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夜間中学その日その日 (728)      白井善吾

  • journalistworld0
  • 2020年12月16日
  • 読了時間: 3分

 夜間中学開設運動と水平社宣言

 全国夜間中学校研究大会は関東と関西、交代で準備をし、2020年で66回を迎える研究集会として開催される予定であった。コロナ禍の中、集会は開催せず(できず)、誌上発表をして開催に変えるという連絡をもらった。最近では公立の夜間中学に限定せず、自主夜間中学のスタッフ、夜間中学生徒会、一般市民に開かれた全国規模の集会として、忌憚なく意見を交わし、問題点を明らかにし、集会の記録を発行するなど、その営みは重要である。

 夜間中学に対し「一県に最低一校の夜間中学の開設を」と姿勢を変えてきた政府や文科省は地方自治体に夜間中学設置の義務を課し、打ちだしてきた施策が、これまで大切にしてきたの夜間中学のとりくみに大きな変更を求めてくる動きが顕在化してきているのではないかと私は危惧している。そのことを大会の報告や議論で注目したいと思っていた。

 夜間中学を冷遇視し、見て見ぬふりを続けてきた政府・文科省が方針を180度転換、教育再生実行会議5次提言で「義務教育未修了者の就学機会の確保に重要な役割を果たしているいわゆる夜間中学について、その設置を促進する」(2014.7.3)と記述し状況が大きく変わってきている。

 この流れは夜間中学にとって最大の危機だと私たちが言ったとき、「教育機会確保法ができ、夜間中学の開設に弾みがつく、何よりも多くの人たちが夜間中学で学べる機会ができることはいいことではないか」。「それを評価できない人たちとは一緒にできません」とある夜間中学の教員が発言されていると伝わってきた。目先のことだけでなく、その先を見ておくことが大切ではないか。

 夜間中学は夜間中学生がおかれてきた社会的実態と真正面に向き合い、その課題解決に取り組む実践を通して、教育の在り方、問題点を学校教育全体に発信し、糾していく役割が重要だと考えている。昼の義務教育からはじき出された子どもたちを適応できない子どもだとして、昼の学校教育とは別のところで対応してくださいと義務教育の複線化に道をつける政府の意図が明確にあると見ている。新自由主義的な競争、効率を優先し、そのために管理を強化し、卒業生数など成果を追求する夜間中学に改変させられる動きになっていないかとの懸念だ。

 第50回全夜中研大会で記念講演を終えた山田洋次さんに髙野雅夫さんは「夜間中学生の生命線は何だと思われるか」と質問した(2004年)。「夜間中学」ではなく、「夜間中学生」はとの問いであった。一言で言えるほど夜間中学の事は知らない。言ってしまうと間違ったことを言ってしまうかもしれないとして、髙野さんの考えはと山田さんはかえした。髙野さんは「人間の尊厳を奪い返す闘いだ」と言った。

 これを受け、つぎの、全夜中研大会では分科会の議論の中で、「生命線」について参加者に尋ねた。「生徒会活動」「運動」「自主編成による授業」等がかえってきた。

 2008年から近畿夜間中学校生徒会がとりくんでいる就学援助補食給食の闘いに多きく影響しているのは髙野さんが問うた「人間の尊厳を奪い返す闘い」という考え方だ。

 この考えは髙野さんが母校荒川九中夜間中学を卒業するとき、学校から記念にいただいた辞書に「同情を憎み 矛盾に怒れ!!」と書いた考え方にも通ずるし、水平社宣言にも記されている考え方だ。


 政府の意図にきっちり対峙する夜間中学の実践は「人間の尊厳を奪い返す闘い」を追究する夜間中学の学びの創造ではないだろうか。




 夜間中学卒業者の会は奈良県御所市にある水平社博物館を訪問(2020.12.19)する。企画展「夜間中学生展」を参観し、「夜間中学開設運動と水平社宣言」について現地学習会を行ない、議論する予定だ。



 
 
 

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