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映画『兵隊やくざ』と従軍慰安所 Journalist World ジャーナリスト・ワールド

  • 北口学
  • 2017年10月3日
  • 読了時間: 3分

『兵隊やくざ』と慰安所

 今月は『座頭市』『兵隊やくざ』両シリーズを12本見ました。『座頭市』シリーズの次に制作された『兵隊やくざ』は1965年からシリーズ9作。両シリーズとも反権力・反権威と共に、映像が記録する時代と時代の空気を色濃く活写している作品群だと思えます。敗戦25年目に封切られた『兵隊やくざ』には実際に戦場で兵士として理不尽で過酷な日々を体験された元日本軍兵士の観客がたくさんスクリーンの前に押しかけたと言えます。非道で冷酷な上官に理不尽な仕打ちを経験した人々が溜飲を下げたでしょうし、製作者側にも戦地の経験者が多数参加されていたでしょう。ですから娯楽作品ではありましょうが、軍隊という非人間的な(特に日本の軍隊はひどい)世界を非常にリアリティある作品に仕上げる努力に心血を注いだことが容易に想定できます。  『兵隊やくざ』シリーズには毎回「慰安所」と女性たちが登場します。これは非常にリアルに映像化されているのだろうと考えます。いくら日本政府が「軍や政府の関与はなかった」と言い逃れしようと、実際は各地の慰安所は日本軍将校や司令官にコントロールされていた状況が随所に描かれています。士官用、兵士用と別れていたり酒や士官の宴会に駆り出される女性たち。

 勝新太郎と田村高廣は反管理と反権威・反権力のヒーロー。そして登場するほとんどの女性たちは慰安所の女性で、彼女たちには優しい(実際の慰安所はもっと女性にとっては悲劇と残酷な強制収容施設であった事は当然ですが)破天荒なヒーローとして描かれています。戦地経験者の願望と女性たちに対する観客の罪の意識の軽減か。  とにかく、『野火』『土と兵隊』などとともに、非人間的な戦場の兵士と慰安所のリアルな一面をスクリーンいっぱいに活写している貴重な作品群。それに比して『203高地』『永遠のゼロ』『八甲田山』『男たちの大和』などの映画のいかに醜悪な内容か!(基本、東映などは阪急グループの一員で体制翼賛小林一三や宝塚歌劇など極右なんですけどね。『座頭市』『兵隊やくざ』は倒産した大映の作品群です)。  このような戦争を描く映画群の劣化・腐敗・体制化・右傾化を痛感させてくれる『兵隊やくざ』シリーズ。時代の限界でフェミニズムや非暴力、反社会的団体構成員etcの諸問題もあるにせよ貴重な映像群、日本映画史に残る作品群だと改めて思いました。

1. 『兵隊やくざ』 : 監督増村保造、1965年 2. 『続・兵隊やくざ』 : 監督田中徳三、1965年 3. 『新・兵隊やくざ 』 : 監督田中徳三、1966年 4. 『兵隊やくざ 脱獄』 : 監督森一生、1966年 5. 『兵隊やくざ 大脱走』 : 監督田中徳三、1966年 6. 『兵隊やくざ 俺にまかせろ』 : 監督田中徳三、1967年 7. 『兵隊やくざ 殴り込み』 : 監督田中徳三、1967年 8. 『兵隊やくざ 強奪』 : 監督田中徳三、1968年 9. 『新兵隊やくざ 火線』 : 監督増村保造、1972年 - 本作のみカラー作品、大映倒産後に制作され、勝プロ製作・東宝配給

 
 
 

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