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夜間中学その日その日 (919)   砦通信編集委員会

  • journalistworld0
  • 2023年10月4日
  • 読了時間: 4分

  私設夜間中学(髙野雅夫夜間中学資料室だより➃)      2023.10.04

 永山則夫は1968年10月 ~ 11月にかけ、東京・京都・北海道・愛知の4都道府県で拳銃を用い、男性4人を相次いで射殺する連続殺人事件を起こした。翌1969年に逮捕、1990年に最高裁で死刑が確定。1997年8月1日に東京拘置所で死刑が執行された。




 髙野さんが大阪に入り、夜間中学開設運動に取りかかる、ちょうどその日(1968年10月11日)の未明、東京プリンスホテルで最初事件を起こした。髙野さんは午前7時45分のこだまで東京を発ち、大阪に向かっている。「わらじ通信」に事件の記述がでるのは、1ヶ月後の11月13日。次のように書いている。

 「東京-京都-函館-名古屋とピストルで4人を射殺した犯人は……京都の警備員が死ぬ前、『17~8歳の少年だ』といった。今頃どこで、どんな思いで生きているのだろうか?父母は?兄弟は?義務教育は?飢えに泣いているのではないか?もしかしたらこの大阪に―彼を“人殺し”に追いやったヤツラと―俺たちを夜間中学に追いやり、それさえ奪おうとするヤツラは同じヤツラだ。チキショ―今にみておれ!!」。


 『17~8歳の少年だ』との報道で「義務教育は保障されたのか?」と本質を射貫く考察を巡らされている。「オレが夜間中学に入っていなかったら、仲間たちと出逢っていなかったら、オレは100%“人殺し”という形で世の中に復讐していた」と話されていた。永山の姿と自分の姿を重ねたのかもしれない。

 あるとき、髙野さんに「連続射殺魔・永山則夫の私設『夜間中学』開設」(1972.11.30)とつながりができた経緯を質問した。すると永山則夫の裁判に関わっている弁護士からこの裁判を切り拓いていくには永山則夫の生い立ちと共通点の多い髙野さんの協力がほしいという話しがあって公判対策会に加わるようになった。加わるに当たって3つの原則を出した。①裁判が主でなく、「社会化」が主だ。②被害者や家族の立場にたつ。③第2の永山則夫を生み出さない。この原則が受け入れられないと参加はしないといい、永山則夫が獄中で奪い返した文字とコトバの「社会化」を実行した。

 東京拘置所で接見を行ない、獄中で奪い返した文字とコトバで綴った著書『無知の涙』を全国の夜間中学に送り届ける依頼が永山からあった。各夜間中学に数冊の書籍があるのはそんな経過で送られてきたものだ。


 夜間中学資料の中に私設「夜間中学」関係の資料が入っている。手紙、ビラ、裁判資料、出版書籍、録音テープ、16ミリフィルム等だ。永山則夫筆跡の資料も多い。酢酸のにおいのする16ミリフィルム缶があり、収められた映像を先日見せていただいた。カメラレポート「俺たちの私設夜間中学」(NHK)である事がわかった。NHKで検索すると1973.01.29(月)午前7:20~7:35放送でレポーターは佐藤忠男(映画評論家)さんである事がわかった。無声の映像なので、髙野さんの説明を受けた。

 東京地裁で35回の公判の日、傍聴に並んだ人たちに資料の冊子を髙野さんが配っている場面から始まって、髙野さんが着ているヤッケに書いた文字が大写しになる。「生きざまをさらせ劣等生。武器になる文字とコトバを 連続射殺魔 永山則夫の夜間中学」。足立区千住曙町の借家「私設夜間中学」が映しだされる。玄関先にはリヤカー、「私設夜間中学」「われら劣等生」ののぼり旗。黒地に白のペンキで描いた手製の看板が並ぶ。室内が映しだされ、行事予定がびっしり書き込まれた黒板。資料の印刷物がクリップで綴じた資料の束が柱にかけられている。あとから来た人たちがこの資料を読んで、私設夜間中学の活動に参加していくのに使われたのだろう。

 地方から東京に出てきた人たちが仕事を見つけ、都内の夜間中学に通学する。そのスタートをここからはじめる。大阪の夜間中学生も髙野に相談するため、ここに泊って、「私設夜間中学」の活動に参加し、大阪に帰っていくのにここを利用していた。

 映像は、佐藤忠男さんが髙野さんらにインタビューする場面が長くつづく。天王寺夜間中学の入学式、荒川九中の授業、塚原雄太さんへのインタビュー。訪ねてきた若者の相談に乗る髙野さんの姿が映しだされる。私設夜間中学の運営資金を捻出するため、「労働日」を設けていた。リヤカーを引いて段ボールを集めてまわり、労働現場へ日雇いで働くことも行ないながら私設夜間中学の活動を続けていた。


 夜間中学が何にこだわり、何を追求する存在か。この時期の髙野さんたちの追い求めていたことを、文の里・天王寺夜間中学を廃止する決定を進める大阪市教育委員会の政策決定者には届けることはできないのだろうか。


 
 
 

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