夜間中学その日その日 (942) 夜間中学資料情報室
- journalistworld0
- 2024年1月14日
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夜間中学報道 2023年 (上) 2024.01.14
2024年4月、9校の夜間中学が開校すると報道されている。福島市立第4中学校の分校として天神スクール、群馬県立県立みらい共創中学校、大阪府泉佐野市立佐野中学校夜間学級、鳥取県立まなびの森学園、北九州市立ひまわり中学校、大牟田市立宅峰中学ほしぞら分校、佐賀県立彩志学舎中学校、熊本県立県立ゆうあい中学校、宮崎市立ひなた中学校の9校だ。夜間中学現場で入学生の実態に向き合い、柔軟な学びの場が生まれていくことを期待したい。教育行政が机上の「かくあるべき」を現場に押しつけることはあってはならない。現場の創造力に期待してほしい。
夜間中学のマスコミ報道、特に新聞報道の記事の内容を中心に分析を加え、報告を行ってきた。2023年の全体傾向を改めて把握するため、月報の前文を4回に分けて再録する。

2023年1月
夜間中学資料情報室で確認できた1月の新聞報道は51である。夜間中学の開設にむけた報道12(群馬・静岡・愛知・石川・滋賀・姫路市・沖縄)。自主夜間中学4(栃木・船橋・高山・山城)。夜間中学の設置を促すため、文科省が1月、自治体向けの手引きを改訂した。2022年5月1付の調査結果も1/23公表した。この関連報道が4。
1/17、「認定特定非営利活動法人カタリバが取り組む不登校支援事業が、文部科学省が行う『夜間中学の設置促進・充実事業』に採択され、不登校生徒の支援に夜間中学を活用する実証事業を開始しましたのでお知らせします」とする情報提供を報道機関に行い、マスコミが取り上げることを促す手法が現れた。それを受けた報道も4件あった。学齢不登校の子どもの夜間中学の学びについても、4件の報道があった。
産経新聞大阪本社夜間中学取材班は2019年3月16日から精力的に夜間中学現場や夜間中学生の取材を行った、大型連載は丸4年を迎える。取材班の伐栗社会部編集委員の解説記事「多様化するニーズにどうこたえるか」(2023.01.11)は取材に基づく貴重な提言の記事だ。
夜間中学の新たな潮流として中学を形式的に卒業した人たちが1740人中422人、ほぼ4人に1の割合である。ヤングケアラーの夜間中学生との出会いで、「長い間停まっていた学びの時計の針を懸命に進めようとする彼らの姿を見ていると、教育関係者には夜間中学を開設することで満足することなく、夜間中学を必要とする人たちを生み出さないようにしてほしいと切に願う」。さらに、「一つの器では限界」として「人員体制や教材などさまざまな課題が山積している」との指摘がある。
国や文科省は何もかも、夜間中学現場に押しつけて、夜間中学は怒らんといかん。それができる教育条件を国は用意せよ!という怒りの声と運動が重要ではないか。夜間中学現場は実践に基づく課題を例えば、「夜間中学白書」で明らかにし、課題解決の手立てを教育行政に求める、夜間中学生と連帯したとりくみが求められていると考える。
2023年2月
夜間中学資料情報室で確認できた2月の新聞報道は59である。夜間中学の開設にむけた報道17(福島市・千葉市・石川・静岡・愛知・鳥取・北九州市・佐賀・宮崎)。
1948年、15~64歳の17000人を対象に実施した「日本人の読み書き調査」がある。国立国語研究所が夜間中学生らを対象に2022年より識字調査を始めた報道を共同通信が配信した。地方紙だけでなく、全国紙も記事を掲載した。「識字率、現代の実態は? 1948年以来の全国調査めざす 国語研 義務教育未修了者89万人、学び直し促進へ」と国勢調査、夜間中学、形式卒業者と関係づけた報道記事が掲載された。
「インフォグラフィック夜間中学」(2月5日 毎日新聞)紙面の3/4を使った記事が掲載された。インフォグラフィックとは、情報、データーを視覚的に表現する手法だそうだ。「夜間中学に通う人・通いたい人に読んでいただきたいため、記事中の漢字にルビをふりました」と「おことわり」が書いてある。
「えんぴつポスター」に書いた、夜間中学生直筆の言葉12枚が収録されている。「生きる・闘う・学ぶ」のどれを訴えているかを見ると「生と学」で「闘」は見つけられなかった。「夜間中学にかよって、しらないことをわかって」つぎは「もっとわかりたいです」であった。
「日本の夜間中学生の皆さんは獲得した文字とコトバでどんな社会的活動をされていますか?」、夜間中学生が2002年、韓国京畿道の安養市民大学を訪問したとき、韓国の学習者からあった問いかけだ。夜間中学生は「夜間中学生募集活動を行い、夜間中学開設運動に取り組んでいます」と応じた。韓国の学習者はリサイクル運動や炊き出し活動、そして卒業して、引き続き、読み書きのできない学習者に今度は「先生」として参加していると報告した。
「インフォグラフィック夜間中学」は夜間だから、濃紺に文字を白で印刷していただいたと考えるが、高齢で視力のよくない夜間中学生には読みづらい紙面になったのは残念だ。
2023年2月の夜間中学テレビ報道は14,1月は9番組あった。
2023年3月
夜間中学資料情報室で確認できた3月の新聞報道は64である。夜間中学の開設にむけた報道17(群馬・静岡・愛知・名古屋・石川・姫路・鳥取・岡山・佐賀・熊本)。愛知県は県立の定時制高校4校に夜間中学を併設する計画を発表した。25/4に1校、26/4に3校開校する。
自主夜間中学(旭川・京都・宇部・静岡・岡山)。島根で夜間中学の胎動を伝える報道があった。
識字調査を社説や解説記事で扱い、夜間中学と関連させて6件報道があった。
夜間中学生の卒業を伝える報道(水海道・高瀬・丸山・名古屋)では学齢の夜間中学生の卒業を各社扱った。
産経新聞大阪社会部「夜間中学取材班」の『夜間中学はいま』ルビ入りの連載(2019.3.16)「学び舎の風景」は2023.3.27最終回となった。3/27の記事は「夜を照らす笑顔と情熱 明日も」の見出し、小見出しは「学ぶ喜び ここにあり」と23枚の写真で埋め尽くされた、見開き2面通しの記事であった。この連載記事を握って入学申し込みに訪れた夜間中学生があったことも頷ける。取材班と夜間中学生が生みだしたこの連載を明日の夜間中学に生かすため、議論が深まっていくことを夜間中学現場にお願いしたい。
2023年3月のテレビ報道では19番組、内訳は名古屋、珊瑚舎、高瀬夜間中学、岡山自主夜間、岡山市、熊本県、愛知県、本宮自主夜間であった。
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