夜間中学その日その日 (623)
- 白井 善吾
- 2019年7月2日
- 読了時間: 4分
沖縄県義務教育課「夜間中学設置に係るニーズ調査」
「沖縄・夜間中学への通学希望549人 1割が『最終学歴が小中学校』『学校行ってない』」
こんな見出しの報道があった(2019年6月21日 沖縄タイムス)。
沖縄県教育委員会は2018年11月から今年2月にかけて「夜間中学設置にかかわるニーズ調査」を行った。その結果を6月19日発表した。詳しい結果は沖縄県教育委員会のホームページで見ることができる。
〇 通学希望者数
「ぜひ通いたい」112人、「通いたい」437人、あわせて549人が入学希望している。
戦後の混乱期の中で様々な事情により義務教育未修了のまま学齢を超過した人。本国において義務教育を修了していない外国籍の人。不登校など様々な事情から実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮等により卒業した人。
この三つが「法」がいう「通学対象者」だとして、596人のうち55人になると報告書は記述している。
調査では、「周囲の人の回答」として次のように集計結果をまとめている。
「通わせたい人が身近にいる」320人。「思い当たる人が(身近に)いる」90人。あわせて410人になる。うち「個人確認できた人」が128人になる。
この数字はケースワーカ等、関係者が、夜間中学対象生だと判断をしている人数だと考えられる。
〇 調査方法など
ほかのニーズ調査と異なるのは、多くの夜間中学対象者を把握するため、41市町村の5人以上の従業員のいる県内企業2200社。 関連施設(日本語学校、教会、国際交流関係団体)50か所、関係機関(41市町村教育委員会、1南部広域行政組合)と連携し、調査を実施している。
また調査にあたっては、日本国籍、外国籍等、多くの方から回答が得られるよう、日本語版調査票、 ハガキ調査票、他言語版調査票、関係者(社会福祉協議会(43か所)、自立支援施設(16か所)、その他(23か所)用の調査票、4種類を作成・配布したことが特徴だ。
あわせて26,660枚の 調査票を送り、12.88% 3,434の回答を得ている。公立夜間中学開設を前提に行った調査であると思うので、願いに応える一日も早い開設をめざしてとり進めていただきたい。
1992年頃であったと記憶する。10年ごとに行われる国勢調査(1990年)の結果が、報告書として公刊されたと聞き、早速、近畿夜間中学校連絡協議会事務局が大阪府庁内の情報室を訪れ、報告書のデーターを書き写し作業を行ったことがある。都道府県別だけでなく、全国の10万人以上の都市別、大阪府内の市町村別の「未就学者」数を書き写す作業であった。今であれば、ホームページにアクセスしてデーターを入手することができる。一人がその数値を読み上げ、もう一人がそれを聞き取る方法で手間がかかったが、このデーターを分析して、府内にさらに夜間中学を開設する必要性の根拠とする目的もあったので、分析作業は苦にならなかった。国際識字年で、夜間中学の開設への世論も追い風としてあった。

その時の私たちの議論は斎藤豊:「1990年の国勢調査〔未就学者状況〕をみる」(宇多出版『勉強がしたい 学校がほしい』1994年3月所収)にまとめられている。
未就学者の絶対数の多い都道府県として1980年は
北海道23,366人、大阪18,228人、沖縄18,051人、福岡14,152人、東京12,095人。
1990年は
大阪15,158人、北海道15,104人、沖縄12,716人、福岡10,696人、東京10,640人。となる。
どうして、大阪が上位に来るのか、もっと人口の多い、東京が少ないのはなぜか?何度も議論を行った。
15歳以上の人口に占める割合を計算すると
1980年
沖縄2.3%、鹿児島0.9%、徳島0.8%、長崎0.7%、岩手・鳥取・高知・熊本・宮崎0.6%。
1990年
沖縄1.391%、青森0.549%、徳島0.526%、鹿児島0.490%、長崎0.483%
となる。
斎藤さんは沖縄について次のように分析している。
「沖縄は離島が多く、3度にわたる『琉球処分』が本土と比較して生活を苦しめてきている。とりわけ、戦後の米軍の占領・本土との分離は、経済復興も含めて本土との格差を余儀なくされてきた。そうした背景がこの数字を生み出していると考えられる。さらに注目すべきは『15歳以上の人口に占める割合』である。沖縄は1.391%と2位の青森県の0.549%はもちろん、全国平均の0.216%と比べてもその大きさがわかる」と分析している。沖縄は全国平均の6.4倍の未就学者の割合だ。
沖縄県の「夜間中学設置に係るニーズ調査」は県が初めて行った調査だ。居住地別の入学希望者の分析も行っている。一日も早い公立夜間中学開設にこの調査結果を生かしていこう。