夜間中学その日その日 (628)
- アリ通信編集委員会
- 2019年7月18日
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大阪府教育庁(大阪府教育委員会)と話し合う会
夜間中学生の想いを直接大阪府教育庁担当者に尋ね、その課題解決の方途を見出す、話し合う会が2019年7月7日、天満夜間中学で開かれた。120人が参加した。主催する近畿夜間中学校生徒会連合会の伊藤会長は次のように挨拶を行った。
「年2回、夜間中学生の〝生の声〟を聴いていただく会だ。公立の夜間中学が2校開校し、夜間中学は全国的に注目されている。天王寺開校50年の年でもある。生徒会は夜間中学をしっかり守り、引き継いでいく。私たちの生の声にしっかりとお答えいただきたい。板挟みになって大変でしょうけれど、私たちの力になってほしい」。
府の担当者は「この話し合いは大切な場です」と応じた。
施設設備等学習条件について、夜間中学を減らさないこと、補食給食の復活、就学援助について、通訳などの配置について、夜間中学生の考えを述べ、府の考え方を質した。各夜間中学で集会を開き、要望内容をまとめ、これまでの回答をふまえ、練り上げた夜間中学生の発表であった。
全国で11校と数多くの夜間中学がある大阪であるが、4月東大阪市長栄夜間中学から移転し、意岐部(おきべ)夜間中学としてスタートしたが29名の入学があったことをについて、まだまだ夜間中学の増設が必要であると述べた。担当者は「私たちも驚いている。『学びたい人がいることの』証明だ」と率直に感想を述べた。
これまで行きたくても通えなかった夜間中学生が、通うことができる場所に夜間中学ができると、このような入学状況になることは、90年代から活動している南河内自主夜間中学、そして活動していた吹田自主夜間中学の公立化も展開を図るべきではないだろうか。
在籍が最大9年にもかかわらず、就学援助の支援期間が6年であることについて、制度的矛盾を糾す要望を夜間中学生は主張している。夜間中学の就学援助制度は大阪府と設置市が半分ずつ負担することで、設置市以外に住む夜間中学生も通学し、就学援助制度の適応を受けていた。大阪府の優れた制度の一つであった。2008年知事に就任した橋下知事は「夜間中学が義務教育なら、国と設置市が負担すべきだ」と主張、府の負担をやめることを一方的に強行した。夜間中学生はその撤回を求め、今も署名活動を行っている。一方で夜間中学生は、居住市の教育委員会を訪問し、居住市が負担することを求め、話し合いを継続して行ってきている。夜間中学生の問いかけに理解を示す居住市が少しずつ生まれてきた。従来の9市に加え2019年度は、門真市が6年から9年に改めた。
京都府に接する島本町に住んでいる人が夜間中学に入学された。入学者の要望に応え、島本町が夜間中学の就学援助制度を前向きに検討していることを府の担当者は報告した。
就学援助制度は学齢の子どもたちが対象で学齢を超えた夜間中学生には適用がない。これがそもそもの原因である。2016年教育機会確保法を公布し、文科省も財務省に予算要求をしているが財政当局が認めていない。
府の担当者も参加している文科省が集めた「夜間中学設置推進・充実協議会」で「文科省は学齢超過の人たちにも就学援助は国庫補助が出ていると話されている」ようだが、その説明を求めた。府の担当者は「夜間中学生の就学援助制度が法に位置づいていない。国は国庫補助の対象になると答えたが口頭であって、文書にはない」と答えた。詳しい説明が求められる。
府県の枠を超えての夜間中学入学を認めるよう府が決断することを長年にわたって夜間中学生は要求していた。2018年12月、募集要項を改め、「大阪府以外に住んでいる人は教育委員会か夜間学級のある学校に相談してください」を書き加え、入学ができるようになった。豊中の夜間中学生から3人の夜間中学生が兵庫県から入学している。粘り強くとりくむことが重要だと発言があった。
府担当者は夜間中学生の共同作品の詩に「かいた文字がないています、わろうてます、おこってます」があります。文字を知って、社会のおかしさに怒りをもって学んでいる姿を現している。と語り、生徒会との話し合いを大切にし、関係者に伝えていくことを約束して、話し合いを終えた。

話し合いに臨んだ府の担当者6人のうち5人が新たに担当者となったことには驚いた。「皆さんの生の声をお聞かせいただいて、持ち帰り、8月の教育委員会担当者会議で伝えさせていただく」との発言が随所であったことは、残念だ。各夜間中学を府が訪問する際、通学している居住者がいる市町村教育委員会に案内をし、夜間中学についての認識を広げていくとりくみは重要だ。しかし、「伝えさせていただく」次元どまりで、府の担当者も「夜間中学を始めて見せていただいた」を繰り返されたのでは、夜間中学生にあまりにも失礼ではないか。夜間中学生が担当者の回答のあと「拍手」する意味を担当者はどのように受け止めているのだろう。夜間中学生が果たしている「社会的存在意義」に応える、相応の評価を考えるならば「伝えさせていただく」の回答はあまりにも空疎に聞こえてくる。