夜間中学その日その日 (635)
- 白井 善吾
- 2019年8月28日
- 読了時間: 4分
第38回夜間中学増設運動全国交流集会(2019.08.24~25)その1
夜間中学開設運動に取り組む自主夜間中学運動体や公立夜間中学の学習者、スタッフ等関係者が埼玉県川口市に集まった。25団体、101人の参加である。

2019年4月、埼玉県川口市と松戸市で公立夜間中学が開校した。どのようなスタートなのか、公立夜間中学の開校に向けてとりくんでいる参加者は大変気になるところであった。2校の夜間中学教員の参加はいただけなかったが、自主夜間中学から公立夜間中学に入学した2名の夜間中学生が発表を行った。「最初はとても不安でした」「多くの先生との出会いがあり、学ぶことの楽しさを知った」と笑顔で、学校生活を語り、会場からの質問に答えた。
自主夜間中学のスタッフが、入学式に出席することを「御遠慮頂きたい」との公立夜間中学の意向にたいし、「お世話になった自主夜間中学の先生といっしょに入学式に参加したい」と手紙を教育長に届け、参加が実現したとの発表であった。それにしても「ご遠慮頂きたい」との学校側の発言を聞いて正直驚いた。
公立夜間中学と自主夜間中学との関係、とりわけ新たに開校した公立夜間中学はこれまで経験したことのない、夜間中学の運営を担うことになる。教育行政にしても同様である。「最低1県に1校の夜間中学を開設すること」、国から号令がかかり、開設をしたものの、その運営については初めての経験になる。あくまでも義務教育だから、「昼」の義務教育学校と同じような手法と考えでもって運営をすればよいという考えに至ることは当然である。
自主夜間中学の皆さんは「ご遠慮頂きたい」との当初の判断は、誤解を恐れず言うなら、これまで自主夜間中学を運営し、そのノウハウはお持ちだといえども、私たちは公立の夜間中学だ。ちゃんと運営していきます。という考えに基づくものだと推察する。
昼の学校の入学式ともなると学齢の子どもたちの保護者がほとんど一緒に参加することがごく普通かもしれない。しかしどうだろう。夜間中学の場合、入学生の多くが成人だ。保護者が参加することは稀ではないか。一方、自主夜間中学で自分に向き合ってくれた自主夜間中学のスタッフの人たちに出席していただきたいと考えられるのは当然である。
事前に、一緒にスタッフが参加できないことを知った入学生が教育長に手紙を書いて、一緒に参加できるよう訴えたと考える。
私の場合、夜間中学に勤務するまでは、昼の学校で18年の経験があった。この間身についてしまっている学校の〝常識〟がある。夜間中学に来て夜間中学生とぶつかり合いがあって、その常識を糾す場面を数多く経験した。
一例を示すと、学習者の出席率は昼であれば、95%以上ではないか。夜間中学は高くて70%。前の時間に学習した内容が理解できているという前提で次の時間の展開を考えるであろう。夜間中学生は前の時間欠席して、聞いていない人が3割はいる。そんな状態で、学習を進めることになる。欠席するのが悪いという考えで進めると、授業はそうべつ破たんすることになる。出席したくても出席できない訳があるのだ。それも読み込んで、学習の展開と教材研究が求められる。
夜間中学生の主張に耳を傾け、道理があると判断したとき、直ちに修正をする。そんな柔軟さが求められる。そして教員間で連携を取り、考えの共有化を図ることが重要であった。最も、夜間中学では、その時間だけ、担当する時間講師の教員に授業をお願いすることが多い。教員間で共有化を図ることは至難である現実も一方である。
上に書いた、2名の夜間中学生の発表を聞いて、会場から「発表者にお礼を申し上げたい。大きな一石を投じてくれたからだ。自主夜間中学の受け入れに際して、当事者が声をあげることが大切だということを教えてくれた」との発言があった。公立夜間中学と自主夜間中学、そして行政とがどんな関係性を築けるかを問うた出来事である。
交流集会は基調報告そして各地区、各組織のとりくみ報告へと進んでいった。