夜間中学その日その日 (912) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2023年9月10日
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『(仮称)大阪市識字・日本語教育基本方針素案(案)』パブリックコメント
2023.09.11
第9回大阪市教育委員会会議(2023.06.27)で市内夜間中学の再編に関わる方向性が議題に上がっていることを大阪市のホームページで知り、夜間中学卒業者の会は会議傍聴を行なった。

行政の縦割の弊害がここでもあらわれていると強く想った。私たちもその弊害の影響をいつの間にか受けてしまっていた。この日の傍聴に参加するまで、もう一つの56号議案「識字・日本語教育基本方針」がある事を知らなかった。
55号議案「本市における中学校夜間学級の再編にかかる方向性」で4人の教育委員が、提案説明に、質問を行なった。どちらかと言えば、もっと考えるべきだとの意見ではなかったか。それを反対の手が挙がらなかったとして提案議案が承認されたとまとめていく手法に、「これが大阪市の教育委員会議?」強い疑念をいだいた。そんな状態の中で次の案件の提案者の説明は耳に届かなかった。
この議案で傍聴者に渡された資料は39頁の『(仮称)大阪市識字・日本語教育基本方針素案(案)』で提案者が原稿を読み上げる声を後ろの方で聞いた。もちろん表情もわからない。そんな状態で私たちは冊子の中にある、夜間中学に関する記述の部分に下線を引きながら、提案者の声を聞いていた。
6/13の教育委員会議にもかけられ、その際の議論を受け、「夜間中学」に関しては「追記」したと説明があった。6箇所夜間中学の語彙を見つけることができた。
「中学校夜間学級国籍別在籍者数・外国人率」図表(24頁)は日本:45人(22.0%)。外国(8カ国)160人(78.0%)。計205人(2022年5月1日)を見てまた驚いた。提案者の頭の中には大阪市内4校の夜間中学の事しか頭の中にないのか。住所に近い、市内の夜間中学の入学を希望して訪れたら、日本語が理解できないと入学を断られ、遠い府下の夜間中学に通っている事実が多数あることをこの素案の起案者たちには知らされていないのだ。
夜間中学の校区は府下全体である。大阪市民も府下の夜間中学に、府民も市内の夜間中学に通学してしているのだ。夜間中学は9月も生徒募集がある。
2022年9月10日統計を示す。市内4校の在籍数213人のうち市内在住188人、府下在住23人、府外在住2人。府下7校の夜間中学は624人在籍している。内訳は大阪市在住者140人、府下在住478人、府外6人である。市内在住の夜間中学生は188+140=328人。うち140人(43%)が府下の夜間中学に通学している。日本語が理解できるようになったら来て下さいと入学を断っておきながら、教育委員会担当者はその方のさまざまな都合だと強弁している。
約20年前の在籍実態と比較するとその違いは一目瞭然だ。
2002年の統計は市内在住の夜間中学生は915人。うち174人(19%)が府下の夜間中学に通学していた。19%から43%へと2.3倍になっている。この数字の示す意味は、市内夜間中学の在籍者の内訳だけを示し、素案執筆している。夜間中学も含めた市内の識字施策と思想の貧弱さの表れではないか。
猛省を促すと同時に、当事者(識字学習者、夜間中学生など)に真摯に向き合い、当事者の声や想いに応える基本方針(素案)にしていただきたい。
55号議案では夜間中学を廃校にする提案。56号議案は識字施策を推進しようとする提案。「従来からの識字・日本語学習機会に接点がある学習者だけでなく、学習情報にアクセスできていない潜在的な学習者に対するアウトリーチが求められます」(32頁)と記述している。そして、アウトリーチについて「支援が必要であるにもかかわらず届いていない人、自ら支援を求めるのが難しい人に対し、積極的に働きかけて情報・支援を届けるプロセスのこと」(33頁)と脚注をつけている。
夜間中学も含めた識字施策についてブレーキ(55号)とアクセル(56号)。全く正反対の施策を説明し、教育委員に判断を求めている。この点だけでもこの二つの議案は差し戻して、再提案を求める。
(仮称)大阪市識字・日本語教育基本方針素案(案)は以下のアドレス
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000603/603200/giann56.pdf の 第9回教育委員会会議で見ることができる。
夜間中学卒業者の会が大阪市に提出したパブリックコメントの記事を投稿いただきながら、今日のアップになってしまった。パブリックコメントは2023年8月はじめに締め切られている。
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