夜間中学その日その日 (931) 砦通信編集委員会
- journalistworld0
- 2023年12月4日
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第69回全国夜間中学校研究大会(1) 2023.12.04
69回大会はどんな内容で組み立てられているのか、案内状に書かれた大会プログラム見て、大変不安であった。夜間中学をとりまく課題を考えたとき、大会実行委員会が示した、プログラムに違和感を抱いた。そこで、夜間中学卒業者の会の考えを記した、機関誌「砦」を携え、参加することにした。当日、参加者に配られる、大会資料集に目を通しておくため、私たちは会場に急いだ。

西の車窓から畝傍山の紅葉が間近に迫ってきた。急いで反対側の畝傍夜間中学を見ると「全国夜間中学校研究大会」の大きな横断幕が目に飛び込んできた。改札を出て、会場の奈良県社会福祉総合センターまで、夜間中学生の手書きの文字が印刷された数多くの、のぼり旗が参加者を出迎えている。このような地元橿原市の受け入れ体制は大会史上おそらく初めてはないか。6階の受付ロビーは奈良6校の公立・自主夜間中学各校の共同作品、産経新聞社作成の数多くの写真パネルが掲示され、参加者を出迎えていた。
大会資料集に目を通して、機関誌「砦」を持参してよかったと思った。問題点を焦点化するために、「砦」を配布することにした。「砦」では次の5点を記述した。1. 義務教育未修了の人は104万人でないのか -2020国勢調査結果の分析-。2.夜間中学生数、私たちはどのように分析すればいいのか。3. 訂正を求める -全夜中研大会資料集・記録集-。4.文の里・天王寺夜間中学の存続にむけて。5.提言・・「夜間中学白書」づくりを全国夜間中学研究会でとりくむこと。
ここでは3.4.を紹介する。
3. 訂正を求める -全夜中研大会資料集・記録集-
資料集・記録集の発行は現地実行委員会にとって、大会準備、運営と共に、大きな時間を振り当てなければならない重要な役割である。私たちも何度かその大変さは経験している。定められた期日に原稿が届かず、統計資料の点検、原稿の校正が十分行えなく、発行せざるを得なかったこともあった。今は学校数も増え、その事務量は以前と比較にならないことは承知している。
その上でお願いしたいのは、その出版物の活用は研究大会時だけでなく、私たちは常時手元に置き、議論の内容や、統計資料の確認など、お世話になっている。このことは私たちだけではないだろう。それだけに重要なのは、統計の誤謬で、その速やかな訂正をお願いしたい。
もう一つは、「全国夜間中学校研究大会60周年記念大会事業」で全国の夜間中学校―その歩みと学び―」(2015年 61回大会資料集150~210頁)から始まったその記述で、速やかな訂正を求めてきたが、その後もこの記述を元に加筆掲載を繰り返されている。
夜間中学の沿革の記述で、荒川九中では在校生・教職員・卒業生でとりくまれた証言映画「夜間中学生」の制作とその動機となった行政管理庁の「夜間中学早期廃止勧告」が全く記述されていないこと(163頁)。
小松川二中では夜間中学を開設する市民運動の記述がないこと。2ヶ月遅れて、実現した日本語学級の併設は小松川二中、曳舟、足立四中の夜間中学、昼の葛西小、葛西中学にも実現したことの市民の運動の記述がなく、教育行政が開設したと受けとめられる記述になっている(165頁)。大会実行委員会に強く申し入れたい。
各夜間中学のあゆみにおいても、他校のことだとせず、お互いに意見を出しあい、全体で意見交流することが重要ではないか。
4.文の里・天王寺夜間中学の存続にむけて
大阪市議会「教育こども委員会」(2023.9.22)で4件の陳情書に対する、教育委員会の見解表明で、多田大阪市教育長は「2校は小規模校になった。日本語指導が必要な人が増えた。その指導体制充実が必要。校舎の老朽化が進んでいる。夜間中学は教科の学習をする学校教育だ。会議を重ねてきた。十分審議は尽くされている」と発言している。
委員会事務局に全国から寄せられた存続の署名を届け、夜間中学担当者との話合い、共同記者会見、市長・市議立候補者に公開質問状を届ける、大阪市議会に陳情書を出す等、近畿夜間中学校生徒会連合会を中心に文の里・天王寺夜間中学の存続を求めるとりくみを続けている。私たちは「十分審議は尽くされている」どころか、質問に納得できる回答は何一ついただいていない。ますます、疑問が深まっていると考えている。
大阪市立夜間中学の校区は大阪市内だけではない。府内全域が校区だ。しかし、大阪市教育委員会は大阪市内4校に通学している、夜間中学生のことしか頭の中にないのかという疑問を9月に提出した陳情書でも記述した。
近夜中協の9月10日統計では、大阪市内在住の夜間中学生は347名。うち、133名(38.3%)は市外の夜間中学に通学している。逆に府下在住の夜間中学生は487名。うち大阪市内の夜間中学に17名(3.5%)が通学と在籍人数に極端なアンバランスがある。私たちは市内の夜間中学で入学を断っていることが背景にあると考えている。夜間中学生の中に一旦流布した「あの学校に行っても入学を断られる」を払拭するのは大変な努力がいると考える。そして生徒数が増えない原因のひとつだと私たちは考えている。長い逡巡の末、訪れた夜間中学で「ここでは入学できません、他の夜間中学に行ってください」と告げられた入学希望者の想いを考えたことがあるのだろうか。
文の里夜間中学は26名在籍(*)、本年度13名が入学、3学級。天王寺夜間中学は在籍45名、20名が入学、2学級(昨年度より1学級減)の在籍状況でも大阪市教育委員会は廃校しようとする。
天王寺夜間中学は市内14区・府内2市から通学、文の里夜間中学は市内11区・府内0、守口夜間中学は市内11区・府内11市、豊中夜間中学は市内6区・府内6市などだ。このように大阪市内の夜間中学の廃校は大阪市だけでおさまる問題ではない。私たちは存続以外の選択肢はないと考える。
(*)ちなみに、文の里の夜間中学生数26名より少ない夜間中学は全国で26校になる。大阪市教育委員会の判断基準は全くおかしい。(つづく)
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