夜間中学その日その日 (612)
- 『生きる 闘う 学ぶ』編集委員会
- 2019年5月7日
- 読了時間: 2分
関西夜間中学運動50年を前に、2015年3月、私たちは本格的に議論を始めた。この4年間、夜間中学をめぐる情勢は激しく変化した。50年間のあゆみの議論と同時に、この変化の分析の議論にも多くの時間が必要であった。それらの議論は、「はじめに」「夜間中学の『生命線』(あゆみの最終節)」「明日の夜間中学に」で扱っている。見解を異にする方も多くいらっしゃると想像するが、ここでは、「明日の夜間中学に」を6回に分け紹介し、みなさまのご意見をお願いしたい。
きょうは4番目の記事である。

明日の夜間中学に(4)
④ 夜間中学に学ぶ新渡日生徒の日常
新渡日者は出身国での能力、技術が活かすことができる職業に就いている人は圧倒的に少ない。単純労働の製造業やサービス業などの職種に従事せざるを得ない状況に置かれている。それも非正規雇用の就労で低賃金、身分が不安定である。雇用保険、労災保険そして健康保険には未加入で雇用主の都合でいつでも雇用を解消されてしまう。それに抗議や賠償を求める方法もわからず、泣き寝入りしてしまったという夜間中学生は多い。
生活習慣や文化の違いが原因の「文化摩擦」が職場、地域社会、夜間中学でも現れる。出産、育児、子どもの教育を巡って戸惑いや、国民健康保険制度が理解できないまま未加入状態となり、多額の医療費を払うことになったり、医療機関にかかることが出来ない状態の夜間中学生が多い。
文化の違い、言葉の問題から、近所づきあいも難しく、疎外感を味わい、生活習慣の違いからトラブルが生ずることになる。夜間中学でそのことが話題になり、学習内容にそのことを扱ったり、住民組織を訪れ、新渡日の夜間中学生の立場から、地域の理解を得るとりくみも重要だ。
子どもが大きくなり、子どもが通う学校で生ずる問題点もそのまま放置することはできない。夜間中学の教員が、知ることになった問題点を子どもが通う学校に出向き、その解決に向けた手立てを考え出す話合いも重要だ。特に親子間の母語を通しての会話が通じず、子どもが「日本人化」していることへの親としての複雑な思いと家族が崩壊している状況は看過できない。「自文化」を大切にする、通う学校でのとりくみも話し込みをおこなっている。
全てが夜間中学で対応できていない。当事者でなければわからない、ストレスを抱え込みながら、格闘しながら新渡日の夜間中学生は夜間中学で学んでいる。夜間中学の果たす役割は学びを提供するだけでは責任を果たしたことにはならない。
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