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夜間中学その日その日 (477) Journalist Worldジャーナリスト ワールド

  • アリ通信編集委員会
  • 2017年1月3日
  • 読了時間: 6分

「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」の成立に対する私たちの考え   2016.12.07

夜間中学資料情報室

          共同代表 西尾禎章  白井善吾  林 二郎

今日、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が国会で可決、成立した。

夜間中学校を学校教育法に位置づけ、立法化することは夜間中学生、卒業生、夜間中学関係者の願いであった。憲法で保障された義務教育を受ける権利を万人が享受する社会の実現と学習権の保障の場としての学校教育法に位置づけられた夜間中学校の確立である。

国の責任によって義務教育が保障されなかった人が存在し、国はそうした実態を認め、国の義務として、それらの人びとの学習権にたいし義務教育を保障する学校を教育制度として法制化し位置づけなければならないのである。

それにたいし国は、国の責任によって義務教育を保障されなかった人は存在しない。中学校を卒業できなかった人は、その人や保護者に起因しているのである。学習の場は社会教育で用意されるものであって、学校教育の場ではないと、わたしたちの要求を排除してきた。その排除の典型が、今から50年前に同じ国の機関である行政管理庁から出された「夜間中学廃止勧告」であった。

今回、法が制定されるにあたって、現在の夜間学級の存在の根拠である「学校教育法施行令25条の第四項、『分校設置』と第五項、『二部授業』を行うときは都道府県に届け出る」とする法的位置づけは何ら変わっていない。教育制度として夜間中学校が認められ位置づけられたわけではないのである。学齢の生徒が学ぶ学級の授業時間帯を二部に分けられるというだけのものであって、そこでは学齢超過者を想定しているわけでもなければ、通常の時間帯に行っている授業内容(カリキュラム)の変更を想定しているわけでもない。

「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」によると、条文には「夜間その他特別な時間において授業を行なう学校における就学の機会の提供等」とある。つまり夜間中学校は、夜間に授業を行なっている学校で学習の機会を与えるという「学級」でしかないことを明示している。カリキュラムなどの中身はあくまでも「学級」が所属する学校の下でしかない。「学級」である以上独自の編成はできないのである。

そしてこの法が、わたしたちが求めてきたものとはもっとも非なるものの部分が、「学校における就学の機会が提供されなかったもののうちにその機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ、夜間その他特別な時間において授業を行なう学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする」(第十四条)に見て取れる。

まず一点目、「就学の機会が提供されなかった」責任がだれにあるのかを明確にしていない。それは、就学の機会の提供を希望している本人(またはその保護者)とも受け取れる。ここの見方はこの法案でもっとも重要な点であり、核と言ってもいい。この点については、この法の対象とされているフリースクールや不登校生の側からは厳しく指摘され、法案への反対にまでなっている。国会審議で参考人として意見を述べた桜井智恵子さんは、「本法案の問題の一つは、法案の作り方だと思われます。基本理念では、不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援とされ、学校の機能不全を子どもの支援ですり替えようとしています。フリースクールを多様な学習活動の場と認めるとしながら、子どもを排除している環境の整備、学校それ自体を多種多様な子どもが暮らす場として改善する視点がありません(以下略)」と、法案に反対している。

夜間中学生も同じ立場である。責任の所在があいまいにされているから、夜間中学校の法的地位もまたあいまいにされているのだといえよう。

二点目は、「提供を希望する者」にたいし、一部の学校で夜間に授業できるようにし、字が読めない人や日本語ができない人に学べるようにしてやろうという恩恵の姿勢である。この法の理念は、一貫して国が義務を負っているという立場に立っていない。「学校へ行けない」「字の読み書きや日本語ができない」などで困っている人に本来の学習の場をそれらの人たちのものとして改善するのではなしに別の形で国が恩恵として学習の場を提供するということで 成り立っている。

「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立しても、法制度上の夜間中学校の位置づけも、夜間中学校にたいする国の姿勢も、なんら変わっていないのである。つまり、国の責任によって義務教育を保障されなかった人の学習権を国の義務として保障する学校を整備しなければならないという長年のわたしたちの要求に応えていないのである。

国の義務教育保障が履行できていない責任を問うことによって、国に「学校」で奪われた義務教育は「学校」で保障する義務を実行させることが夜間中学校の存在意義である。しかし「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」がつくりだす夜間中学校は、国の義務教育保障の責任は問われることなく、実態としては新渡日の外国人生徒にたいする日本語学習にみられるような社会教育まがいの学習を学校という場で行うということになっていくことは明らかである。学校教育の場ではない、単に学校という場を提供したというだけのことにしかすぎず、自治体が一部の学校で夜間等の時間帯に学習の場を提供することを国が援助するというのが法の主旨である。

文科省事務次官などが、学齢の不登校生を夜間中学が積極的に受け入れることを公言しているが、このことは当事者やその保護者、夜間中学、昼の学校にとって看過できない問題をはらんでいることにも触れておきたい。

そもそも夜間中学が主張してきた「夜間中学生の実態から教育の在り方を問いかえし、義務教育未修了者の学ぶ権利を保障する実践」は、すべての子どもの学ぶ権利を保障し、インクルーシブな学校・社会づくりにつながるものである。それだけに、不登校生を昼の学校から排除し、夜間中学に短絡させるのはゆるせない。学齢の不登校生の夜間中学での受け入れを無批判にすすめていくことは、今日までの学校教育体制にたいする真摯な反省と改革をサボタージュしたまま、不登校の原因を子ども自身や家庭の側にあるとし、不登校生をみんなが学ぶ昼の学校から分離・排除して見えない存在にしてしまい、ひいてはともに学ぶ権利を損なうものである。つまりは不登校生本人はもとより、その保護者や昼の当該学校にたいする深刻な教育侵害を夜間中学が行うことになるのだという自覚をもたなければならない。

私たちは今日まで夜間中学生の生命線を脅かすこれら問題点を指摘し、とりくみを行ってきた。それらは付帯決議の中に一部反映されているが、基本指針の策定や3年後の見直しにむけ、引き続き活動を続けていく。

また、2016年「行政管理庁による夜間中学の廃止勧告50年」、2017年「映画『夜間中学生』作成・夜間中学開設を訴える全国行脚50年」、2018年「夜間中学増設運動・大阪挑戦50年」、そして2019年「天王寺夜間中学開設50年」のとりくみを進めながら、学習者が大切にされる夜間中学校の開設を全力で求めていくものである。

 
 
 
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