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夜間中学その日その日 (875)   白井善吾

  • journalistworld0
  • 2023年3月12日
  • 読了時間: 4分

  夜間中学生の力を借りよう          2023.03.13

 各県、政令都市に最低1校の夜間中学をとかけ声がかかっている。声が鳴り止まないうちに、夜間中学の開設をと、2025年迄には従来の31校に加え、新たに22校が開校するという。夜間中学現場も教育法の中に夜間中学を位置づけ、夜間中学の開設を進め、義務教育完全保障を進めようという考えで、立法化に取組んできた。

 しかし、一方、その流れで夜間中学の大切にしてきたことが“取り上げられてしまう”のではないか、夜間中学という存在を、いいとこ取りされ、うまく利用され、不登校生や外国人などを、まとめて面倒みさせようというのではないか?「学びのスラム」になりはしないか?という根っこの議論を2005年頃、夜間中学現場では継続して行なっていた。

 20年が経過した現在、その検証の議論をするべきではないかと考える。夜間中学現場にどのような変化が起っているのか。杞憂なのか、20年前に議論を行なった関係者の多くは夜間中学現場には少なくなっている。今につづく人たちに引き継がれ、根っこの議論はされていると思うが、政策を進める行政担当者が、夜間中学のあゆみをご存じない方たちが、流れを変える大きな付け替えをされようとしているとの最近の動きだ。

 夜間中学は学校教育なんだから、学校教育の範疇で収めてしまおうという考え方を優先させると、夜間中学が持っている“ええとこ”がつぶされてしまう。教育確保法を立法化するとき、「今夜間中学で行っていることがそのまま行えるような法律にしないといけない」という考えで立法化に文科省が協力し、議員立法が成立したと関係者からお聞きしている。しかし、当時の文科省担当者の意向はどうあれ、各県教育行政、市町村教育行政と行くにつれ、昼の小中学校の中に押し込めた硬直化した夜間中学になっていっているのではと考える。

例を挙げると、入学時期、入学希望者が学校をたずねると、「受付期間が終わりましたから、来年来てください」と断っている。「あなたは中学校の1年までは行っていますから、来年3月には卒業です」。さすが少なくなったとはいえ、「中学校ですから中学校の教科書を使った授業です」との対応も心配だ。夜間中学生の実情に合わせ、従来ある制度を変えていくという考え方が重要だと考える。

夜間中学の通学について考える。学習者にとって、通学に便利か否かが重要だ。まず通学時間、大阪府の夜間中学のない三島地域と夜間中学のある北河内地域とを比較した<夜間中学その日その日(874)〉。過去21年間の、その地域の夜間中学生の延べ人数は、三島地域483人…(吹田248・摂津70・茨木55・高槻105・島本5)に対し、北河内地域2,336人…(守口529・門真621・寝屋川371・大東249・四条畷31・交野56・枚方479)と4.8倍。それでも通学時間が1.5時間内の範囲で公共交通機関が恵まれているところだ。それに伴い通学費用も関係する。いくら学生定期だといっても遠距離になると高額になる。それなら、自転車、バイク、車でということになる。安全な登下校かという問題も重要だ。「バイク、車」は禁止という判断も生じる。OKとなっても、駐車場をどうするかも派生する。これだけを考えても、昼の学校の範疇では解決できない。釧路から札幌遠友塾自主夜間中学に通学している学習者のことをお聞きしたが、毎日の通学は不可能に近い。

 鳥取県の開設準備委員会の報道があった(NHK 2023.02.27)。「県中部や西部から通う生徒の帰りの交通の便がなくなるおそれがあることから、1時間目の前に4時間目と同じ授業を行う『0時間目』も設ける」。授業開始時間を夜間に限らず、柔軟に考えることはどうだろう。

 北海道が試行された「夜間中でオンライン授業試行 道教委が報告 活用に期待の声」(北海道新聞2022.11.15)。どんな課題が見つかったのか。

かつて広島の定時制高校が行っていた、“夜間中学の出前”が考えられないか。夜間中学の教員が、遠距離にある夜間中学の分教室に出かけていき、地域の集会所を会場で学びの場を設ける方法だ。

「何でそこまでしないといけないのか?」という声が聞こえてきそうだが、私たちはそうは考えない。こんな手立てを講じてまでも夜間中学の学びの場は今の学校教育に、それ以上の効果をもたらすものと確信しているからだ。今の教育や学校教育に必要な“眼鏡”を掛けさせてくれる。この眼鏡をかけてみると、それまで見えなかったものが見えてくるのだ。社会の変化の最先端を行くのが夜間中学。夜間中学は社会の縮図、鏡と云う方もある。それは何なのか?言葉にして、明らかにしていくことが夜間中学が今存在することの理由だ。夜間中学生の力を借りようではないか。



 夜間中学の開設が進む全国的な動きに唯一、夜間中学の廃校を打ち出し、「学ぶ権利を奪おうとする」大阪市教育委員会に、近畿夜間中学校生徒会連合会は文の里・天王寺文の里夜間中学の存続を求め、「すべての人に教育を」シンポジウムを開催する。みなさまの参加を呼びかけている。

 
 
 

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