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夜間中学その日その日 (918)     白井善吾

  • journalistworld0
  • 2023年10月1日
  • 読了時間: 3分

  私設夜間中学(髙野雅夫夜間中学資料室だより③)     2023.10.01

 髙野雅夫氏自筆年譜(『タカノマサオとは何か』みずのわ出版1998年)をみると、1971.11.26~27:第18回全国夜間中学校研究大会(於 大阪市・天王寺夜間中学)。主題「夜間学級に学ぶ生徒の実態を認識し、義務教育のあるべき姿を追求する」。在韓日本人引揚者二世・前嶋鉄雄の発言中止を巡り生徒、OBたち「生徒の発言権と形式中学卒の入学権」を要求し壇上を占拠、文部省課長補佐、大阪府・市教委から形式中学卒の入学権を勝ちとる。しかし、教師たちとの対立と不信が続き深い傷跡を残す。

 それから約一年後

1972.11.30:連続射殺魔・永山則夫の私設「夜間中学」開設。公立夜間中学が変質していく中でもう一度“原点”から文字とコトバを奪い返す闘いを始める。第2の永山則夫を生まないために被害者・遺族の立場に立つ―という原則で永山則夫と対立―敗北の総括作業に入る。


 とある。筆者が髙野氏の謦咳に接した時期もこのときだ。21次日教組教研(山梨)で夜間中学生の告発現場に遭遇したことが契機となって、吹田での夜間中学開設運動の担当執行委員としてとりくみをはじめた。髙野氏が来阪されることを聞きつけ、話し合いに参加した。反応が悪く動きが鈍い、私たち現場にいらだち、会場を出て行く髙野氏を止めていた。日教組教研での印象とその日の展開の急変が私は理解できなかった。

 夜間中学資料室にある髙野氏のノートの中にこの日の記述があった。この一年に何があったのか?夜間中学の開設運動にとりくんだばかりの筆者はわからなかった。ただヒントになる新聞記事があったが、どこにしまい込んだか行方がわからず、長い間そのままになっていた。夜間中学資料室の資料の中に小さな記事を見つけた。


 コラム名が「標的」の記事で筆者は(回廊)と記されている(朝日1972.9.28)。紹介する。


「人間奪還の学校」

 全国に120万人もいる義務教育未修了者のため夜間中学を守りふやす運動がつづけられている。文部省も夜間中学廃止方針からその制度化を黙認し奨励する空気に変わってきた。ところが、この運動の推進力となってきた髙野雅夫がもう夜間中学生募集のビラも配らず、永山則夫の裁判闘争に集中し「みんなが国のつくる学校にいかなくなればいい」「自分で学校をつくって自分ではいればいい」と爆弾発言をしたらしい。

               ◇

 小柳伸顕は髙野の投げかけた問いを、つぎのように受けとめている(「月刊キリスト教」9月号 教文館刊)-不就学児の大半は戦争、貧困、差別の犠牲者だが、制度化した夜間中学は戦争、貧困、差別に取り組まず、進学や教養の場となっている。「人間奪還の空間としての学校。彼はそれを“自分で学校をつくって自分で入学すると呼ぶ”のである。これほど痛烈な中教審路線批判はほかにもあるまい。こぼれ落ちた者もまた国家のために“能力に応じて”再教育しましょう(夜間中学で)、という国家からの救済に対する拒否である」

                ◇

  髙野は自分の子を小学校に入れず、自分でカリキュラムをつくって教育することを本気で決意しているという。これはだれにでもできることではないし、子どもに学校での集団生活を経験させないことにも問題はあるが、人間奪還の思想が現在の教育制度と対決する極限の姿がここにあるだろう。(回廊)




 この後、髙野さんは「私設夜間中学」(1972.11.30~)、『チャリップ』編集出版(1974.2~)、「オキナワ行き」(1975.6~)、「生闘学舎建設(三宅島)」(1976.4~)と活動を実行していく。


 小柳さんが指摘する、「制度化した夜間中学は戦争、貧困、差別に取り組まず、進学や教養の場となっている」「こぼれ落ちた者もまた国家のために“能力に応じて”再教育しましょう(夜間中学で)」、という国家からの救済は恐ろしいほど、今の夜間中学を巡る状況を言い当てている。

 どうする?何ができます?自問している。


 
 
 

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