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夜間中学その日その日 (972)  白井善吾

  髙野雅夫夜間中学資料の魅力 ⑥ 長征(3)   2024.6.2


 「チャリ」を配りながらオキナワをめざす髙野さんの「長征」は1975年6月11日、大阪に入った。朝日新聞出版局編集部の千本健一郎記者と内田洋司カメラマンから同行したいとの連絡があった。

 11日間同行取材をした千本記者は髙野さんがある夜間中学を訪れた件をこのように記している。


 くだんのクルマが中学校によこづけになる。降立ったひげ面に半ズボンの男が子どもと一緒にスタスタ職員室に入っていく。たいていの先生がキョトンとしたりウサンくさそうにして一行を見つめる。「東京の夜間中学卒業生で髙野といいますが、ぼくらの運動の記録とアンケートの返事をまとめた中間報告が出来上がったのでお届けに上がりました」。物静かな口上である


 先ず天王寺夜間中学を訪問、生徒会に2冊、学校に1冊、夜間中学育てる会に1冊を届けた。そのあと文の里夜間中学に向かった。



 突然来校した髙野さんを各夜間中学はどのように受けとめたのだろう。

文の里夜間中学では「在日朝鮮人のお母さんが多数いる文の里夜間学級は自らの手でチョゴリの像を校庭に建てたばかりなのだ。どんな想いでどんな涙で怨みであの像を創ったのか確かめてみたい」と「オモニの像」について書いている。生徒会主催で話し合いたいとの申し出を受け、6月14日(土曜)3,4時間に行なうことになった。


 6月12日、守口夜間中学を訪れた髙野さんは次のように書いている。

「新校舎になって初めての訪問。毎日新聞記事(*)を読み話合いをした由。給食時間後ひとこと喋れと云われ『俺たちにとってなぜ夜間中学が文字とコトバが必要なのか』生きることは勉強であり、勉強は生きることだ。なぜ貧乏人と金持ちがいて、先生は大学を出て、夜間中学生は掛算の九九も出来ないのか。俺は17歳まで自分の名前も書けなかった。知識としては分数も出来ない。しかし武器としての文字とコトバは絶対に負けない。何をすべきか今はっきり分かってきたから最高に楽しい。今こそ青春真中なのだ」。 


 文の里夜間中学生徒会主催の話合いに参加した髙野さんは次のように書いている。

「本音出して生きること、漢字にルビをうつこと、先生の親切だろうが夜間中学生をバカにしている。こういう親切が夜間中学生の自立を奪っていく逆差別だと思う。『高』ではない『髙』だ」これを受け、司会は『ひらがなをふったほうが良いか、ふらない方が良いか。是非本音で話して欲しいと』」話合いを進めている。


 なかなか頷いていただけないのだが、夜間中学では昼の学校と比べ、学校現場に柔らかさが残っている。突然来校した髙野さんを夜間中学や夜間中学生は受けとめるか。学校現場はその日の予定はあるはず。しかし、次の日に回しても出来ることなら、その日しか出来ないことを優先する。常勤の教員だけでなく、その曜日に授業をお願いしている常勤でない教員も多い。その日の授業の準備をして来られている。一方、夜間中学現場にとって、突然来校した髙野さんを夜間中学生に出逢ってもらっておくことはたいへん重要なことと考える。また常勤でない先生たちに夜間中学のあゆみを知っていただける重要な機会となる。守口夜間中学は、給食の時間に出会う機会を設けた。文の里夜間中学は、髙野さんの予定を聞いて、別の日に生徒会主催で話合いの時間設定をされた。髙野さんは事前にアポイントメントをとって来校することはまずない。「東京の夜間中学卒業生・髙野雅夫です」と職員室に来室。職員打ち合わせの場合、そのまま打ち合わせ内容を聞いてもらうことも行なった。担当者だけで応接することは避け、職員室で応接し、その様子と話題を全員が聞く事ができるようにすることが重要だと考えた。

 髙野さんにもその日の授業に参加してもらい、夜間中学生の考えを聞いてもらう機会を作ることも行なった。夜間中学生の先輩と後輩、距離を縮めることに努めた。髙野雅夫夜間中学資料室の資料には各夜間中学が発行した文集や、授業プリントが多くあるのは、来校時に渡された資料を保存されたからだ。

(*)「夜間中学の灯を消すな 苦闘10年の軌跡と総括」毎日新聞1975.6.6

 

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