夜間中学その日その日 (766) 砦 編集委員会
- journalistworld0
- 2021年7月5日
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夜間中学生寄席(第3回) 2021.07.05
夜間中学卒業者の会主催で「第3回夜間中学生寄席」が開かれた。2021年6月26日、東大阪市立多目的センターを会場に25名の参加があった。テーマは「夜間中学に学んで、想ったこと考えたこと」で、2名の夜間中学卒業生、金夏子さん(布施)・金喜子さん(天王寺)が登壇した。会場には初参加の現役の夜間中学生、教員もあり、少しずつ広がりを見せている。
金夏子さんは「夜間中学に行って、人生が変わった、人間が大きくなった」。先輩が生徒会活動に参加するのにくっついていって、いろんなことを学んだ。そして自分にとって、2つの大きな場面を体験することができた。一つは「パリのユネスコ本部へ、チョゴリを着て行くことができた。夜間中学で学んでいることを、識字担当責任者のイラパブルリ(識字・ノンフォーマル教育課課長)さんに話すことができた。そして、識字年のとりくみをもっと続けてほしいと話した」こと。もう一つは夜間中学の統廃合を考える東大阪市に「太平寺夜間中学を新たに布施夜間中学として開校させる闘いを生徒会長として」参加することができた。私のそんな姿を見た孫が、「おばあちゃんは、なぜ金夏子なの」と母親に尋ねた。母親は自分たちは朝鮮人であることを伝えた。孫は「あっ、そうか、おばあちゃん最高」と母に言った。通っている学校の民族学級に入り、「朝鮮の歌」を歌う孫に変化していったことを語った。
金喜子さんは夜間中学にたどり着くまでの人生を語った後、孫の小学入学式についていったとき、「夜間中学生募集のポスターが飛び込んできて」すぐに夜間中学に電話を掛けた。これからは「わたしは夜間中学に行く」と子どもたちに宣言し、天王寺夜間中学に入学した。補食給食が廃止され、食べ物を用意して分け合って食べることもあったが、いつもその時間、何も口にせず、運動場を走っている若い夜間中学生のグループのことは忘れられない。生徒会の役員会のとき、車いすの夜間中学生を抱きかかえて、部屋に移動させる先生の姿などを見て自分は変わった。「それまで引っ込んでいた自分を前に押し出してくれた」。夜間中学で学んでいる人たちの姿を見せておきたくて、孫と一緒に夜間中学に行くこともあった。

「関西夜間中学運動50年に想いを語る集い」(2019.6.30)大阪人権博物館「リバティホール」で司会をやっていただいた、 ぼんちきよし さんも寄席に参加され、母・金喜子さんの語りを横で聞きながら、「なぜ、オモニはこれほど、文字にこだわるのか?」それを知るため、自分の先祖を調べた。すると先祖は中国から朝鮮に文字を伝えた家系であることが分かった。こんなことを調べ、学べたことに感謝している。在日朝鮮人であることを誇りに舞台に立って仕事をしていると語った。
三人から、朝鮮人であることを隠さず、本名を名乗り、呼ぶことが、夜間中学のとりくみでの大切であることも話しがあった。
話を受けて、参加者から質問の手が上がった。「先生に対し、不満はなかったのか?」「生徒会の活動に参加して変わってきたという話であったが、どんな勉強をしたことで、変わってきたことは?」「本名を名乗ることで変わったことは、またどんなことが変わったのか?」。元教員から質問だ。
生徒会で闘い、統廃合を断念させ、できた夜間中学を生徒のための夜間中学にしていきたいと、卒業を前に、生徒会長に立候補したが、生徒会顧問の先生は別の対応をされたことを指摘した。夜間中学で学ぶ人たちの国籍や年齢、形式卒業者の入学と在籍していた頃と大きく様変わりしてきている。これからどうなっていくのかとても心配だ。卒業後学校へ行ったとき、「あのひと、何しに来はったん?」という反応があった。昼から来たばかりの先生は「オウム返しで文を読んでいる授業があった。もっと夜間中学生のことを勉強して来ていただきたい」。
日本人と結婚した中国人の夜間中学生が「5歳になるこどもがいじめにあっているようだ、これからどのようにしたらいいんだろう?」と悩んでいることを打ち明けた。「日本と中国、二つの文化が学べること、二つの文化を知っていることの素晴らしさを頭において、お母さんも、子どもさんを積極的に前に出し、子どもの親に話しかけて行ったら」と体験に基づく提案があった。
生徒会長をしているとき、昼の時間帯の授業に来ている夜間中学生のことを知っておこうと見学を申し入れたが、「ハイどうぞ」とはならなかった。夜間中学の授業の大変さはわかるが、それでも改善を訴えても、納得のいく回答はなかった。
大学生の孫が祖母の通っている夜間中学を参観し、その感想を書いた文章を祖母の夜間中学生が紹介した。
夜間中学の存在意義の一つ、「夜間中学の回路を通して家族がつながり、夜間中学の学びが家族を支えている」の意味が深められたのではないだろうか。
夜間中学のどんな授業が印象に残り、影響を与えたか?については深められなかった。この点について、逆に、現役・OBの教員から、自分の夜間中学での授業を紹介し、内容を深める議論を追求したらどうだろう。
夜間中学は「教育」でなく「共育」ではないか。そんな思いを強く持った。
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