夜間中学その日その日 (660)
- 夜間中学資料情報室
- 2020年1月8日
- 読了時間: 3分
2019年夜間中学関連報道記事を読む
2019年夜間中学関連報道記事を夜間中学資料情報室で現在、459の記事を確認している。今後も増えていくであろうが全国で発行されている新聞の記事総数はおそらく、3~4倍になるのではと推測する。
一つの記事では様々な内容を扱い記事が作成されているが、大胆に、1つの記事で一番多く扱っている項目で分類することを試みた。すると69項目に分類された。多い順に並べると次のようになった。
「産経新聞が報道した、夜間中学はいま」27、「岡山自主夜間中学」26、「文部科学省」22、「松戸自主夜間中学」18、「川口市立芝西中学陽春分校」17、「投書記事」・「こんばんは」 各12、「珊瑚舎スコーレ」11、「外国人の子ども」9、「社説記事」・「松戸市立第1中学みらい分校」8、「前川喜平」7、「生きる闘う学ぶ」・「川口自主夜間中学」・「福島自主夜間中学」・「定時制高校」各6、「超党派議連」・「外国人と夜間中学」・「福岡自主夜間中学」・「高知に夜間中学をつくる会」・「札幌自主夜間中学」「神戸市立丸山中学西野分校」各5 と続く。
これとは別に、夜間中学開設に向けて動き始めた各自治体の動きを伝える記事も40項目を数える。その内訳は「札幌市」・「徳島県」各10、「群馬県」9、「相模原市」8、「常総市」・「高知県」「岡山県」・「香川県」各6、「神奈川県」5、「山形県」「仙台市」・「静岡県」・「京都市」・「三重県」各4、「川口市」・「栃木県」・「京都府」・「和歌山県」各3、「岡山市」・「佐賀県」・「愛知県」・「山梨県」・「大牟田市」・「沖縄県」各2、「南相馬市」・「宇都宮市」・「埼玉県」・「松戸市」・「千葉市」・「長野県」・「豊橋市」「姫路市」・「兵庫県」・「鳥取県」・「島根県」・「備前市」・「愛媛県」・「福岡県」「佐賀市」・「長崎県」各1。
ところが、このように新聞報道で「夜間中学」が取り上げられ、テレビ、ラジオでも取り上げられ、耳目を集めているが、すでに開設されている9都府県33校の公立夜間中学の生徒数は増えるどころか減少していることは前に指摘した。
2013年の2098人と2019年の1742人の単純比較でも356人の減少。2013年と同じ条件で比較すると638人の減となる。このことをどう考えればよいのだろう。

記事に掲載された夜間中学生のコメントに「夜間中学が在ること、そしてそこで学べること、初めて知りました」というのがあった。マスコミを通して連日、報道されても、学びたいという人にはなかなか届かない状況にあることは入学者の実態調査からも明らかだ。今の世、情報が氾濫し、その中から夜間中学の情報が網にかかること自体難しくなっているのかもしれない。50年前とは大きく異なる点だ。
日韓識字文解交流で夜間中学生が韓国を訪問、「どのようにして、文解(識字)教室や夜間中学を知ったか?」の話題で意見交流したとき、韓国側の生徒会長さんが語ったことが印象的だ。「文解教室に通い始めて、しばらくして、いつも同じ時間に家を出て行く私の姿を見た友だちが、『あんた、いつも鞄を持ってどこへ行っている?』と声をかけてきた。隠すこともないので、文解教室で読み書きの勉強をしていると答えた。その友だちは、『何で、私にも教えてくれなかった、自分だけ得して、私も読み書きに困っている。行きたい』と。『あんたは、学校は卒業していると思っていた』と答えた。その友だちは、今一緒に学んでいる」。参加した夜間中学生も「私も同じです。友だちから聞いて夜間中学を知った。わたしたちにその情報が届くのはいつでも一番あと」と応じた。
夜間中学を開設しても、どれだけ「需要」があるのか?と多くの教育委員会がアンケート調査を繰り返し行っているとの報道がある。
夜間中学入学を希望する人たちにその情報が届くのは“一番あと”。まず、開設の決断をし、開設をすることを第一にということではないだろうか。1969年以降、大阪には12校の公立夜間中学が開設された。この50年間、1校の夜間中学が統合され、現在11校を数えるが、それも、3校の夜間中学が非常に接近して開設されたことがひとつの原因と考えられる。
始めに戻って、既設の夜間中学生数が減少してきていることは、情報の届きにくさで説明つけるべきではないと考える。夜間中学現場の議論をふまえ、なぜなのか、提起をいただきたい。