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夜間中学その日その日 (471)  Journalist Worldジャーナリスト ワールドアリ通信編集委員会

  • アリ通信編集委員会
  • 2016年11月11日
  • 読了時間: 3分

証言映画「夜間中学生」

髙野雅夫さんたちが、証言映画「夜間中学生」を思い立った経緯について書いておく。行政管理庁が「夜間中学早期廃止勧告」をだし一ヶ月もたたない1966年年末、髙野雅夫は荒川九中の恩師塚原雄太を東京・池袋の本屋の地下喫茶店に呼び出した。

「先生、先生は行政管理庁の勧告をどう思いますか」

髙野雅夫は、ていねいに、しかし、重い語調で私にこう聞いた。

髙野雅夫には、決意がある、と私は思う。目がぎらっとしたからだ。

「君の方は?」

「あります。協力していただけますか」

「どんな協力?」

「キャメラを回してもらいたいんです」

「映画をつくるのか」

「ええ」

「夜間中学生の現実を、ぶつけてやりたいんです」

彼はこの映画を証言映画にしたいという。

夜間中学校の必要性を証言したいという。キャメラは借りる。フィルムは一本ずつ買えばいい。撮影時間は1967年1月から3ヶ月。出演者は母校の全員。費用は髙野君がなんとか出来る、という。

(塚原雄太著『夜間中学生』新報新書229頁)

 塚原雄太さんと話すときには、髙野雅夫さんの腹は決まっていたことになる。

 髙野雅夫著『夜間中学生タカノマサオ』解放出版社96頁にこの場面の記述がある。

 「先生、行政管理庁の廃止勧告をどう思いますか?」

「どうって、俺たち公務員だからな」

「今まで夜間中学が廃止されたとき、反対運動をしたところはありますか?」

「ないだろ」

「じゃ、今度も他所はやらないよね」

「まずやらないだろう」、しばらく二人とも沈黙した。

「先生、カメラを回してください。俺が声とるから」

「映画を作るのか?」

「夜間中学生の叫びをぶっつけてやりたいんです」

東京池袋駅東口の本屋さんの地下にある喫茶店を出て塚原先生と別れた俺は、早速、かつて取材にきたTBSの人にカメラを、ニッポン放送の人にデンスケ(録音機)を借り、翌67年1月8日の3学期から、怒りを込めて撮影を開始した。

映画づくりの構想が以前から、髙野さんの頭にあったにしても、年末にこのように映画作りの構想を打ち明け、年明けの新学期から撮影に取りかかる。ここのところに私は注目する。

映画に登場するのは、夜間中学生の日常であり、印刷工、米屋の手伝い、食堂の出前、プレス工、製本屋、メッキ工など職場にカメラが入る。夜間中学生の日常を通して夜間中学廃止勧告をだす行政管理庁の不当性をあぶり出す証言映画である。

髙野、塚原さんの頭の中には、この構想を受け入れてくれる、夜間中学生や、教員があったと思う。日常的な夜間中学の学びの中で、“夜間中学運動に直結する”学びが実践されていたからと考える。

私たちも体験がある。2008年、橋下知事(当時)が夜間中学の就学援助補食給食の大阪府補助を打ち切る方針を打ち出したとき、夜間中学生は立ち上がった。大阪のメインストリート御堂筋の淀屋橋に立ち、道行く人に夜間中学生の主張を訴えた。この行動に、参加することを躊躇する夜間中学生もあった。日常の夜間中学の学びを通して橋下知事の考えがいかに不当で道理に通らないかを確認をした夜間中学生は近畿夜間中学校生徒会連合会が提起するこの行動に参加した。

荒川九中の夜間中学生は行政管理庁の廃止勧告に、満身の怒りを込め、夜間中学生の日常をカメラの前に立ち、不当で道理に通らないことを主張した。

髙野、塚原さんの想いに応えた、荒川九中夜間中学生の立ち上がりが大阪に夜間中学が開設される力となったことは間違いない。

31校の公立夜間中学生の立ち上がりが学習者が求める夜間中学開設につながる。次は私たちの番手だ。

【写真説明】東京荒川区立荒川九中夜間中学の職員室、入口に掲げられている張り紙 証言映画「夜間中学生」より

「“行政管理庁:夜間中学早期廃止勧告”50年を迎えた今、私たちは」 の学習会が多くの協力を得て実施される。2016年11月26日、会場は大阪市立文の里中学校。午後6時開会。第68回全国人権・同和教育研究大会1日目終了後、同じ会場。(参加無料)証言映画「夜間中学生」上映。証言映画制作を決意した 髙野雅夫さんに聞くプログラムだ。

 
 
 
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