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夜間中学その日その日 (611)

  • 『生きる 闘う 学ぶ』編集委員会
  • 2019年4月28日
  • 読了時間: 4分

 関西夜間中学運動50年を前に、2015年3月、私たちは本格的に議論を始めた。この4年間、夜間中学をめぐる情勢は激しく変化した。50年間のあゆみの議論と同時に、この変化の分析の議論にも多くの時間が必要であった。それらの議論は、「はじめに」「夜間中学の『生命線』(あゆみの最終節)」「明日の夜間中学に」で扱っている。見解を異にする方も多くいらっしゃると想像するが、ここでは、「明日の夜間中学に」を6回に分け紹介し、みなさまのご意見をお願いしたい。

 きょうは3番目の記事である。

明日の夜間中学に(3)

③ 夜間中学の「法制化」

 私たちは一貫して夜間中学を学校教育法に位置付ける立法化を求めてきている。自主夜間中学を運営しながら、公立夜間中学の開設を迫っていったとき、立ちはだかったのは、「社会教育」でという国の夜間中学観だ。

 それは上田卓三議員(社会党)の夜間中学問題についての諸沢初中局長と海部文部大臣の答弁に見ることができる(1977年4月14日、衆議院内閣委員会)。諸沢:「夜間中学に相当する教育というものは、あるいは義務教育を終わらなかった方の教育というものは、夜間中学に限らずにやはり社会教育その他の面でいろいろ配慮していくべきことでありまして、夜間中学だけがこれに当たるんだということではない方が、むしろいろいろな機会を設けて行う方が適当ではなかろうか」。国は一貫して学校教育ではなく社会教育でというのが夜間中学観であった。

 国が夜間中学に論及するようになったのは日弁連の意見書(2006年)提出や「学校教育環境整備法案」(2009年)の提出の動きを受け、教育再生実行会議の五次提言(2014年7月)で「義務教育未修了者の就学機会の確保に重要な役割を果たしているいわゆる夜間中学について、その設置を促進する」が背景にある。それまで一貫していってきた、「法にない学校」、「社会教育で」と夜間中学冷遇視を決め込んだ姿勢は微塵にもださず、夜間中学開設をいい、公布した教育機会確保法を根拠に地方自治体に夜間中学開設の義務を課した。国のこの豹変の背景に新渡日外国人の存在がある。夜間中学の「法制化」は少子高齢化社会の進行による、労働力不足を外国人労働者によって補うという経団連の意向を受けた「国策」がある。

 労働力不足で国が目をつけたところがもう一つある。形式卒業者の存在である。2015年11月、文部科学省が大阪で開いた「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方の説明会」で形式卒業者の夜間中学入学を認めてこなかった方針を変更するに至った理由を文部科学省教育制度改革室の武藤久慶室長補佐(当時)は次のように説明した。

 一つは「中学三年生の不登校生徒のうち指導要領上出席とされた人数」の推計だ。20年間で105,511人(平均5,276/年)にも上ること。二点目に2010年内閣府が行った「ひきこもりに関する実態調査」でひきこもり状態の若者が69.6万人であること。三点目に総務省の「労働力調査」で15歳から34歳人口に占める若年無業者の割合が2.2%(2013年)で2002年以降1.9%~2.3%で推移している(2010国勢調査結果の人口に当てはめると61万9千人になる)。四点目に文科省の夜間中学実態調査で自主夜間中学、識字学級で学ぶ学習者の9.3%が義務教育未修了状態の人たちであること。そして、人口減少、少子化が進む中、これらの人たちが今の状態を脱し、社会的活動に参画されることが重要だ。また新渡日の外国籍の人が日本で「活躍してもらう」ためにだと述べた。

 夜間中学卒業生髙野雅夫は憲法で規定された義務教育保障を求める権利の実現を掲げ、夜間中学の廃止反対と夜間中学増設運動を実践してきた。形式卒業者も事実上、義務教育未修了者であるとして夜間中学再入学を求めてきたのも髙野雅夫や当事者の古部美江子、須堯信行ら形式卒業生たちであった。18回全夜中研大会で文部省中島課長補佐の「学習したい人には学習の機会を与えるべきではないか」との回答を得たにもかかわらず、その後、回答を反故にしてしまった。

 国や文科省、教育委員会もこの願いに向き合おうともしてこなかった。それが、いま急に形式卒業者の夜間中学の入学を認めるといいだしたのだ。過ちては改たむるに憚ること勿かれではあるが、これまでいかほどに入学希望者を断ってきたのだろう。そのことに想いをしたことがあるのだろうか。

 先に述べたように、70年代後半から80年代にかけ、結婚や就労目的の韓国人、南米の日系人、ベトナム難民、中国残留孤児・婦人とその家族など様々な新渡日者が夜間中学の学びを求めてきた。それに対し、夜間中学現場では「未就学者や未修了の人たちのための義務教育の完全保障の場」である夜間中学がそれらの新渡日者を受け入れていいものかとためらいを感じながら「本来は夜間中学が引き受けるべきでないのだが、他に学ぶ場所がないのだから、緊急避難として入学を認めると」と解釈して受け入れていった。

 夜間中学の存在意義の根源にかかわる問題は解決していない。新渡日者の夜間中学だと思える多数の外国人生徒が在籍する状況下、疑問やためらいや課題はかすんでしまっている。このことに一顧だにせず、夜間中学の「法制化」は歓迎され、文科省の英断だと語る関係者もいる。

 
 
 

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