夜間中学その日その日 (751) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年4月2日
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「夜間中学等の就学機会確保のあり方に関する検討委員会」報告書を読んで 2021.04.02
見出しが「夜間中学、設置判断避ける 県教委、教室設け実証へ 三重」(伊勢新聞 2021.03.31)の報道があった。「三重県教委は30日、夜間中学の設置に対する検討結果を発表した。設置には『慎重かつ十分な検討が必要』とする検討委員会の報告書を踏まえ、設置の是非に対する判断は避けた。一方、夜間中学をイメージした教室で実証を進めると決定。『入学の希望があれば、開校に向けた準備を進める』としている」と記事は続く。
『慎重かつ十分な検討が必要』の内容が気になったので、三重県教育委員会のHPに記載ある報告書を読んだ。すると、報告書概要には次のような記載があった。
「本県においても、昨年度及び今年度にニーズ調査を実施したが、ニーズの掘り起こし等において一定の課題がみられる。学習者のニーズとのミスマッチが大きい形での夜間中学設置は、財政的・人的コストの問題のみならず、何より入学してくる生徒にとって不利益が大きいところ、慎重かつ十分な検討が必要である」。
そこで、2021年~22年度に県内複数個所で「義務教育段階の内容を学ぶ教室」を2~3か月の間、1日2~3時間・週2日程度義務教育段階の一部教科を学んでもらう。そんなところで実際に学びを体験していただくと同時に、設置が適当であると判断されるとき、学校設置に必要な検討準備を進めるべきと記述している。
高知県や徳島県の募集人数と実際の申込者数をあげ、入学申し込みの予測が立てにくいこと。「夜間中学がどういうものかを正確に(アンケート)回答者に伝えられているか判然としない回答もある」との記述がある。
細かく見ていけば、お伺いしたい箇所と内容が多々あるが、夜間中学現場を経験したものとして、看過できない。報告書をまとめられた方々は、昼の義務教育や学校の呪縛から解放されていない。硬い頭ですねと思う。
「学ぶ人に(教育関係者が)学ぶ」という心を大きく開いた姿勢ではなく、入学した人にいろんな知識を注入し、その知識をいかほど覚えているかを調べるという、そんな見方でしか「教育」をとらえられていない。いわんや、ここにきて文科省担当者もやっと気がつき、文字にした夜間中学の「先進性」(*)について、想いを馳せる記述は報告書では見ることができない。
このことは「財政的・人的コストの問題のみならず、何より入学してくる生徒にとって不利益が大きい」の記述に象徴されている。ミスマッチではいってきた人たちに気の毒だと記述するに及んでは何をか言わんだ。不登校になった原因は?形式卒業になる原因と課題をもう一度夜間中学生と向き合い自らに問い、わかったことを昼の学校現場に返していく、そんな役割が夜間中学にはあると考えている。それが夜間中学が持っている「先進性」だと考えている。
義務教育を終えることのできなかった“気の毒な人に”教えてあげましょうとでしか夜間中学の場をみられていないことがとても残念だ。再考を強く求めたい。

(*)田中義恭:「夜間中学の設置促進と日本語教育等の充実に向けた文部科学省の取組」『早稲田日本語教育28号』で夜間中学が有する「先進性」について「夜間中学では、年齢も経歴も多様で、学びを心から求める生徒が、お互いの違いを尊重しながらともに楽しく学んでいる。そこには『同調圧力』はない」などと述べている。
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