夜間中学その日その日（927） 砦通信編集委員会

　　文の里・天王寺夜間中学の存続を求めて　（3）　　　　　　　2023.11.18

　大阪市議会「教育こども委員会」(2023.9.22)で4件の陳情書に対する、教育委員会の見解表明で、多田教育長は「2校は小規模校になった。日本語指導必要な人が増えた。その指導体制充実が必要。校舎の老朽化が進んでいる。夜間中学は教科の学習をする学校教育だ。会議を重ねてきた。十分審議は尽くされている」と云った。

　教育委員会事務局に全国から寄せられた存続の署名を届け、夜間中学担当者との話合い、共同記者会見、市長・市議立候補者に公開質問状を届ける、大阪市議会に陳情書を出す等、近畿夜間中学校生徒会連合会を中心に文の里・天王寺夜間中学の存続を求めるとりくみを続けている。教育長のいう、「十分審議は尽くされている」どころか、質問に納得できる回答は何一ついただいていない。ますます、疑問が深まっている。

　担当者は文の里・天王寺の在校生に聞き取りを行ない、2024年3月末で廃校になることを「検討している」。「途中で転校になる」ことも、日本語の理解の十分でない入学希望者に口頭で説明しながら、教育委員会会議では教育委員から説明が十分にされているかと念押しされたことに対し、在校生は「（統合移転を）理解してもらっている」と説明している。

　2022年12月7日の「教育こども委員会」で「11月よりOsaka Metroの5つの駅の構内ポスターの掲示を行なっております」と答弁した。委員からさらに拡充をといわれたにもかかわらず、2023年9月22日の「教育こども委員会」でも同じ答弁を繰り返している。Osaka Metroの駅は約150を数えるが3.3％のタッタ5駅の掲示で広報にとりくんでいると本当に思っているのだろうか。2023年10月31日、夜間中学等義務教育拡充議員連盟から大阪市長は「夜間中学に関する広報を強化」を提言されている。

　近畿夜間中学校連絡協議会（近夜中協）が夜間中学生に「夜間中学入学に直接的につながった､情報」について聞き取り調査（2018.6）を行なっている。322の回答の内、「人からの紹介」224（70％）、「ビラ・ポスター」25（7.8％）、「広報」24（7.5％）、「夜間中学等の行事」11（3.4％）、「ホームページ」8（2.5％）、「テレビ・ラジオ・映画」「新聞・書籍」各7（2.2％）、「その他」16（５％）。

　圧倒的に多い「紹介」も紹介者が夜間中学で学べることを得ることができた情報源を考えると「ビラ・ポスター・広報」は重要である。

　大阪市立の夜間中学の校区は大阪市内だけではない。府内全域が校区である。しかし､大阪市教育委員会は大阪市内4校に通学している、夜間中学生のことしか頭の中にないのかという疑問を9月の陳情書でも記述した。

　近夜中協の9月10日統計を見ると､大阪市内在住の夜間中学生は347名。うち、133名（38.3％）は市外の夜間中学に通学している。逆に府下在住の夜間中学生は487名。うち市内の夜間中学に17名（3.5％）と極端なアンバランス状態である。私たちは市内の夜間中学で入学を断っていることが背景にあると考えている。夜間中学生に一旦流布している「あの学校に行っても入学を断られる」を払拭するのは大変な努力がいる。生徒数が増えない原因のひとつだと私たちは考えている。長い逡巡の末、訪れた夜間中学で「ここでは入学できません、他の夜間中学に行ってください」と告げられた入学希望者に想いをしたことがあるのだろうか。

　文の里夜間中学は26名在籍、本年度13名が入学､3学級。天王寺夜間中学は在籍45名、20名が入学、2学級（昨年度より1学級減）。

　天王寺は市内14区・府内2市から通学している。文の里市内11区・府内0。府下の守口夜間中学は市内11区・府内11市、豊中夜間中学は市内６区・府内６市などである。大阪市内の夜間中学の廃校は大阪市だけでおさまる問題ではない。

　2020国勢調査結果から、大阪市内で夜間中学の更なる開設の必要性が再認識されている。例えば淀川右岸の3区（西淀川・淀川・東淀川区）の義務教育未修了の方は2237人。3区在住の夜間中学生は58名を数える。

　夜間中学の在籍年数は最長9年とする確認を大阪府・大阪市など夜間中学設置行政と夜間中学関係者らとの間で行なっている（94・2・22合意）。2024年度末で閉校するとする､第9回大阪市教育委員会議の決定は重大な約束違反だと云わざるを得ない。

　教育委員会事務局に質問を行なってきているが明確な回答は未だ示されていない。