思表示を行なったが。全体の多数決により「継続して審議する」と教育こども委員会ではまとめた。
教育長の言う「生徒数減、日本語指導の人が増えた、(天王寺)校舎の老朽化」について、夜間中学生は指摘し、すべて論破してきたことを付言しておく。生徒数減の施策を進めたのは教育委員会。自然減ではなく、教育委員会の明確な意図を持った人為減である事。日本語指導の必要な人の増加は1980年代初め、中国引揚げ帰国者の夜間中学入学から顕著になった。つい最近始まったんではない。教育委員会は現場の努力を見て見ぬふりをしてきたのではないか。2013年12月、天王寺夜間中学の校舎の耐震指標は国の基準を満たしていないことを理由に天王寺を廃校にする文書を突然、夜間中学生に配った。夜間中学生の追求により、市教委は「ごめんなさい、耐震指標0.74で国の基準(0.70)は満たしたいました」と廃校を撤回した経緯がある。1975年の阪神淡路大震災後から校舎の修理を要請し、第一次廃校騒動以降も夜間中学生は校舎建て替えや改修を訴えてきている。この経緯を教育委員会はよくご存じのはずだ。
(注)当日の傍聴メモで文章化した。後日正式な議事録が公表されるが、いま今、考えていただくため、投稿する。*は夜間中学卒業者事務局の考えを示した。
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