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夜間中学その日その日 (672)

  • 生きる 闘う 学ぶ編集委員会
  • 2020年3月14日
  • 読了時間: 4分

 2019年3月、『生きる 闘う 学ぶ―関西夜間中学運動50年―』が書店に並んだ。それから1年になる。この間、雑誌、新聞、学会誌に書評として掲載していただいた。また、お読みいただいた方から感想をお寄せいただいた。いくつかを紹介する。私たちも、遅くなったが、1年が経過する今、合評会を行いたいと考えている。(その4)

 関西夜間中学の五〇年の歩みの記録として編まれた本書は、教育機会確保法(2016年12月)が成立し、夜間中学校の存在がにわかに注目され始めている今日の動向からすると、その重要性や尊さを痛感せざるを得ない。6名で構成される編者らは、『生きる 闘う 学ぶ』編集委員会と称する。本書のタイトルのごとく、まさに、基礎教育の学習の機会を獲得するまでの道のりが、生きること、闘うこと、学ぶこと、として直結していたことが 伝わってくる。本書は次のように7部構成と資料によりまとめられている。

 第1部:夜間中学生の主張 第2部:あゆみ 第3部:闘う 第4部:学ぶ 第5部:語る 第6部:夜間中学の明日に 第7部:証言 資料

 とりわけ、第1部の夜間中学生の主張には、大きく胸に迫るものがある。それは、社会的、文化的にも疎外されてきたという自身の生い立ちを振り返りつつも、学ぶ機会を閉ざされてきた境遇をどのように受け止めていこうかと模索する姿が目に浮かんでくる。なかでも、「怒り」として想いを強く投げかける主張は、学齢期に辛い経験を過ごしてきた青年の鋭い感性がひときわ滲み出ているといえよう。

 第2部では、大阪を中心とする夜間中学校のあゆみについて、編集委員会によりまとめられた記録である。夜間中学校は戦後の混乱期に生活困窮により就学できない子どもたちを救済しようと1947年に成立されたが、今日に至るまで、幾度も閉鎖に追い込まれてきた経緯がある。その過程で、夜間中学の卒業生であり、本書の編集委員会のメンバーでもある髙野雅夫氏が夜間中学校設置運動の推進役となり、「人間の尊厳を奪い返す闘い」として全国行脚を展開していったのである。

 第3部では、闘うというタイトルのとおり、大阪、奈良、そして、兵庫県と近畿圏の夜間中学校の活動について、生徒会連合会の活動や就学援助や補食給食の復活を求めた運動の記録等がまとめられている。

 第4部 学ぶ では、夜間中学校での学びについて、夜間中学生がどのような学びを展開していったのか、また、日本と韓国の識字教育活動の交流について、アフガニスタン難民の生徒の学びや中国人生徒の学びの記録が収録されている。外国につながる生徒が増え続けている状況からすると、新渡日の人々の学習がどのように展開してきたのか、その経験を知ることは実に貴重である。

 第5部は 語る と題されるとおり、夜間中学生として学んできた生徒たちによる座談会の他、夜間中学校の教員による座談会も収録されている。実際に、夜間中学生と共に学び、運動に関わってもきた者としての立場から、学校教員という立場を越えて、今日、求められている教育活動のあり方について問いかけるメッセージが伝わってくる。

 第6部では編集委員会により、新渡日の外国人が学生の約8割にもおよぶ「夜間中学校の現在の姿」が紹介されている。また、夜間中学の今後について東アジアの識字運動について元韓国の文解成人基礎教育協議会代表の萬氏へのインタビューの記録である。

最後に、第7部では、証言として、夜間中学校の教員の他、ジャーナリストの証言が記録されている。教える側の立場であったはずが、夜間中学校では生徒から数々のエピソードを交えて逆に教えられてきたことが述べられている。また、夜間中学校を取材する側の立場にいるジャーナリストたちも貴重な体験を重ねてきたことを物語っている。

 本書は、関西夜間中学運動50年の記録という枠組みを超えて、多方面から「学ぶための運動」を支え、伴走してきた人々による功績である。夜間中学校にたどり着いた生徒は、差別を受け、人権を何等かの形でないがしろにされてきた人たちが多いという。また、形式卒業者の若者たちは、貧困ではなくとも、虐待やいじめの問題など、学校生活を振り返った時に、教師や学校教育に不信感を抱いている人が多いという。私たちは、そのような社会や学校を舞台に繰り広げられる出来事をどのように受け止め、また、捉えていくことができるのだろうか。自尊心を養う「場」としての学び舎の姿から教育活動の根源的な問いを突き付けられたような思いである。  本書の色彩豊かに描かれたカバー絵は、「髙野雅夫氏を先頭に462人の夜間中学生」(大阪府東大阪市立長栄夜間中学校創立20周年記念制作、1992年)であり、まさに関西夜間中学の歩みの記録にふさわしい。500ページ以上にもなる本書の至るところに人生をかけて獲得を目指す「学び」が散りばめられている。(神奈川県)

 
 
 
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