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夜間中学その日その日 (809)   白井善吾

  • journalistworld0
  • 2022年2月20日
  • 読了時間: 5分

   夜間中学の存在意義(2)夜間中学は昼の子どもたちも学ぶ場である

                            2022.02.21

 夜間中学は学齢時、義務教育を完全に受けることのできなかった人たちの、義務教育保障の場である。2022.2.18の大阪市議会の「教育子ども委員会」の議論でもこの域を超えない、夜間中学存在意義の議論であった。その中で、唯一それとは異なる議論があった。それは、「夜間中学はいま」(産経新聞2022.02.14)に掲載された、守口さつき学園夜間中学に大東市住道の中学が訪問した様子を記した記事を示して、70歳の夜間中学生の声「孫に教えてもらっているみたい」「私もみなさんの年齢の時に学校に行きたかった」。住道中学の子どもの声も「(夜間中学生が)楽しみながら学んでいるのがすごい」と紹介して、議員は今の夜間中学でこのよう学びが行なわれていると述べた。



 不登校特例校を開校し、そこで夜間中学生とのコラボができると賛辞する市の教育委員会の説明であったが、文の里、天王寺両夜間中学の廃校を目論むより、今の2校の夜間中学ですばらしい実践ができるではないかという主張だと私は理解した。このことは改めて述べたいと考えるが、市教育委員会の提案は学びの場を減らす愚策だと、指摘しておく。


 夜間中学の理念と存在意義の2点目「夜間中学は昼の子どもたちも学ぶ場である」について述べる。

夜間中学生と昼の子どもたちとの交流・合同学習が人権総合学習の一環として盛んに行われている。夜間中学生が語り部となって、昼の学校を訪ね、子どもたちの前で自らの生い立ちを語る形や、昼の子どもたちが夜間中学を訪問する形と様々である。

 夜間中学を訪問する前に、十分な事前学習に取り組み、疑問に思うことを事前に送っておき、当日は一緒に夜間中学の授業を体験し、交流会では年齢差を超えて、話し合う形式である。


 大阪府守口市内の小学校6年生と夜間中学生との相互訪問交流を紹介する。

小学生を前に、夜間中学生は書いた作文を読み上げていく。我が子から「お母さん、これどう読むの?」「何で教えてくれへんのん?」とたずねられ、答えられなかったと。

小学生は、瞬きもせず、夜間中学生を見つめている。

 夜間中学生は「夜間中学に出逢えてよかった」「もし、学校に行けていたら、学校の先生になりたかった」と夢をたたれた思いを述べていく。

子どもたちの多くは、「仕方なく学校に行っている」「いやいや勉強していた」との考えに対比して、胸が締め付けられ、小学生は重く受け止めた。そして、「学校ってそんなにいいものか」「学校ってそんなに大切なものか」自問自答をはじめた。

 夜間中学生は昼の子どもたちの真摯な姿に感動し、胸にこみ上げるものを押さえながら語りかけていくのである。昼の子どもたちも、自分たちの教室の授業と比べ、考えたことを夜間中学生に語り、夜間中学で学んできたことを報告書にまとめ、自分たちの学校で発表をするという実践である。後日、夜間中学に送られてきた手紙を読んだ夜間中学生は、自分の発表をこのように受け止めてくれたのかと元気になっていく。


 これは、教科書にはどこにも書いていない、マニュアルなんてものはない。子どもたちの実態に合わせ、教員が創造していくことなのである。夜間中学生の胸を借り、教員が学ぶ場なのである。それが夜間中学の役割の一つだと思っている。

 夜間中学にある、序列もなく、競争もない、年齢や国籍を超え、多様な学習者が生み出す雰囲気に訪れた子どもたちが敏感に反応したんだと受け止めている。

もう一つの事例を書いておく



 大阪府大東市立北条中学の実践を紹介する。北条中学は夜間中学生の出会いを通して、自分たちの学校生活をふりかえり、改めて「学ぶ」ということを考える機会を目標に、「夜間中学探検隊」を組織され、2003年11月とりくまれた。

 夜間中学探検隊は総勢1年生、19人。6つのクラスに分かれ、夜間中学生の隣に座り、夜間中学の授業を体験した。数学の学習では、金さんに熱心に教えているYくんの姿があった。

 学校に帰り「ボクの隣のおばあちゃんは、すごくすごく優しかった。夜間中学に行ってよかったです」と報告をしたそうだ。

 1週間後、今度は夜間中学生14人が北条中学を訪問することになった。夜間中学生は奪い返した文字とコトバで綴った自分史を1年生全体に語った。朝鮮で生まれ育ち、戦争の途中日本に来て、子育てをし、文字がわからないため、いろいろな辛い思いをしてきた74年間の自分の人生を沈さんは語った。

「夜間中学に来るまでと、来てからと、どう変わりましたか」夜間中学生に質問が出される。「子どもの参観の時、名前が書けませんでした。今は下手でも書いています。文字は宝物です。みなさんもがんばって勉強してください」と答えた。

 腰の状態がよくなく、あまり遠出をしない金さんは、「ええ子やった、あのYくんにあえるのやったら」と交流に参加した。交流会のあと、Yくんのそばに行って、「がんばってね」と声をかけた。

その後、「人の気持ちを知ることや、いろいろな活動をすることも大切な“学び”だと思いました」。夜間中学生にお礼の手紙が届いた。

 2年後の2005年11月、金さん、Yくんがどうしてるか、見に行ってくると北条中学をもう一度訪れた。交流会に参加したあと、待ち受けていた、Y君に会い、話をした。その日、家に一度帰り、夜間中学に遅れてきた金さん。教室に入ってくるなり「背が伸びて、元気な顔しとった。『がんばっています』といってくれた。安心しました」笑顔で報告をした。

 夜間中学生も昼の子どもたちから、元気をもらい、夜間中学の学びは編み上げられていく。

 「学齢時、義務教育を受けることのできなかった方々に学びの場をもうけています」との恩恵思想を遙かに超えた学びの場が夜間中学には存在する。

 
 
 

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