夜間中学その日その日 (778) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年9月27日
- 読了時間: 4分
こだわり 2021.09.27
8月末、夜間中学関係の2022年度概算要求が公表された。今年度の予算額と同額の7500万円だ。内容は(1)「夜間中学のさらなる設置促進」5700万円と(2)夜間中学の教育の充実1800万円。
(1)は夜間中学新設準備・運営支援と広報活動を柱とし、夜間中学開設をする自治体への補充事業で設置準備期間は400万、開設後は250万を上限に補助をする。補助率1/3としているから、例えば、自治体が1200万の事業を行なえば、400万補助をします。800万は自治体負担でという内容だ。(2)は夜間中学における教育活動充実の委託事業で、夜間中学を開設している都道府県、政令指定都市、市町村が対象だ。「夜間中学における多様な生徒の実態などに応じて教育活動を充実していくために必要な環境整備等の在り方を検証」として「他市町村の夜間中学や域内の昼間の中学校近隣の定時制高校との連携」「遠方から通学する生徒への支援の在り方」など、6項目を例示している。
例示の内容はこれまでの夜間中学の主張を受け止めた内容になってきている。1校あたり50万の額ということになるが、都道府県、政令指定都市等が、この事業をするといって、1校あたりでは減っていくであろう。
現場にとって、普段やっていることを文章化して報告すればと思うが、現場に届いたときは、がちがちに硬化した内容に変質している例がこれまでであった。現場のとりくみを支援する、制約のない柔らかさのある委託事業であってほしいと願う。
茨城県常総市立水海道中学夜間学級(2020.4.1開校)の第66回全国夜間中学校研究大会発表誌に設立時に要した予算として、次のような報告がある(110頁)。
2019年開設準備予算として 6,644,251円。文科省の補助金2,275,251円。この差額が常総市の負担額で4,369,000円。
2020年度の運営費1,141,000円。文科省の補助金366,000円。他市の負担金約400,000円。実質常総市の負担金は375,000円。
大きな額になるのは人件費で(負担割合:国が1/3,県が2/3)、設置市が負担することはない。
水海道中学校夜間学級の場合、次のような配置になっている。
「授業を円滑に進めるために必要な教員は12人とわかりました。しかし、義務教育標準法に沿うと、同条件では教員定数が3人でした。数が大幅に超えてしまう旨を茨城県教育庁に伝えたところ、県の特別配慮により、教員の加配が決定しました」(冨山かなえ:「茨城県内初、水海道中学校『夜間中学』開設に向けた挑戦」)。校長1(兼務)、教頭1、教諭6、常勤講師1、非常勤教員4の名簿が発表誌に記載がある。茨城県内全体の教員配置の中から、配置を工夫されたと想像する。
ある政令市が、夜間中学開校をめざして、3353万円の補正予算を組み、議会の承認を経たとの報道があった。上の例のように、設置市の実際の負担はいくらになるのだろう。
開校に必要な資金の3分の1~2分の1は国からの補助金がある。残りの費用は、設置市の負担だが市が借金で金を作れば義務教育の場合約8割が地方交付金として帰ってくる。ほとんどの公共事業は市の財政から出さず借金をして地方交付金で金が戻る方法をとっている。
単純計算をすれば
3353万円÷2=1676,5万円。 1676,5×0.8=1341,2万円
設置市の負担額は、3353-(1676.5+1341.2)=335万3千円です。
そんなに単純ではないかもしれないが、(1)の「夜間中学新設準備・運営支援」を申請すれば、人件費を除いて、設置市が負担する金額は少なくなる。
財政がひっ迫すると、一番先に手を付けられるのが夜間中学であることが、夜間中学のあゆみから想像に難くない。「どんな効果が上がってるか?」「費用対効果は?」、行政担当者や、議員の議会質問の口上が聞こえてくる。

夜間中学を開設すれば、その地域の「教育の質に」大きな変化がうまれます。このことを実証する不断の発信が現場に求められていることは忘れることはない。
変化の実証として、2010年『夜間中学からの「かくめい」』(解放出版社)をだした。書名は編集者との長いやりとりから付けていただいた。「革命」でなく「かくめい」でよかったと思っている。夜間中学にたどり着いた夜間中学生が発するコトバに学びのヒントがあるし、それを普遍化したとき、小中の教育に変革を求める解答があると考え、書名にした。11年後の今も色あせていないと思うのだが、どうだろう。
もう一冊は守口夜間中学が、普段のとりくみをまとめた、『学ぶたびくやしく 学ぶたびうれしく』(解放出版社)がある。あなたたちは、夜間中学でなにをやっていますか?尋ねられる前に、「わたしたちの実践はこれです」という物を示そうと夜間中学生、教員が力を合わせて出来上がった出版だ。
設置行政にも、夜間中学に、すぐに結果を求めず、辛抱強く、ねばり強い支援を求めたい。
Comments