夜間中学その日その日 (821) 白井善吾
- journalistworld0
- 2022年5月16日
- 読了時間: 4分
「大阪市教委の夜間中学廃校計画」の不当性を考える 2022.05.16
朝日新聞が配信する音声報道番組「朝日新聞ポットキャスト」に夜間中学の番組がある。ひとつは2022.4.27放送の「どんな人たちが、なぜ、通っているのか 夜間中学のいま(前編)」(25分49秒)
もう一つは2022.4.28放送の「ここにしか通えない、そんな学校が消えていく 夜間中学のいま(後編)」(35分44秒)
どちらも、朝日新聞デジタル版「連載 夜間中学 私たちの学校」(全5回)を担当した宮崎亮記者と安井健悟記者が出演し、2022年3月28日に収録したものを2回に分けて公開している。記事の背景や取材のエピソードについて語っている。下線のアドレスで聞く事ができる。
「大阪市教育委員会は2022年度予算案で、24年春に予定する『不登校特例校』の開校に向け、設計費2500万円を盛り込んだ。市教委はこの学校に中学校夜間学級(夜間中学)を併設することも発表。これに絡み、既存の夜間中学二つをなくす統廃合計画もすでに明らかになっている」(2022.02.19朝日新聞)。私はこの記事がどうしてこんな書き方になるのかずっと、疑問に想っていたが、その背景を知ることができた。
近畿夜間中学校生徒会連合会がおこなった、大阪市教育委員会との話合いの席で、天王寺の同窓生が市教委の説明とこの記事の内容が異なる。ダブルスタンダードだと指摘していた。

「ポットキャスト」の中で、「市内の夜間中学4校から3校に統廃合することを大阪市教委は発表しているのか」との質問に宮崎記者は「実は今のところ発表していない」と答えている。今というのは番組が収録された、3月28日となる。
記者はさらに、次のように話した。大阪市が方針をプレスに示すとき2つの方法がある。マスコミが積極的に取り上げるようするやり方とホームページにだけ掲載する地味な方法がある。今回は後者の地味な方法で、「夜間中学の支援団体と市が協議する」との記載があり、夜間中学について何が協議されるのかと傍聴したが、マスコミの出席は宮崎記者のみであった。そこで夜間中学の統廃合のことを知ることになった。支援団体が、夜間中学が統廃合される噂を聞いたが、どうなんですかとの問に対し、「市教委の答えは歯切れが悪いし、答えになっていない。さらなる問に、申し訳なさそうにはなしていた」。
「大阪市教委、24年に『不登校特例校』開校を検討 夜間中学も併設」(朝日新聞 2021年11月9日)の時点でも不登校特例校も夜間中学の統廃合も市教委は発表もしていない。2022年2月の来年度予算発表の時点で不登校特例校を計画しているとしたが、統廃合のことにはふれていない。
私たちが市教委担当者と話したが担当者の性格かもしれないが「申し訳なさそうな」話しぶりは何なのか?疑問に想っていた。一次署名手交の時、担当者は「みなさんが『陳情書』を出していただいたので、やっと(統廃合計画のことを)話せるようになりました」と話したが、「計画」「検討中」と云うことで統廃合を既成事実とする運び方ではないか。
記者は、夜間中学を増やしていこうとする流れに逆行するが、中味を充実していくこともありうるので、はじめから「統廃合反対」の姿勢でこの取材をはじめなかった。しかし取材を進めていくと(市の方針について)疑問は日増しに高まっていったと語っていた。
「ポットキャスト」を聞いていて、「窓 夜空で聞いたチャルメラの音 夜間中学で思い出す優しさ」(朝日新聞 2021年4月10日)の執筆が宮崎記者であることを知った。記憶に残る記事の一つであるが、夜間中学の取材として、「(夜間中学を)なくさない運動の報道も重要だが、どんな人が学んでいるかを書くことは効果的だ」と語っている。
個々の夜間中学生の半生や毎日の生活実態を掘り下げ、夜間中学の統廃合を断念させるところまで論を進めていただかないと「美談」で終わってしまうのではと考える。朝日新聞デジタル版「連載 夜間中学 私たちの学校」(全5回)は朝日新聞大阪版でも「夜間中学-統廃合案に揺れる教室」として連載された。4名の夜間中学生の記事から廃校の不当性に迫る記者の意図は伝わってきた。この世論をどう作り上げるか、私たち夜間中学関係者の力が試されていると考える。

夜間中学統廃合の他社の報道も含め、次の理由から私は物足りなさを感じている。天王寺夜間中学をはじめ夜間中学開設運動があったことがふれられていないこと。日本語の理解が不足する入学希望者をほかで勉強して、理解できるようになったら来てくださいと、入学制限を行ない、同時に学校長が卒業勧奨を積極的に行ない、人為的に生徒数を減少させる操作を行なった結果にもかかわらず市教委担当者は「生徒数が減ってきていますから」と自然減少のように説明していること。そして現在の2校の教員数で不登校の子どもたちと夜間中学生の対応をしていただくと説明している問題点など突っ込みが足りないのではないか。
夜間中学の学びを必要とする人たちに届けるため、想いを一つに、とりくみを継続していく。近畿の夜間中学生が集まる新入生歓迎会で各夜間中学からその決意が語られるはずだ。
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