top of page

夜間中学その日その日(738)         白井善吾

水平社博物館「夜間中学生展」             2021.01.20

 昨年12月4日から始まった、水平社博物館の夜間中学生展。12月19日、夜間中学卒業者の会が見学のあと現地で学習会を行なった。それから1ヶ月後の訪問となった。この日、学習会に参加できなかった、髙野雅夫さんの訪問が実現した。

 まもなく始まる会議の前にもかかわらず、駒井館長の出迎えを受けた。挨拶もそこそこに、私たちは2階の展示会場に向かった。腰痛が出ている髙野さんは、用心をして、特別展示室の参観から始めた。申し訳ないとつぶやきながら、足早に一番奥の特別展示室向かっていった。

 展示室で一瞬立ち止まり、真っ先に向かったのは、全国行脚に旅立つ写真が飾られたブーツであった。斜面台には「夜間中学生」16ミリフィルムのはいったフィルム箱、それを入れる手製の布袋、筆記用具、細かい文字で埋め尽くされた官製葉書の“わらじ通信”、背負子。壁面には「つくれ 夜間中学 廃止反対 電国21校」と書いた愛用のジャンバ-、その下には行脚に出発する後ろ姿を写した橋本要さんの写真が展示してある。多くの説明は要らない。一目瞭然である。



 写真の右には横断幕をはさんでもう一枚写真が展示してある。日教組全国教研(岐阜)で小雪舞う中、同じジャンバ-を着て歩く髙野さんの写真だ。どちらも、リバティー大阪では展示ができなかった写真だ。

 「反戦/けんぽうまもれ/すべての人達に完全な義務教育を/大阪市内に“夜間中学”を設置せよ・・」マジックで大きく書いた横断幕の布はお子さんのシーツーを利用したものだ。「これか展示されている」と独り言を言った。何度も眺めたあと、髙野さんは、展示を丁寧に見ていった。

 髙野さんが書き、謄写版で印刷をした水平社宣言の展示の斜面台もすばらしかった。岡山で水平社宣言に出逢った感動が伝わってくる展示だ。卒業記念品の国語辞書の奥書に自筆で「同情を憎み 矛盾に怒れ! 1964.3.18 荒川九中二部 卒業式の日に タカノ」と書いた。この部分が開かれて展示されている。書いたときはその意味がわからなかったが、水平社宣言を読んだとき、「肌身離さずこだわり続けた正体がこれだと思い知らされた」と後に著書に書いているが、よく分かる展示だ。

 夜間中学生が書いた直筆の文字が多く展示されていた。髙野さんと同じ7期生の多胡正光が書いた「夜間中学はなんであるか/どうやってつくったか/げんいんは/だれがつくったか/ぼくは知りたい」は『チャリップ』に掲載するために多胡さんが書いた直筆だ。江草恵子「私の手」、髙野雅夫「24才の中学生」、古部美江子「夜間中学大会体験論」、須堯信行「怒り」、そして春日、天理、畝傍の夜間中学生、吉野、西和、宇陀の自主夜間中学生が夜間中学の開設を願求禮讃し、夜間中学が存在しなければならない、この社会を厳しく追及する大きな声が会場で響きあう展示であった。

NHK「こんにちは奥さん」の放送台本と福田雅子さんが書いた番組企画書も目を通した。開校後40日後に実現した番組だ。7人の夜間中学生と髙野さんが鈴木健二アナの向けるインタビュ―マイクを釘付けにした場面が鮮やかに蘇ってきた。

 腰痛が限界に来た髙野さんは、展示室をでた。事務室で館長さんや学芸員さんに感想を報告したあと水平社博物館をあとにした。髙野さんは「気になっていた夜間中学生展を見ることができた」独り言を言った。




 博物館に向かうとき、畝傍山の東麓には「水平社博物館」という道路標識が何本か目についた。復路で通った東麓は、うっそうと茂る森になっていた。特別展を終えると11月から水平社博物館はリニュ―アル工事がはじまる。来年2022年、全国水平社創立100周年を迎える。水平社宣言が発せられて100年だ。

Featued Posts 
Recent Posts 
Find Me On
  • Facebook Long Shadow
  • Twitter Long Shadow
  • YouTube Long Shadow
  • Instagram Long Shadow
Other Favotite PR Blogs
Serach By Tags
まだタグはありません。
bottom of page