夜間中学その日その日(482) Journalist World ジャーナリスト・ワールド
- 白井 善吾
- 2017年2月15日
- 読了時間: 3分
「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学」について
57回全国夜間中学校研究大会(2011.12.02~03)第5分科会で形式卒業者の夜間中学入学について議論になった。「中学校でもう一度学びたいと訪れた人たちを断っているが、心が痛い。夜間中学校でもう一度やり直すチャンスが与えられないか?」という夜間中学教員からの発言がきっかけだった。
分科会の司会をしていた私は、形式卒業者の入学について研究大会の議論を紹介して「18回大会で当時の夜間中学生が、入学を認めるように出席していた文部省担当者に見解を求め、本当に学びたいという人に対しては、入学ができると文部省担当者が回答し、決着している」「これを後退させたのは、地方教育行政と、その意向に屈した現場だ」と説明した。別の参加者から「(18回大会の文部省見解)それは死語だ。有名無実になっている」と発言があった。
実質的に学ぶことができなかった人たちの夜間中学入学について、文部省は明確な見解を出すよう、永年、夜間中学校研究会(全夜中研)は求めてきた。
最近でも「形式という解釈がなかなか難しいところでございますが、制度上すでに中学校を卒業いただいている方につきましては、再び中学校入学という形はとることができません」(2005.12.09文科省 常磐木室長補佐)。文科省の方もこのように回答、再び入学を認めない見解に戻ってしまっていた。
2011年頃から、それまでとは異なる言い回しで回答するようになってきていた。2015年7月30日、文科省は、「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について(通知)」を出した。次のように記している。
「従来文部科学省では,義務教育諸学校に就学すべき年齢を超えた者の中学校への受入れについては,ホームページ等において『中学校を卒業していない場合は就学を許可して差し支えない』との考え方を示してきましたが,一度中学校を卒業した者が再入学を希望した場合の考え方については明確に示していなかったところです(中略)入学希望既卒者については,義務教育を受ける機会を実質的に確保する観点から,一定の要件の下,夜間中学での受入れを可能とすることが適当であると考えられます」
それまで「再入学はできない」と言い続けてきた文科省。今度は「再入学を希望した場合の考え方については明確に示していなかった」。なんという言い回しか。入学を断られ、つらい人生を送ってきている人たちのことを考えたことがあるのだろうか?文科省はこんな言い回しが常識なんだろうか?
第62回全夜中研大会(2016年12月1日)に出席した前川喜平文部科学省事務次官(当時)は次のように語っている。
「これまで夜間中学校からも除外されてしまっていた不登校の方々の形式卒業者ですね、形式的には卒業証書をもらっているけれども実質的には学んでいなかったという方々、こういった方々の学びの機会をきちんとつくっていかなきゃいけないと思いますし、どこの法律にも、中学校を卒業していたら、中学校へ入って学んじゃいけないとは書いてないです」「本当に学んでいない人が学びたいというんであれば、それは受け入れるべきであって、受け入れないほうがおかしいと私は思いますので、まっとうな考え方がちゃんと通用するような世の中にしていきたいと思っている次第でございます」
「過ちては改むるに憚ること勿れ」とはいうが、第18回全夜中研大会(2017.11.26~27)で文部省中島章夫課長補佐に2年越しで形式卒業者の夜間中学入学を認める見解を質した、夜間中学生たちがこの話を聞けば、どんなコトバが出てくるであろうか?

これから開設される夜間中学の学びの創造に参画する関係者は、この夜間中学のあゆみときっちり押さえ、担っていっていただきたい。