夜間中学その日その日 (601)
- 白井善吾
- 2019年3月5日
- 読了時間: 4分
夜間中学月報(2019年2月)
夜間中学を巡る新聞報道、夜間中学資料情報室で確認しているのは、2月は記事数38、(1月は31)であった。一つの出来事も、活字になったとき、どの観点で報道しているか、各紙違いがあるのだなあという印象である。
経済紙である日本経済新聞の見出しは「外国人の若者、夜間中学に集う 日本定住の足がかりに 」「外国から来た若者の定住とステップアップの支援。新しい役割を得た教室を訪ねた」(2019.01.27)にあるように、「新渡日の外国人が学ぶ場としての夜間中学」切り口の報道が目についた。
2019年4月の改正入管難民法施行に伴う外国人労働者の増加は、夜間中学を活用するとした、国の方針を受けた流れが全国に拡がってきている。
静岡県
外国人生徒の就労拡充 県教委が夜間中学設置へ研究・静岡(産経新聞 2019.1.31)。この静岡県は3年前、「県教委の検討委員会報告は現時点で県内に設置する必要性は認められない」(朝日新聞2016.03.18)と結論を出している。また静岡新聞は「夜間中学の在り方検討へ 静岡県教委『学び直し』に対応」(静岡新聞 2019.02.20)との見出しで、「県教委は昨年8月から今年1月にかけ、県内の外国人や引きこもり傾向の人ら108人に聞き取り調査を実施。この結果、8割以上が学び直しを希望し、6割以上が夜間中学の入学を希望するなど、一定のニーズが確認されたという」と報じている。
神奈川県相模原市
「相模原に夜間中学新設へ 市方針、県内3校目」(神奈川新聞2019.02.21)の見出しで、「市教委によると、公立夜間中学の需要を図るため、今年1月に入学対象となる市民向けのアンケートを実施。7カ国語で受け付けるアンケートには100人から回答があり、半数近い47人が夜間中学入学を希望すると答えた」「うち81人が『外国につながりがあり、十分に学べていない』と回答」。
徳島県
「夜間中学21年度にも開校 徳島中央高に併設 県立で全国」(徳島新聞2019.02.22)と県立夜間中学を2021年度に開校するとの報道だ。「美馬教育長は『今後、県民のニーズを把握するとともに(教員の)人員配置や施設整備、教育課程について検討する。学習意欲のある人に教育を受ける機会を提供したい』と答弁している」また「4月の改正入管難民法施行に伴う外国人労働者の増加で、ニーズが高まるとみられる」と記者の分析だ。
毎日新聞の報道は「母国で十分な教育を受けられなかった外国人就労者や、不登校などで義務教育を十分に受けられなかった人らへの支援を充実させる。通学の利便性が良く、夜間のカリキュラムを持つ徳島中央高校(徳島市北矢三町1)に併設する」と報じている。朝日新聞記事には義務教育課の取材を次のように載せている。「学校教育課によると、対象は義務教育年齢を過ぎた人で、戦前戦後に学校に通えなかった▽不登校で中学校に通っていない▽外国人などの入校を想定している。徳島中央高校の校舎を使い、必要に応じて設備の拡充も検討する」。
群馬県
「外国人教育支援『検討』 県教育長 」(毎日新聞2019.02.23)見出しで「県の笠原寛教育長は22日の県議会で、外国人住民の教育支援について『夜間中学も含めた支援のあり方をしっかり検討していきたい』と述べ、今後、外国人住民が多い太田市や伊勢崎市、大泉町と協議する必要があるとの考えを示した」との報道だ。また「学齢期を過ぎて義務教育を終了していない外国人が150人いる」。
茨城県常総市
「常総市、茨城県内初、夜間中学開設へ、外国人ら『学び直し』」(茨城新聞2019.02.23)との見出しで「母国で十分な教育を受けないまま来日した外国人や不登校のまま中学を卒業した人など多様な人たちに『学び直し』の場を提供する考え、開設は2020年4月を予定」「水海道中に夜間中学を開設する方向。4月には開設準備を担う教頭と教諭1人ずつ配置される予定」と2019年4月から2名の教員を配置し、開設準備をすると報じている。
札幌市
「札幌市、夜間中学を設置 早ければ数年後 外国人・不登校対応」(北海道新聞 2019.02.19 )との見出しで、「札幌市は18日、全道初の公立夜間中学を市中心部に開設する方針を固めた。不登校や引きこもりの生徒への対策はもちろん、4月から外国人労働者の受け入れが拡大することを踏まえ、外国人も含めて教育の機会を保障することが必要と判断した。新年度から本格的な検討を始める」。

私たちは、夜間中学のあゆみをみたとき、「官制に甘んじると、運動が背後に退く」これが最大の危機と新著『生きる 闘う 学ぶ―関西夜間中学運動50年』(解放出版社)で記した。