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夜間中学その日その日 (567)

  • 夜間中学資料情報室 白井善吾
  • 2018年6月24日
  • 読了時間: 11分

調査研究報告を読む

文部科学省が2017年度の予算で募集した「中学校夜間学級の設置促進事業」(調査研究)に各自治体が申請、2017年度にそれを受け、とりくみをおこない、2018年3月時点で報告をした内容が文科省のホームページ

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/yakan/1405707.htm

で公開されている。それを批判的に読んだものだ。下線部は特に強調したい部分である。夜間中学開設に向けた、8市県のとりくみ状況概要(2018.3時点)を知ることができる。

 2-1 宮城県 (~ 2018年3月14日)

・本県においては、義務教育未修了者への学習機会の提供や、外国籍の者に対する日本語学習を中心とした義務教育段階の学習機会の提供など、幅広いニーズへの対応も必要であると考える。

・宮城県教育委員会(以下「県教委」という。)では、昨年度から文部科学省からの事業委託を受け、仙台市教育委員会と共同で調査研究会を設置し、夜間中学設置に向けた調査研究に総合的に取り組んできた。

・2017年度の共同調査研究会での審議結果では、本県においても夜間中学の設置の必要性があるものとの結論に至った。

・課題を整理し、夜間中学の設置に向けた準備を円滑に進めていくため、2017年度も継続して調査研究に取り組むこととした。

・先進校視察 広島市教育委員会・広島市立二葉中学校・奈良市教育委員会・奈良市立春日中学校・世田谷区立三宿中学校・京都市立洛友中学校

・最終報告書では、本県に設置する夜間中学の基本的な方向性として、「自分たちの学びの場」、「自分たちの居場所」と感じることができ、安心・安全で、通学することが楽しくなるような学びの環境づくりを目指すことが示した。

・報告書の内容を踏まえ、県教委と市教委が連携を深めながら、県内の他の市町村教育委員会とも協働し、夜間中学設置に向けた取組を推進していくこととする。

2-2 福島県(~2018年3月16日)

・法令等の成立や改正により全ての地方公共団体に夜間中学における就学機会の提供の措置が義務づけられ、当県においても、自主夜間中学を運営する団体を始めとして夜間中学設置に向けた期待が高まりつつある。

・夜間中学の設置に当たっては、まだまだ県民への周知が不足していることや入学希望の実態把握が困難であること、設置についてのノウハウがないことなどの課題がある。

・夜間中学設置検討のプロジェクトチーム会議とワーキンググループ会議それぞれの会議を2回ずつ開催。

・夜間中学設置に向けたセミナー(11月15日)、夜間中学設置検討委員会(11月15日)県内の13市全てに検討委員会としての参加を要請、夜間中学全国大会視察、夜間中学連絡協議会(1月22日)東京都江戸川区立小松川第二中学校夜間学級を視察。

・周知とニーズ把握のためのポスターとチラシの作成(12月~)配布場所を検討し、ポスター100枚とちら10000し枚を、ニーズの見込まれそうな県内関係各所に掲示・配布することで周知と新たなニーズの発掘ができた。

2-3  松戸市 (~2018年3月9日)

・松戸市では、1979年度以降、都内の夜間中学への進学を希望した1名以外には、義務教育未修了者は存在していなかった。また中学校を卒業した市民の学習希望のニーズには、生涯学習の場で対応してきた。しかし、義務教育修了者の再入学が認められるとともに、法整備等が進んだことや、松戸市の現状を踏まえ、

市全体の教育を下支えする公教育による学習支援機能が必要と考えた。そのため、2017年2月には中学校夜間学級を開設する予定であることを発表した。今後開設に向けた諸条件の整備を進めるとともに、全国の先進的な事例を研究することにより、松戸市立中学校夜間学級の円滑な開設及び運営を目指していく。

・2017年10月16日(月)~2018年1月31日(水) 夜間中学設置意向調査の実施(成果物1)(請負業務として株サーベイリサーチセンターと実施)

・2017年11月6日(月)~8日(水)先進的な取り組み事例の現地調査の実施(成果物2)天理市教育委員会(他市生徒の受け入れに係わる経費負担について) 天理市立北中学校(小学校敷地での夜間中学の設置と運用について)

神戸市立丸山中学校西野分校(分校方式での運用について)

・2018年1月19日(金)松戸市夜間中学講演会(市民及び市職員向け)の実施(成果物3)文部科学省初等中等教育局企画官 常盤木祐一氏「夜間中学の充実に関わる国の方針・法整備について」 京都教育大学 教育学部教授 岡田敏之氏 「人はなぜ学ぶのか~昼と夜の学びを結ぶ実践を通して見えてきたこと~」    参加者204名

2-4 川口市(~2018.03.16)

・川口市では、2019年度当初に中学校夜間学級を開設する予定であることを2017年3月に発表した。

・2019年4月の開設時には、川口市立芝西中学校○○分校として、川口市立県陽高校(川口市並木)の施設を暫定的に利用する。

・開設と併行して、旧川口市立芝園小学校(川口市芝園町)の敷地内に新校舎を建設する。蕨駅から徒歩5分の立地。

・ニーズ調査(実施期間 2017.9.25~10.25)本市に開設される夜間中学に「通いたい、どちらかといえば通いたい」という前向きな回答をした方が387人であった。うち、295人が外国籍の方であり、義務教育を終了していない方が187人。

・特別の教育課程を編成し多様なニーズに対応できるようにすることが必要。

・他市の受入れについては、奈良県橿原市に訪問し、受入れに関する手続きや、応分負担に関する手順について情報を収集し、県教育局市町村支援部小中人事課と連携を図りつつ研究を行った。

・入学要件については、学齢期を過ぎた者で、学びなおしを希望する「入学希望既卒者」、不登校のまま卒業を認定された「形式卒業者」、「外国籍の方(在留資格を持つ者)」という想定で進めている。

・市外からの受入れについて、区域外就学の手続きについて検討。

2-5 神奈川県(~2018.03.16)

・中学校夜間学級が横浜市・川崎市に1校ずつに設置されている。しかし、両校とも、入学要件として「当該市に在住・在勤」という条件を設定しているため、現状として、この要件を満たさない方の受入が大きな課題となってきた。

・様々な事情で義務教育未修了となった学齢を超過した方も一定数存在することが推認され、外国籍の方や不登校児童・生徒も多い状況であるため「多様な学びの機会の提供」の一つとして、中学校夜間学級の新設の必要性が高まっている。

・2016年度、県内全ての市町村教育委員会の指導事務主管課長を構成員として「中学校夜間学級等連絡協議会」を設置し、協議等を行ってきた。

・中学校夜間学級の設置に係る調査研究を行うことを目的とした「中学校夜間学級の設置に関する検討協議会」を2017年5月に新たに設置した。

・既存の「中学校夜間学級等連絡協議会」と「中学校夜間学級の設置に関する検討協議会」を連動させながら、設置に向けた具体的な取組について調査研究を進めていく。

・2017年度末に事業報告書(県外視察報告書等)を作成し、中学校夜間学級等連絡協議会をはじめ県内等に広く発信していく。

・6月、現地視察調査 奈良方面(市教育委員会及び学校)・10月、現地視察調査 殿馬場(大阪)、観音(広島)、丸山中西野(神戸)、洛友(京都)(と各市教育委員会)。

・「中学校夜間学級に関するアンケート調査」(期間2017.12/25~2018.1/25)の実施。

・目的:県内のどの地域でどの程度のニーズがあるかをしっかりと把握することが必要であるという判断に至った。

・市町村それぞれでニーズを把握することは困難であるため、県教育委員会が主体となり、中学校夜間学級の設置ニーズや希望する学習内容等について、アンケート調査を実施した。

・アンケート調査により、希望する年齢層、地域、学習したい内容等、一定のニーズを把握することができた。

・アンケート調査結果及び各市町村の不登校・外国籍生徒数等を総合的に勘案のうえ、市町村立夜間中学の設置について、具体的な設置地区を前提にした検討を進めていくことが課題である。

・アンケート調査結果を丁寧に分析し、ニーズ゙が多い市町村での設置について、引き続き市町村と調整を図っていく。ニーズが少ない市町村においても、複数の市町村での共同設置や修学を支援するための対応について検討を重ねていく。

・中学校夜間学級の設置のあり方について更なる調査研究を実施する。

◇形態・・・市町村立(単独)、市町村立(近隣市町村で応分負担)、

学校組合立、県立。

◇施設・・・市町村立学校等を使用、県立学校等を使用。

・県としての市町村支援の検討について

複数市町村の共同運営による中学校夜間学級の設置・運営に向けた調整。

教職員配置に係る支援。

施設提供に関する検討(県立高等学校の空き教室の活用等)。

2-6 高知県(~2018.03.16)

・教育機会確保法が制定され、不登校の生徒や学齢期に様々な事情で義務教育を受けることができなかった方々に学習の機会を提供するため、中学校夜間学級を設置することは、本県において大変意義あるものと考える。

・潜在的ニーズの把握など現状を検証する必要性が生じていることから、調査研究事項を(ア)・(エ)・(オ)とし、以下の内容について調査を行い、設置に向けた準備・検討を進めたいと考えた。

・(ア)設置場所に関すること・・市町村との協議を軸としながら、併せて県立学校の校舎を併用する場合の設置についても調査研究を行う。

・(エ)市町村間の経費負担の工夫に関すること・・設置者の負担経費の種類や所在等、適切な経費負担の在り方について調査・協議を行う。

・(オ)その他夜間中学の新設に向けた準備・検討に資すること・・夜間中学に対するニーズについても把握できるよう、より効果的な調査方法について研究する。県独自のパンフレットを作成するなどの実行可能な県民への周知の仕方について研究する。

・アンケート調査に回答した方のうち約8割から、夜間中学が「あった方がよい」と回答する実態も捉え、県民の方の多様な学びを保障するためにも「夜間中学の設置は必要」との結論に至った。

・まずは高知市に設置することが望ましいとの方向性が出された。県内の複数箇所に設置することも視野に入れて今後も検討していく必要があるとの意見も出されている。

・設置の主体が県、市町村のいずれであっても、それぞれの教育委員会が果たす役割を明確にし、県と市町村が主体性を持って協議することが大事であるとの結論に至った。

・(設置主体):県教育委員会がイニシアティブをとり、県立での設置も見据えて県と市町村とが相互に当事者としての主体性を持ちながら、十分に協議を行う必要がある。

・(設置時期):戦後の混乱期の中で学齢期に様々な事情で義務教育を受けることができなかった方々が存在し、また高齢化していることを鑑みると、2019度の開設も含めできるだけ早期に設置することが望ましい。

・(在学年限):昼間の中学校と同じように3年間を基本とし、本人等と学校長が面談を実施したりして決定することが望ましい。また、履修状況によっては、最大6年までは延長も認める。

・(不登校となっている学齢生徒の受け入れ):その必要性は十分に認められる。その一方で「夜間中学を不登校の生徒の受け皿として、安易に捉えられてしまうのではないか」ということが懸念される。具体的なルールを定めることが必要である。

・(教育課程):中学校において履修する全ての教科等のカリキュラムを編成する必要がある。弾力的に設定することが認められていることからも、生徒の実情に応じた柔軟な編成を求めたい。

・その他、解決しなければならない課題が数多く残っている。高知県にふさわしい夜間中学を開設するには、当事者のさらなるニーズの掘り起こしや夜間中学に関する情報収集等が必要。

2-7 熊本県(~2018.03.16)

・熊本県中学校夜間学級調査研究検討会議の実施。(第1回)調査研究について、設置を検討している自治体の情報収集の必要性や、ニーズの把握の必要性とその実施の難しさ等の意見。(第2回)国の夜間中学説明会の講師である八尾市教育委員会の塚本妙一参事を招き、設置の経緯、現状や取組について理解を深めた。(第3回)夜間中学等の訪問 広島市教育委員会、広島市立観音中学校。

・市町村教育委員会と連携して、アンケートを実施した。その結果、あった方がよいという意見がある一方で、設置に慎重な意見もあった。また各中学校に、夜間中学についての問合せはない。

2-8 沖縄県(~2018.03.12)

・2010年度国勢調査の結果から当県において未就学者が6,541人いることが分かっている。この中には、戦中戦後の混乱期に義務教育が十分受けられなかった方々が1,600人含まれていることが推計されており、その方々に対する支援事業を2011年度から民間事業所に委託して行っている。

・公立中学校夜間学級の設置に向けて、その設置場所や夜間学級特有の指導方法や教材のノウハウがないこと等が課題である。

・検討委員会を沖縄県教育委員会内に設置し、大学教員や関係市教育委員会、公立学校教員等を交えて計3回開催。

・協議事項については、「ニーズ調査のあり方」や「夜間学級入級対象者」、「設置主体」等を課題とし、協議を通して課題等の一定のまとめを行うことができた。

・2018年度は、詳細なニーズ把握のための調査を実施することと夜間学級に係る課題検討を継続して行うことを確認した。

 文部科学省の委託研究予算を受け、夜間中学新設準備をおこない、その報告(2018.03)をおこなったのは、宮城県 福島県 松戸市 川口市 神奈川県 高知県 熊本県 沖縄県の8件である。

 「夜間中学その日その日」(566)で記述した、2017.03の報告は長野県教育委員会 滋賀県教育委員会 岡山県 山口県教育委員会 福岡県教育委員会 岩手県 宮城県 福島県教育委員会 埼玉県 三重県教育委員会 徳島県 熊本県教育委員会の12件である。

 義務教育機会確保法が公布・施行され、「基本指針」の策定を法で義務づけされた文科省は基本指針(2017.03.31)を発表、省令である「学校教育法施行規則」も改正した。70年間、夜間中学を国と共に、冷遇視してきた多くの都道府県や教育委員会の手のひらを返したかのようなこの変化は心底そうであってほしい。

 学びを求めて、「今日も布団のなかで一人泣いています」と告白する人たちに届くよう、あらゆる策を尽くしてほしい。夜間中学の開設と学びの模索は、未修了者のためだけでない、この学びを通して、教育に「かくめい」を起こすことができる、学びの創造でもあり、教員やすべての人たちのためでもある。

 大阪の夜間中学の扉をこじ開けたのは、義務教育未修了者本人の立ち上がりと行動と「まなび」への熱い想いであったことを記しておく。

 
 
 
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