夜間中学その日その日 (774) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年8月29日
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第40回夜間中学増設運動全国交流集会 2021.08.29
第40回夜間中学増設運動全国交流集会(2021.8.28~29)ピュアリティまきび(公立学校共済組合岡山宿泊所)は開催できないこととなった。現地岡山で、開設にむけ、ご苦労いただいたこと、わたしたちは忘れない。ほんとうに縁の下の力持ちの役をお引き受けいただいたこと忘れない。

この交流集会は全くの手弁当の集まりだ。交通費も、宿泊費もかかる費用は各組織、個人、苦労しながら、知恵を絞って、続けてきた集まりである。出張を命令されるのではなく。自らが自らに命令し、すべてをやりくりをして、参加し、続いてきた。集会のとりまとめをしていただいた、岩井好子さんが集会が終わって、家路につく参加者を見送りながら、次のようなことを言った「この人らが、事故なく、家に着いてくれるか心配だ」。多くの人たちの夜間中学開設に賭ける想いが、40回も続けてきたんだと思う。公立の夜間中学だけが夜間中学ではない。自主夜間中学や夜間中学運動を支えている市民も、夜間中学生も夜間中学運動の主役なんだ。
事務局のご努力により、「第40回夜間中学増設運動全国交流集会各組織報告集」が出来上がった。全国の37組織からお寄せいただいた報告を編集いただいた。以下その報告集を読み、考えた事を記す。
一つ目に、新型コロナ感染症の拡大が自主夜間中学の活動を中止に追い込み、参加者の減少になってきている。一方、学習者の生活、生命に関わる影響に、自主夜間中学のとりくみが、その最前線で大きな役割を果たしていることが明らかになった。給付金の申請手続き、ワクチン接種の手続きをはじめ、生活相談機能を果たしていることの報告がある。
二つ目に自主夜間中学と行政との関係を記載を元に、分類を行なった。A.両者が協力関係にある(6組織)。B.理解をしている(4)。B~C.少し理解している(3)。C.理解していない(7)。不明(13)となる。「教育長が理解を示さないので、市長が二の足を踏んでいる」「『夜間中学を必要としている人はいない』という姿勢を教育委員会が崩さない」との記述がある。
三つ目に公立化した夜間中学と、自主夜間中学の協力関係について、全体として、うまく機能していないと思われる。自主夜間中学で学んでいた学習者に両者が協力してとりくんでいる事例の報告も少ない。公立夜間中学の「先輩の胸をかりる」との度量のなさが原因だと考える。そうなる背景に一体何があるのだろう。公立夜間中学現場の「堅さ」を象徴するものとして、コロナで休校や授業時数の減少で、十分学べていないにもかかわらず、あなたは卒業ですとの学校運営がある。学習者の実態にあわせ柔軟な対応が夜間中学では特に重要ではないだろうか。
四として、学校教育ではなく、社会教育で運営を考えている地方自治体がある。和歌山県、岡山県、三重県、岡山市がそれだが、ニーズがあるのか否か見極めるためとのことである。昨年、行政担当者が「18名以上の学習者があれば公立化する」と発言の紹介があった。国が予算を用意せず、法律は作った、後は地方自治体の役割だとする国の姿勢が原因だ。報告集では、和歌山県教委の「きのくに学びの教室」のとりくみ(https://www.youtube.com/watch?v=eeu1BlRmVZ4)が紹介されている。
五として、校区が県内すべてからとする「最低一県一校を」の政策に疑問を持っている方が多いとの報告があった。まず、遠方の入学希望者は入学できない政策といわざるを得ない。通学の時間、費用、手段が立ちはだかる。このことについて、提起があった。県立の高校の施設を活用する方法で解決できないかとの提起だ。上にあげた和歌山県は4カ所の県立高校に「きのくに学びの教室」を設けておられる。夜間中学生が遠方から通学するのではなく、「県立の夜間中学」を学習者の近くに「移動」させる方法だ。
1969年、大阪での夜間中学開設運動で「府立定時制高校付属夜間中学」構想が議論されたことがある。今、他の市町村から入学を受ける条件として「応分の負担」を求める議論が行なわれているが、広域行政体の役割として県立夜間中学はこの問題を回避できるのではないか。教育条件、教育環境の向上にもつながる。
あと二点紹介しておく。公立夜間中学の学習者から報告が寄せられたことを注目したい。「自粛の名の下 生徒会活動は休止」になっていること、その中でも何かできることはないかと考え、生徒会は自分の学校の生い立ち歴史学習に取り組み、その一環として、「生徒会の要望に依り高野雅夫さんに来校をお願いし」話しあう会を行なったことなどが記されている。夜間中学生の一歩先を行くとりくみに賛意を送りたい。この動きに、夜間中学現場はどう知恵を出すか、問われている。
もう一つは、「学習者と学習者を応援するスタッフで構成される場と思っていたが、今は、参加者すべてが学習者であり、かつ学習応援者であるような場にするべきとの気持ちが強くなった」との記述があった。「スタッフ(教員)が学習者に学ぶ夜間中学」、ともいうことが出来る。大切にしたい考え方だ。
顔を合わせて語りあうことはできなかったが、夜間中学増設運動全国交流集会メーリングリストを通して議論が深まっていけばと考える。
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