夜間中学その日その日 (573)
- 白井 善吾
- 2018年8月12日
- 読了時間: 6分
夜間中学開設にむけて進捗状況(2)
2018年3月8日、中央教育審議会は第3期教育進行基本計画について答申を出した。6月15日、答申を閣議決定した。その中に「誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティーネットを構築する」として次のような、夜間中学の記述がある。
「夜間中学の設置・充実・学齢経過者であって小・中学校等における就学の機会が提供されなかった者の中に、就学機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ、夜間中学の設置を促進するとともに、夜間中学における就学機会の提供等の措置を講ずる。具体的には、夜間中学は、義務教育未修了者に加え、外国籍の者、入学希望既卒者、不登校となっている学齢生徒等の多様な生徒を受け入れる重要な役割を担っていることから、教育機会確保法等に基づき、全ての都道府県に少なくとも一つの夜間中学が設置されるよう促進するとともに、夜間中学の教育活動の充実や受け入れる生徒の拡大を図るなど、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進する」とある。
「誰もが社会の担い手となる」という記述は、前にも書いたように、少子高齢化が進む中、一人でも多く、社会を支える(納税してもらう)人になってもらうために、夜間中学を活用するという、国の明確な意図を押さえるべきである。

前回の続き、分析を進める。
19.沖縄県(2018.3)
・「公立中学校夜間学級等設置検討委員会報告書」(2018年3月)を発行、その中で「夜間中学設置等の是非についての早急な結論を出すのではなく、調査等により的確なニーズの把握を行いながら、次年度以降も課題の検討を継続していく」と記述。2018年度は、詳細なニーズ把握のための調査を実施することと夜間学級に係る課題検討を継続して行うことを確認した。
・どうする?沖縄戦で学校に行けなかった人の学習権 沖縄県、夜間中学への補助終了 公立設置検討も、早くて19年度(沖縄タイムス 2018.03.06)
・夜間中支援陳情 県議会委が採択/予算400万円見込む(沖縄タイムス2018.07.04)
*「詳細なニーズ把握と課題検討」に時間がかかります。そんなことをいってていいのだろうか。国勢調査の沖縄県の未就学者数の推移を見ると、18051(1980年)・12716(1990年)・9226(2000年)・6541(2010年)である。何もせず、高齢化が進むのをひたすら待つという姿勢か?1990年の国勢調査で15歳以上の人口に占める未就学者の割合は沖縄県13.91‰、次いで青森県5.49‰、全国平均2.16‰で沖縄があゆまされてきた歴史がこの数字に深く影を落としている。
20.徳島県
・報告書『徳島県に合う中学校夜間学級の形』《2016》アンケート7,000枚配り、366名の回答。169名(46%)が入学を希望している。「四国で一番最初にとりくんだのに、遅い」と議会で突上げ。
21.北海道/札幌市
・公立夜間中学校 開設の陳情採択 市議会文教委員会 陳情を初審査し、全会一致で採択 (北海道新聞 2017.02.07)
・市長が夜間中学視察 公立開設「検討していく時期」 多くの方に学習機会を提供できる場ができればと思っている(北海道新聞 2017.02.16)
・設置へ向け本腰 道教委、市町村と連携 秋元克広札幌市長は2月に遠友塾を視察し、「より良いものをつくりたい」と述べた (毎日新聞 2017.06.05)
・公立夜間中学の設置へ向け本腰 道教委 市町村と連携 「半数ニーズ」の対象者アンケ受け 「自主」は道内に4カ所(毎日新聞 2017.07.05)
・公立夜間中設置、検討する協議会 札幌で初会合 /北海道(朝日新聞 2017.11.18)
・(教育長)公立夜間中学へのニーズについて、昨年(2016)度、11月から3月にかけて 道教委が実施した、公立夜間中学への就学の意向に関するアンケート調査によると、自主夜間中学に通われている方々への調査では、回答が得られた166人のうち、87人の方が、また、不登校などによる、いわゆる義務教育の形式卒業者への回答が得られた15人のうち、10人の方が学校の勉強をやり直して、学力を身につけたい」あるいは「読み書きができるようになりたい」ことなどを理由に就学の意向が示された、教委といたしましては、法令の趣旨に鑑み、こうした方々の実情に応じて、教育の機会を確保していく必要があると考えております。(2017.12議会答弁)
25.宮城県
・学び直し広がる、新年度、授業を月2回から毎週に拡大する。仙台市教委との共催(河北新報 2017.01.27)
・夜間中学設置、仙台が適切 共同研究会が最終報告案 「需要が見込まれ、通学しやすい」との理由で仙台に(2018.02.20 河北新聞)
・夜間中学設置に係る宮城県教委・仙台市教委共同調査研究会が「夜間中学設置に向けた調査研究報告書」(2018.03)。本県においても夜間中学の設置の必要性があるものとの結論に至った。
26.神奈川県
・夜間中学に関するアンケート調査結果。用紙回収数160枚。未修了者(日本の中学校を卒業していない)は47.5%(76人)、既卒者(日本の中学校を卒業しているが、夜間中学で学びなおしたい)が38.1%(61人)、学齢期生徒(現在、中学生であるが、夜間中学で 学んでみたい)が3.8%(6人)。そして、中学校夜間学級の新設の必要性が高まっていると分析。◇形態・・・市町村立(単独)、市町村立(近隣市町村で応分負担)、学校組合立、県立。◇施設・・・市町村立学校等を使用、県立学校等を使用。など提案している。
*あわせて川崎市、横浜市以外からの入学を可能にすることも追求すべきだと考える。
27.高知県
「公立中学校夜間学級設置検討委員会」報告書(2018.03.26)中学校夜間学級を設置することは、本県において大変意義ある。アンケート調査に回答した方のうち約8割から、夜間中学が「あった方がよい」と回答する実態も捉え、県民の方の多様な学びを保障するためにも「夜間中学の設置は必要」との結論に至った。まずは高知市に設置する。県内の複数箇所に設置することも視野に、2019度の開設も含めできるだけ早期に設置することが望ましい。(在学年限)昼間の中学校と同じように3年間を基本とし、履修状況によっては、最大6年までは延長も認める。
*2018年度はどんな展開になっているのか?
28.川口市
2019年4月の開設時には、川口市立芝西中学校○○分校として、川口市立県陽高校(川口市並木)の施設を暫定的に利用する。
・開設と併行して、旧川口市立芝園小学校(川口市芝園町)の敷地内に新校舎を建設する。蕨駅から徒歩5分の立地。
・ニーズ調査(実施期間 2017.9.25~10.25)で開設される夜間中学に「通いたい、どちらかといえば通いたい」という前向きな回答をした方が387人であった。うち、295人が外国籍の方であり、義務教育を終了していない方が187人。
・入学要件については、学齢期を過ぎた者で、学びなおしを希望する「入学希望既卒者」、不登校のまま卒業を認定された「形式卒業者」、「外国籍の方(在留資格を持つ者)」という想定で進めている。
・市外からの受入れについて、区域外就学の手続きについて検討。
・入学説明会2018.8.7(火)川口市、9.15(土)越谷市、10.13(土)川越市で
29.松戸市
2019年4月に、教育の機会確保法ができて初めての夜間中学である「松戸市立第一中学校みらい分校」を開校する。1.義務教育の年齢(満15歳)を超えた人。
2.松戸市内にお住まいの人※市外(千葉県内)の人は、お住まいの市町村教育委員会の副申が必要。3.中学校を卒業していない人、または、不登校等の理由により、学び直しを希望する人。4.みらい分校の生活に支障のない人。
第1期生徒募集期間 2018年8月31日(金曜)まで。第2期の募集時期については未定。
大阪で夜間中学開設運動が展開、夜間中学早期廃止勧告を打ち破り、公立の夜間中学開設が実現して2019年で50年を迎える。こんな過程を経ても、夜間中学生の願いを受け止め、修業年限を3年から延長し、学習内容も夜間中学生の実態に合う内容に、就学援助制度も実現は時間がかかった。夜間中学生の実態に合った学びが展開できるとりくみは、おそらく、教員や教育行政の「常識」を超えたものである。その時、制度に依拠して、制限を加えるのか、制度を変えていくのか、重要な岐路になる。このことは50年のとりくみの教訓の一つである。