夜間中学その日その日 (710)
- 夜間中学資料情報室 白井善吾
- 2020年9月20日
- 読了時間: 4分
2020国勢調査(2)
9月14日、国勢調査の用紙が、地域担当の方(知人)から手元に届いた。今回は国勢調査が始まって100年目に当たる。10年目ごとに教育の項目の調査が行なわれる。前回は10年前、2010年であった。
夜間中学の開設について、国の態度はこれまで見てきたように、引き延ばしが多かった。時間が経てば減っていく、それまでは何とかのらりくらりが、基本方針ではなかったか?上田卓三議員が「夜間中学に入ってそこを卒業してもらわなければならない対象者の数字が大体60万くらいあるのではないか」と義務教育未修了者数を示し、国の考えを強くせまった。答弁に立った、諸沢正道(初等中等教育局長)「制度的に言いますと、15歳まではこの義務教育を受ける権利があり、また国はそれを用意する義務があるわけでございますが、15歳を過ぎました方につきましては義務教育を終了していなくても、本人もその法律上の義務はない」「夜間中学に相当する教育というものは、あるいは義務教育を終わらなかった方の教育というものは、夜間中学に限らずにやはり社会教育その他の面でいろいろ配慮していくべきことでありまして、夜間中学だけがこれに当たるんだということではない方が、むしろいろいろな機会を設けて行う方が適当ではなかろうか」(1977.04.14)に現れている。60万ぐらいには反応せず、「社会教育」に逃げ込む国の対応であった。
そこで義務教育未修了の人たちの人数を国はどのように把握しているか、吉川春子議員は質問書を送り文書での回答を求めた。国会への政府の答弁書は「義務教育を修了していない者の数を把握することは極めて困難であるが、学校基本調査、国勢調査報告等を基に推計してみると、約70万人程度と考えられる」(1985.01.28)であった。70万の算出根拠は示さず、あいまいであった。
これを受け、夜間中学増設運動全国交流集会は算出根拠を示し、その数、170万人と算出し公表した(『ザ・夜間中学-文字を返せ、170万人の叫び-』開窓社 1986.11.30)。義務教育未修了者の学習権保障を求め、夜間中学開設の運動を行なってきている。そして国勢調査の質問項目の変更を提起してきた。

従来、小学校と中学校が一つの選択肢にまとめられているため、家庭の事情などで小学校を卒業した後に中学校へ進学しなかったり、中学校を途中でやめたりした人を正確に把握できなかった。「小学・中学」を「小学」と「中学」にわけ、「未就学」とあわせ、義務教育未修了の数が明確になるよう、質問項目の変更を求めてきた。2020国勢調査でようやく、変更となったが30年以上の年月がかかった。

1990年の調査結果が出たらしいとの情報を得て、大阪府庁内の情報センターに閲覧のため行くと、まだ出版はされていなくて、印刷前のコピーファイルを示された。その場で、一人が数字を読み上げ、もう一人が統計用紙に記入する。電卓で合計数値を確認していくという方法で調査結果を入手し、分析を行なった。30年後の現在、国の統計総合窓口にアクセスすればその結果をパソコン画面に引出すことが出来る。
私たちの分析結果は斉藤豊(豊中夜間中学)さんが「1990年の国勢調査『未就学者状況』を見る-1980年の分と比較して」としてまとめられている(夜間中学増設運動全国交流集会編『勉強がしたい 学校がほしい』宇多出版企画1994.03.30)。
2020年10月7日に締め切り、その結果の公表は2021年6月(速報値)、2021年11月(確定値)だという。それまで待つことはない。今できることがある。2010年、2000年の結果を使った分析と夜間中学開設運動に活かす資料を作成することを提案する。
私たちがおこなっているアクセス方法は
「e-Stat」で検索する。
画面に出てきた「政府統計の総合窓口」をクリックする。
出てきた画面のキーワード検索で「在学か否かの別 大阪」と打ち込むと
「平成22年国勢調査 / 産業等基本集計(労働力状態,就業者の産業など)/ 都道府県結果/ 27大阪府」などがでてくる。
その欄にあるCSVにクリックするとエクセル形式で結果が画面に打ち出される。
未就学者の欄に注目すると、県、市区町村別、年齢別の未就学者人数を知ることができる。③の大阪のところを調べたい県名に変えるとそこが打ち出されてくる。
例えば、2010年統計で年齢別の「15~19」「20~24」の枠はその10年間(2000年~2009年)に新たに生み出された未就学の人数ということになる。この人数をどう考えるか重要ではないか。
もう一点、④の画面で「2000年町丁・字等」の欄が出てくる。これを開くと「○市△町□丁目」の未就学の人数が明記され、場合によっては個人が特定出来るかもしれない。募集活動には役立つのだが、このファイルの扱いは注意が必要だ。
2000年より以前のデーター1990年、1980年・・・などは国勢調査結果の報告書が公刊されている。検索方法の質問を受けた。うまく到達できるといいのですが。
*2010国勢調査の調査様式を説明図版図版として引用しようとしましたが、ガードがかかっていて、手書きとなりました。